月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.04.08

ダービス・ベルターンス(ウィザーズ)に聞いたショット・メイカーのメンタリティー

208cm長身のシューター、ベルターンスは、ラトビアン・レーザーの異名でも知られている(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)

 

 日本時間4月8日(アメリカ時間7日)のオーランド・マジック対ワシントン・ウィザーズの一戦は、ウィザーズが131-103で勝利を収め、連敗を4で止めた。この試合では故障で戦列を離れていた2人のスターター、八村 塁(右肩の張りで2試合欠場)とブラッドリー・ビール(臀部の挫傷で5試合欠場)がともに復帰を果たし、ウィザーズは久しぶりに本来あるべき姿に戻ることができていた。
その中で、前の試合までなかなか決まらなかったショットも当たり出した。チームとしてのフィールドゴール成功率は57.6%(85本中49本成功)で、中でも3Pショット成功率も52.8%(36本中19本)。スコット・ブルックスHCはこのところシューティングで思うような数字が残せていないことをチームの課題に挙げていたが、こうなるとワシントン・ウィザーズは強かった。4連敗中のシューティングを振り返ると、フィールドゴール全体は365本中159本成功の43.6%、3Pショットに関しては116本中32本成功で成功率27.6%にとどまっていた。特に2日前、ゲイリー・トレントJrのブザービーターとなる逆転3Pショットを食らって敗れた対トロント・ラプターズ戦では第3Qまで25本中11本成功(成功率44.0%)だったのが第4Qで10本中1本成功のみという厳しい数字になっていた。
その意味で、対マジック戦の勝敗を左右したプレーヤーの一人としてダービス・ベルターンスの名前を挙げることができる。この日ベンチスタートで19分40秒プレーしたベルターンスは3Pショット11本中6本を成功させ、フリースローも4本すべて成功の22得点という活躍。3Pショットはアテンプトも成功数もチームハイであり、得点はビール(26得点)、ラッセル・ウエストブルック(23得点に14リバウンド、15アシストのトリプルダブル)に次ぐ3番目の数字だった。
ベルターンスは前述の対ラプターズ戦第4Qで、3Pショットを1本しか打つことができず結果もミスショットだったので、シューターとして悔しい思いをしていたはずだ。それがマジック戦に向けた格別のモティベーションになったのだろうか。
ベルターンスにその点を聞くと「あの試合はあの試合、この試合はこの試合です。相手も違いますからね」との答えだった。シューティングにはメンタルな要素が多分に影響するものと思うが、それだけに、ショット・メイカーとして知られるベルターンスは内面の切り換え方を心得ているのだろう。「前の試合の第4Qは相手がシューターに対する警戒を高めて良いショットを狙えませんでしたが、今夜はオフェンス面で我々のやりたいことができたので、僕も戦いやすかったです」とベルターンスは続けた。3月後半から新型コロナウイルス関連の安全衛生プロトコル対象となり7試合を欠場し、この日の試合は復帰後3戦目。しかしここまでの悪い流れを引きずらずに本領を発揮できた点はさすが名シューターだ。
ベルターンス本人による英文の回答は以下のような流れだった。
“I think we’re just…, those are two different games, two different teams. In the 4th quarter, they were probably more paying attention to the shooters a little bit and not giving us good looks. Tonight, I think offensively we got whatever we want so that just made the game easy.”

 

八村とビルの復帰、そしてシューティングの改善が感じられた試合後のブルックスHCは表情も明るかった


ベルターンスが大いに本領を発揮できた背景に八村とビールの復帰の影響があるのは間違いないところだ。ブルックスHCは、それによりプレーヤーたちが本来の役割をこなすことができるようになりオフェンスが好転したと話し、その中で役割を果たしたベルターンスの仕事ぶりを高く評価した。「DB(ベルターンスの呼び名)は良い感じでしたね。体調も良く、相手との大きな違いを生み出してくれる存在です。彼がスクリーンを使って動き回ると彼自身がボールを受けられるだけではなく、ドライブをうかがうガードにとってもペイントに攻め込みやすく、得点しやすくなりますから(DB is feeling good. He’s healthy. But he's a big difference maker. When he’s flying off the screens, not only does he get the ball at times but he allows our drivers and our penetrate…, guards to get to the key and get easy buckets)」
一方、敗れたマジックのスティーブ・クリフォードHCは、最大の敗因としてベルターンスら相手シューターに対するディフェンスの甘さを挙げた。「外から狙ってくるシューターに対してもっと寄っていかなければいけませんでした。ピック&ロールからにせよ、ドライブしてキックパスを展開するプレーにせよ、もっと出ていかなければ。何しろ彼らが成功させたショットのほとんどは、残念ながら良いリズムで打たれていましたからね。良いシューターにそれを許せば決められてしまいます(You know more of just getting to the shooters, you know their range shooters. And whether it was off pick-and-rolls or like their drive-and-kick game…, I mean they had to spread out. And you know I mean majority of their shots that they made were unfortunately in-rhythm shots. Good shooters, they’re gonna make those)」
一試合だけでチーム全体のシューティングが復調したかどうか判断できるものでもないだろうが、ウィザーズはやはりロスターが安定しさえすれば相当な脅威となるチームであることをこの日の結果は示している。八村はこの日9得点で、2ケタ得点の連続試合は11試合で途切れたものの7リバウンド、2アシスト、3スティールとオールラウンドに活躍できていたし、ウエストブルックとビールの爆発力はこの日の数字が示すとおり。ただ、コンディションとしては次戦以降にも二人がそろって出場できるかは今のところ明確ではなさそうなので、ウィザーズのチームとしての復調は、今後の試合を一つ一つ見ていく必要がありそうだ。

 

クリフォードHCはシューターに対するディフェンスの甘さを認めていた

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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