月刊バスケットボール8月号

no look passってなに?―バスケ英語企画『B IS FOR BASKETBALL』

バスケットボールのABC Part4 no look pass

 

 ここでは月刊バスケットボール2021年1月号84-85ページに掲載した、バスケに関する英語表現を紹介する企画『B IS FOR BASKETBALL』を補足しています。第4回目となる今回はno look passがテーマ。ゲストにはレバンガ北海道CCO(Chief Communication Officer)、そして国士舘大アシスタントコーチも務める松島良豪さんにご登場いただきました。動画では松島さんの華麗なno look passと英語の発音をご覧いただけます! ぜひご一緒にバスケで英語を楽しんでいきましょう^^
文=柴田 健 語学監修=Jorge Ribeiro, Michael Steenstra 絵=YU

 

 

 

 

no look pass、すなわち「あっち向いてホイ」で出すパス

 

 言葉としてのno look passは単純明快な構造で、イメージのまま「相手を見ないでボールを渡すこと」です。いってみれば「あっち向いてホイ パス」でしょう。ただし、いい加減なタイミングで受け取るのが難しいところにボールが飛んでいくのではありません。相手が受け取りたい瞬間に、その手元に責任をもって届けられるオンタイム デリバリーであることが当然。すぐさま2点、あるいは3点いただきの、芸術点をつけたくなるようなパスこそがこのカテゴリーに属します。

 月バス誌面には今回も同義語を3つ紹介していますが、ハードルは低くなく、ズバリこの表現に似た別の言葉はあまりたくさん見つかりませんでした(個々の言葉の詳しい紹介は動画の後半をご覧ください!)。ただ、そのうちの一つであるlook away passについて、アメリカの知人とやり取りしたり調べたりすると面白いことがわかりました。

 この言葉はawayをlookですから「(パスを出したい相手から)離れたところを見てパスをする」というのが直球の意味のようで、それならイコールno look passと思いきや、ほぼ同じでもちょっと違う捉え方になるようです。どう違うかというと、人によってはno look passは完全に顔がパスの方向と違う向きになっているパスで、look away passは視線だけが少しずれたところを見ているパスだと主張する人がいるのです。使われる頻度がかなり違う2つの表現なので、確かにまったく同じではないのかもしれないですね。
例えばスリーメンでボールを持ったアーヴィン“マジック”ジョンソンが、左手側のサイドライン沿いを突っ走るマイケル クーパーの方に顔を向けた状態で、逆サイドを駆け上がってくるバイロン スコットの手元に超正確な、柔らかく手に収まるようなパスを送るのがno look passだ! とそういう人は主張します。

 

look away passとno look passの違いはなんなんだ!?

 

「じゃあlook away passは?」と聞けば「パスを出す直前に視線をそらしながらだすのがlook awayだ。当然うまいパスだけど、no look passのほうがより明確に、まったく見ていない驚くべきパスなんだ」みたいな答えが帰ってきます。ジェイソン ウィリアムスが正面を向いてドリブルでゴールに向かい、ディフェンダーとの間合いを詰めながら一瞬左を見たその瞬間、右サイドを走ってきたダグ クリスティーに絶妙のアシストを送るシーンは、no look passではなくlook away passだ、となります。
…とオールドファン好みの人選で例を挙げてみました。小中学生にはわからない例かもしれませんが、そこはマジックのほかバード、ドリーム チームといったキーワードとともに生きてこられたお父さん、お母さん方の出番。レジェンドの輝きをぜひお子さん方にご説明お願いいたしますm(_ _)m
ちなみにマジックは今回のゲスト、松島さんのあこがれのレジェンド。そのあたりは月バス誌面もぜひご覧になっていただけたらと思います。Bリーグの1試合当たりのアシスト本数記録(18本)を持つ松島さんのインスピレーションが自分だったと知れば、マジックもきっと喜ぶことでしょう。いつかマジックに会う機会を作って、ぜひ伝えさせていただきたいと思います(よし、一つ目標ができたゾ)。
取材の際には松島さんに実際にno look passをやってみていただきましたが、これはやっぱり完全に引っかかるよなぁ…という「あっち向いてホイ パス」をたくさん受けさせていただきました。松島さん、大変ありがとうございました!

 

バック ビハインドでヒョイっと軽快に鋭いパスを繰り出す松島さん


ちなみに、no look passとlook away passの違いをことさら神経質に気にする必要はありません。アメリカ人の知人に聞いても「same play!」との返答でした。ただ、「なんだ、どっちでもいいのか」と忘れてしまうのはもったいないというか、これはこれでネタとして、ちょっと違う捉え方をする人がいるらしいことを知っていれば、「へぇ、そんな言葉や捉え方もあるんだね」と会話の弾みになるかもしれません。
この辺はその人その人の文化的背景が影響しているのでしょうね。「あれはlook away」だ、「いやno lookだ」と、それぞれの体験や感覚を言葉にしながらバスケを見たりやったりすること自体が楽しいんです。…ということを再確認し、また松島さんが世代的にはかなり上のマジックからの影響であのプレー スタイルを確立したことに感銘を受けた、no look passの巻きでした^^

 

このイラストを手掛けたYUの公式YouTubeもぜひチェックしてみてください。『YUの訪問先【YU's Journey】』
https://www.youtube.com/channel/UCMzItLndJPcPmywC28AWQJA

(月刊バスケットボール)



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