月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2020.10.17

“八村世代”の2人が激突! アイザイア・マーフィー(広島)と増田啓介(川崎)

 

 10月16日、とどろきアリーナ。川崎ブレイブサンダース対広島ドラゴンフライズの一戦に足を運んだ。

 

 今季、B1昇格を果たした広島はこの試合開始前の時点で1勝3敗と黒星先行ではあるが、開幕節では大阪エヴェッサに1勝を挙げ、前節でもアルバルク東京に対して一歩も引かない戦いを繰り広げた。一方の川崎も、開幕戦こそA東京に敗戦したが、2日目には見事なバウンスバック。前節でも2連勝と安定感ある戦いを見せている。

 

 そんな2クラブの対戦の中でアイザイア・マーフィー(広島)と増田啓介(川崎)にスポットを当てた。この2人はエジプト・カイロで開催された『U19バスケットボールワールドカップ2017』で共に戦った戦友だ。当時ゴンザガ大1年だった八村塁(ワシントン・ウィザーズ)を軸とするこのチームは、FIBA主催の大会では男子日本代表史上最高の世界10位という成績を残している。いわゆる“八村世代”のマーフィー(当時は榎本新作でメンバー登録)と増田。あの大会後、増田は筑波大4年時にインカレ制覇、マーフィーもNCAAディビジョン2のイースタン・ニューメキシコ大でより洗練されたプレーヤーへと成長した。

 

果敢なリムアタックを見せたマーフィー

 

 あれから3年。2人は日本のトップリーグで再会を果たすことになったわけだが、初対決について「増田選手はU 19でチームメイトでしたし、今日実際に対戦してみて彼がすごく川崎にフィットしているなと感じました」とマーフィー。このコメントの前にマーフィーは「彼(増田)が僕のことを覚えていたかは分かりませんが」と前置きしていたが、当の増田が共に世界で戦った戦友を忘れるわけもなく「本当は試合前に少し話をしたかったんですけど」と切り出した。今季は新型コロナウイルス感染症の影響でリーグとして試合前に他クラブの選手と交流することができないため、それはかなわなかったが、「当時からドライブや身体能力がすごかったのですが、実際にマッチアップしてみてやはり健在だなと思いました」とマーフィーの印象を語ってくれた。会見でお互いのことを口にしたのはほんの少しではあったが、その間、2人の表情が少し晴れやかになったように感じられたのは気のせいではないだろう。

 

 直接マッチアップしたのは2Qの約2分間と試合が決した終盤のみではあったものの、その中でお互いの成長を感じられたはず。この日、マーフィーは5試合連続のスタメン出場で10得点、3リバウンド。増田はベンチから8得点、3リバウンド、2アシストの活躍を見せた。

 

増田はSFへのポジションアップに励んでいる

 

 試合全体を通して見ると3Qだけで20点のリードを作った川崎が99-64で広島を圧倒。開幕から大阪、A東京、そして川崎と強豪との戦いが続く広島にとっては、またしてもB1の手痛い洗礼を受ける形となったが、これもまた経験。広島の堀田HCは「このままではこの程度のチームになってしまうので、私の考え方も含めて何かを変えていかなければなりません。選手はエネルギッシュに頑張ってくれました。この敗戦は広島ドラゴンフライズが変わるきっかけになると思いますし、そういった試合にしていきたい」と本音を漏らしつつも、物事をポジティブに捉えている。

 

 川崎も同じく先を見据えながらの戦いをおこなってきた。「今日の試合はチームで、『ビッグラインナップをメインにして戦って勝ち抜こう』という一つの目標を掲げて戦いました。それがうまく機能したので、チーム全体としてもまたひとつステップアップできたかなと。ビッグラインナップは、川崎ブレイブサンダースの強力なオプションとしてこれからも育てていこうと思います」と佐藤賢次HC。

 

 60試合中の5試合。まだまだ各チームが完成度を高めるための模索段階であることは明らかで、この試合は良くも悪くもお互いにとって得るものの大きい一戦となった。そうしたチームの中で日本のファンを沸かせた2人の若手が活躍していることは、単純にうれしいことだ。マーフィーも増田もまだ22歳。彼らを含む“八村世代”は今後、どんどんリーグ入りをしてくるだろう。彼らにはお互いに切磋琢磨し合いながら、日本のバスケット界を盛り上げてもらいたい。

 

29 | 12 | 35 | 23 | 99 川崎

18 | 13 | 15 | 18 | 64 広島

 

写真/©︎B.LEAGUE 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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