Bリーグ

2021.06.28

2026-27シーズン“新B1”将来構想で高まるバスケ推進機運

 島田チェアマンが説明した将来構想では、2026-27シーズンの“新B1”を最大18クラブまでと想定し、逆に最低10に満たない場合は構想を断念するという考えが示された。また、参入クラブのライセンス審査に関して、いくつかの制度変更が行われる。世界に伍する最高のプレーや最高のエンターテイメントを提供し、より「バスケで日本を元気に」するための変更であり、クラブがプレーヤー・強化・スタッフ・地域活動に投資できる経営力をつけることが不可欠との考えに基づくものだ。

 内容としては、各クラブの昇降格撤廃、クラブライセンス基準の引き上げを伴っており、クラブの立場からはチャレンジングな制度変更となっている。しかし、それにより生まれ変わるBリーグの国際的な競争力と存在感の向上や、所属クラブの経営力・競技力のさらなる増強などが期待できる。

 

昇降格は撤廃し、クラブライセンス基準を引き上げる

 

 昇降格リスクがある現行制度下では、高いレベルで事業・競技を両立し順調に成長するクラブが現れる一方で、チーム投資を優先せざるを得ず、事業投資が思うようにできないクラブも生まれている。あらたな制度でこの昇降格を撤廃する理由は、事業投資ができる環境を整え安定的な成長を促すことだ。
また、より高いレベルで事業力・競技力の拮抗を図るための「ライセンス基準の引き上げ」によって、クラブがよりいっそう事業にフォーカスできる環境を作る。その結果として各クラブに長期的視野で成長するための投資を促し、活発化してきたホームアリーナ計画の推進を含めた地域活性化や社会課題解決に、さらに取り組みやすい環境を整える。

 

4月にオープンした沖縄アリーナは、各クラブの「夢のアリーナ構想」の先陣を切った(写真/©B.LEAGUE)

 

■競技上の昇降格の撤廃
事業投資促進のため、単年競技成績のみによる昇降格を廃止。ライセンス基準を満たすことが各新ディビジョンの入会基準であり、クラブ数に上限のないエクスパンション型リーグへ移行する。これにより計画的なクラブの経営力向上と、成長が可能な環境を創出する。

 

■ライセンス基準の引き上げ
目指すべきトップロリーグクラブの姿から逆算した基準を、新 B1、新 B2、新 B3(いずれも仮称)それぞれについて以下の通り設定し、事業力と競技力の再編による拮抗した戦いの提供をねらう。

<新B1>
2022-23シーズン、2023-24シーズンを対象とした審査により2024年には入会基準充足クラブの顔ぶれが確定し2年後の2026-27シーズンから参戦となる。初回審査では複数基準を設け、上位基準充足クラブ数を鑑みながら下位基準審査を最大4次審査まで実施。入場者数基準として平均4,000人と売上基準12億円に対する達成度、及びこれまで同様5,000人以上収容のアリーナ基準を満たしているかどうかの3点を審査する。

 基準の根拠となったのは「日本がバスケで盛り上がっていること」の捉え方。島田チェアマンは「少なくとも4,000人くらいのお客さんが入っていなければ地元を虜にしている状況とは言えない」と話し、その状況であれば事業売上を12億程度まで持っていけるとの認識を示した。
アリーナはその盛り上がりを最大化するためのインフラとして捉え、「2026-27シーズンから2028-29シーズンまでに新設アリーナ基準を充足したアリーナの利用(その“確からしさ”の証明として「着工済み」もしくは「施工者決定+実施設計進捗+諸課題解決進捗」であること)」を求めた。

 いわゆる体育館とは別物のアリーナには、バスケットボール以外の用途でも地域のシンボリックな存在として、サステナブルに運営されていく未来像を描いている。2年前に審査とカーディングを済ませる点についても、バスケットボールだけがアリーナを常に占有して地域のさまざまな活動を妨げないように、フレキシブルに運営していけるようにとの考えが反映された結果と説明した。

 審査基準に関する4,000人、12億円、アリーナというキーワードはゴールとして見るべきではなく、よりハイレベル経営が達成されることを目指していくうえでの最低条件と捉えるべきものだろう。
より具体的には、審査は第1次から第4次まで想定。第1次審査を通過するには、2期連続で入場者数4,000人と事業売上12億円(バスケ関連事業9.6億円)の達成および、2028-29シーズンまでに新設アリーナ基準を充足することとなっている。2026-27シーズンに向けた審査は2年前の2024年に行われるので、審査対象は2022-23、2023-24シーズンとなる。
第1次審査で18クラブが条件をクリアすれば、第2次審査以降は行う必要がない。18クラブを超える場合には、過去実績に基づく相対評価で決める。
第1次審査通過クラブが10に満たない場合に行う第2次審査は、入場者数と事業売上の上記基準を下げ、1期達成することが求められる。また第2次審査を経ても最少10クラブに満たない場合の第3次審査では、両基準がさらに「4,000人かつ9億円」もしくは「3,000人かつ12億円」のいずれかが1期で達成されていることが条件。そして最終の第4次審査では、「3,000人かつ9億円」となる。アリーナ基準に関しては、第4次まで条件は変わらない。島田チェアマンは「ここ(第4次審査までしなければ10クラブに満たない状態)までは来ない」との見通しを明かし、自信を示している。
上記入会審査は2026-27シーズン向けだが、将来構想が実現された状態の2026-27シーズンの次シーズン以降に向けても、同様の審査は継続して行われていく。ただしその内容は基本的には“新B2”からの昇格を想定したものとなる。その内容については一定の基準が示されたものの、今後のB2動向を注視しながら見直しも行われていくとのことだ。
いったん審査を通過して将来構想下のリーグに参入したクラブについての、事業力の継続的審査も行われていく。力強い経営力と競技力を持ち、地域社会をけん引し続けられるクラブ像が示され、求められているということだ。

 

<新B2/新B3>
新B2/新B3に関しても、全体基準の引き上げを行う。これにより新B3は完全プロリーグ化。新B1/新B2/新B3全体で「バスケで日本中を元気に」を実現していく。言葉としては、これまでのB1が「国内トップ水準」から「世界と伍する水準」へ、B2が「プロ水準」から「世界と戦うことができる水準」へ、B3が「プレプロ水準」から「プロ水準」へと、それぞれの認識を引き上げていく。
そのために行われる新B2/新B3の審査は、新B1のような段階的審査ではなく、新B2がアリーナ基準として3,000席、平均入場者数2,400人、売上高4億円、新B3では平均入場者数の規定は設けず事業売上として2億円といった数字が示された。

 

 Bリーグは、将来構想に関する情報を公式サイトでも紹介している。また7月1日には、特設サイトもあらたに開設される予定だ。広く一般にビジョンを共有していくことで、実際に運営・経営するリーグとクラブのみならず、見守る立場のファンやメディアとも良好な関係を作りながらバスケットボールを推進していく意欲の表れと捉えたい。

 

☆Bリーグ公式サイト内の将来構想関連ニュースページ

 

2026-27シーズン以降の将来構想は参入クラブに高い基準を求める内容だが、同時に大きな夢を描けるビジョンでもある(Bリーグファイナル2020-21より 写真/©B.LEAGUE)

 

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文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



タグ: 島田慎二

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