月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2020.11.10

難病を乗り越え復活した岸本隆一 琉球を支えるスーパーサブ

 11月7日、8日。川崎ブレイブサンダースを2戦連続で撃破し、連勝記録を10に伸ばした琉球ゴールデンキングス。開幕戦こそ宇都宮ブレックスに2連敗を喫したが、その後、ケガ人が出るなど苦戦を強いられつつも西地区1位を順調に走っている。中心となるのはリバウンドがめっぽう強いジャック・クーリー、スピードと技術力の高さでは随一の“ファンタジスタ”並里成。脇を固めるのが、新外国人のドウェイン・エバンス、キャプテンの田代直希、新人の牧隼利、移籍加入の今村佳太ら。そして、「彼なくして今の連勝はなかった」と藤田弘輝HCから全幅の信頼を得ている岸本隆一だ。

 

 

まさかの難病発症… そして、プロ生活9シーズン目

 

 岸本は大東文化大4年生のときにアーリーエントリーによりbjリーグの琉球ゴールデンキングスに入団。翌2013-14シーズンには新人王とプレイオフMVPをダブル受賞し、入団3年目にはキャプテンを任命されて、押しも押されもせぬ琉球の大黒柱へと成長を遂げたのだ。その後もbjリーグでの優勝に貢献するなど、数々の栄光を手にして着々とキャリアを重ねてきた。

 

 その岸本が思わぬ病に襲われたのが今年の4月上旬のこと。すでにBリーグは新型コロナウイルスの影響で中止となっていたが、そんな状況下において体調不良に陥り、検査の結果、病院で下された診断が難病指定の潰瘍性大腸炎だった。10日間ほどの入院生活はしたものの、治療により順調に回復、5月上旬には軽度の運動ができるまでに体調が戻った。そして、5月14日には琉球との契約継続も発表され、プロ生活9年目を迎えることとなった。

 

 

 川崎との第1戦、岸本の登場は1Qの中盤、並里が2つ目のファウルを犯したところからだった。川崎のパブロ・アギラールに3点プレーを許して同点に追いつかれると、岸本はマッチアップしていた川崎の藤井祐眞が体勢を崩した隙を狙い、トップからの3Pを決め、さらにフリースロー2本、得意のステップバックからの3Pを射抜く活躍で、琉球に流れを持ってくる働きを見せた。

 

 試合の方も完全に琉球が支配し、コートとベンチが一体となって川崎の息の根を止める快勝で、連勝を9とした。

 

 試合後の記者会見で岸本は「9連勝というのはチームとして戦い続けた結果だと思います。評価できるとすればいろいろなシチュエーションがこの9連勝の中にはあって、外国籍選手のけがや日本人選手のけがもそうですし、試合当日になって急に準備していたことと違う状況に置かれても、自分たちは言い訳をせずに戦ってきちんと勝ち星を重ねられたということが誇らしい部分です」と、連勝の要因を明かした。

 

精神的に人間としての成長

藤田HCも絶賛!

 

 現在の岸本について藤田HCは、「本当に精神的にすごく落ち着きました。彼は難病になるなど、個人的にもいろいろなことがありましたが、その中で精神的に人間として成長したと思います。それは何よりもうれしいですし、それが今の落ち着いたプレーにつながっていると感じます。本当に彼なくして今の連勝はないと思っています」と、きっぱりと言い切った。

 

 その藤田HCの言葉を岸本にぶつけると、「そう言ってもらえると明日も頑張ろうと思いますし、見ている方にもそう思ってもらえたらベストですが、僕自身何も変わったところはないんです。病気のことはありますが、本当にたくさんの人が(コロナ禍の影響で)大変な思いをしていると思いますから」と笑顔を見せた。

 

 

 そして、さらにこう続ける。「自分の中には、プロキャリアの第2章じゃないですけど、そういう感覚があるのかなと感じています。毎試合、ミスをする自分を楽しめている自分がいるのは確かですし、こうやってバスケットボールができることを噛み締めながら、それを見ている人にバスケットボール以上のものを感じてほしいなと心を込めてプレーしているので、それが今のところいい方向にいっていると思っています。もちろん勝利は絶対条件ですけどね」

 

 川崎との第2戦は前半こそリードを許したものの、後半に入ると強度の高いディフェンスで川崎のターンオーバーを誘発し、逆転に成功。そのまま逃げ切った。6人が二桁得点を挙げ、リバウンドでも圧倒する強さで怒涛の10連勝。岸本も4本の3Pを沈めてチームを援護射撃した。

 

 最後に、スーパーサブとしてチームをけん引している岸本の言葉を紹介したい。

 

「今シーズンは控えから出ることが多いんですけど、オフェンスの部分で言えば、あえて空気を読まずにプレーするというのも自分なりに心がけています。それがチームとしていい方向にいっているのかなというのもあるので、いい意味で空気を読まないプレーを、バランスを見てこれからも続けられたらなと思います」

 

写真/©︎B.LEAGUE 取材・文/飯塚友子



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