月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2020.10.22

我慢比べの好勝負は宇都宮に軍配! 全員ローテーションによる遂行力が “らしい”一勝を生んだ

全員ローテーションで高い強度を維持する宇都宮

 

 第3節を終えた時点で共に5勝1敗と上々のスタートを切った宇都宮ブレックスとアルバルク東京。10月21日に行われた今季初の直接対決はいわば現時点でのリーグ頂上決戦だ。

 

 両クラブともコアメンバーの変更はほとんどなし。安齋竜三HC(宇都宮)とルカ・パヴィチェヴィッチHC(A東京)も共に就任4シーズン目に突入し、他を上回る完成度がこの2クラブの最大の武器だ。

 

 この試合、立ち上がりをリードしたのはA東京。流れるようなボールムーブから田中大貴や菊地祥平が宇都宮の包囲網を突破し、ディフェンスでも宇都宮のお株を奪うような強度の高さを見せ、7-0のスタートを切る。試合後に安齋HCと比江島慎がそろって「序盤はA東京のディフェンスにやられてしまった」と振り返るように、実力伯仲の両クラブの対戦は、技術以上にお互いの遂行力の差が大きく流れを左右するものとなった。

 

 これで目を覚ました宇都宮はセカンドユニットの奮闘もあり、1Qを18-15、2Qを21-17と前半で7点差を付けた(39-32)。3Qこそ、アレックス・カークを起点としたA東京に逆転を許したが、全体的には宇都宮の流れで攻防ともにインテンシティレベルは高く保たれた状態で4Qへ。試合が進む中でも高いパフォーマンスを維持できる最大の要因はベンチ入り選手全員がローテーションメンバーであることだ。

 

 実際、登録12人中10人がこの試合を含む4節で平均10分以上のプレータイムを獲得しており、チーム最長もライアン・ロシターの平均26分18秒と、とにかくバランスが良い。この試合も10人が10分以上、うち9人が15分以上をプレーし、2桁得点が5人。時間も得点もうまくシェアすることで全員がフレッシュは状態で戦い抜くこのスタイルは宇都宮の真骨頂と言える。「誰が出ても変わらない強度で自分たちのスタイルを貫くことが今季のテーマです。(今年のチームには)それだけのメンツがそろっている」と自信を見せる安齋HCの采配と、選手たちのアンセルフィッシュな姿勢なくしてこのスタイルを確立することは難しい。

 

トップチーム同士のハイレベルな攻防が繰り広げられた

 

 宇都宮をはじめ、A東京や川崎、千葉、SR渋谷などの強豪クラブは皆、タイムシェアを重視した戦い方を取り入れており、リーグ全体としてもそうした傾向が年々強くなっている。そのトップに位置するチームどうしの意地がぶつかったのが4Qだった。

 

 このクォーターは最終盤まで両チーム共に流れをつかめないまま進んだが、その中で明暗を分けたのはオフェンスリバウンドとターンオーバーだ。4Qのトータルリバウンドに関しては宇都宮12本(内オフェンスリバウンド5本)、A東京11本(内オフェンスリバウンド5本)とほとんど互角だったが、要所で宇都宮のジョシュ・スコットが奮闘を見せ、セカンドチャンスポイントを獲得。ディフェンスでもA東京にこのクォーター3つのターンオーバーを誘発させたのに対して、宇都宮は重要な局面で1つもターンオーバーを犯さなかった。

 

 紙一重の差が最終スコア80-75という5点の差に表れたわけだ。とはいえ、試合を通してハイレベルなバスケットを展開したA東京にとっても、ただの惜敗ではない。パヴィチェヴィッチHCは「宇都宮は現時点でリーグトップの力のあるチームの一つ。川崎や千葉も強豪ですが、その中でも宇都宮は頭一つ抜けている印象があります」とライバルを称える一方で、敗因を「宇都宮を抑えるポイントは2つ。一つは、彼らはスピーディーなチームなので走らせない、ファストブレイクを与えないことです。もう一つはリバウンド。特にオフェンスリバウンドを与えないこと。我々のチームはハードにプレーして長い時間帯、この2つを抑えることができていました。しかし、勝負所でオフェンスリバウンドを取られ、ロシターにファストブレイクを決められてしまったのが敗因だったと感じています。最後のところで宇都宮が我々を上回りました」と分析。確かな手応えを得たことと、細かな修正点が見付かったことはプラスと捉えるべきだろう。

 

リバウンドの一本一本が勝敗の分かれ目となった

 

 安藤誓哉も「前半から宇都宮にオフェンスリバウンドを取られてしまって、ターンオーバーポイントを与えてしまったのが1試合を通して痛かったと思います。特にオフェンスリバウンドに対してはガード陣も含めてもう一度意識し直さないといけません。これは宇都宮と戦って改めて気付かされた部分だったので、これから修正していきたい。ターンオーバーについても、起こってしまったときにチーム全員で戻る意識をもう一度考え直す必要があると感じています。そうすることで、また宇都宮とクロスゲームができる」と明確な課題を得た。

 

 宇都宮にとってもこの勝利は大きな収穫だ。「(序盤の苦しい展開を)我慢してセカンドチームが盛り返してくれたことで、チーム全員で僕らのバスケットを体現できました。最後は我慢比べの展開でしたが、しっかりと終わることができたと感じています。チャンピオンチームにアウェイで勝てたことは自信になる」とは比江島。

 

 この試合は改めて両クラブの完成度の高さを示した試合となったと同時に、A東京ほどの完成度を持ってしても打ち破ることができなかった宇都宮の遂行力には圧巻の一言。共に得るものがあった両クラブの直接対決はレギュラーシーズン中にあと三度。強力なケミストリーと確たるアイデンティティーが存在する宇都宮とA東京の対戦は、今季もリーグの勢力図を占う上で欠かせない対決となりそうだ。

 

写真/石塚康隆 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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