月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.05.28

B2昇格決定戦2021-22を前に特に見ておくべき数字

 トライフープ岡山とアルティーリ千葉が戦う5月28日(土)の“東京体育館決戦”、B2昇格決定戦2021-22は、どんな試合になるだろうか。両チームのシーズン中の数字を振り返り、いくつかの項目からこの対戦の見どころを探ってみた。


☆得点・失点と直接対決結果
得点 岡山90.4(リーグ2位) A千葉89.4(リーグ4位)
失点 A千葉76.6(リーグ5位) 岡山79.7(8位)
直接対決結果
1月4日(大網白里アリーナ) A千葉80-77岡山
1月5日(大網白里アリーナ) A千葉87-60岡山
4月16日(ジップアリーナ岡山) 岡山80-102A千葉
4月17日(ジップアリーナ岡山) 岡山81-84A千葉


両チームは、リーグ戦順位としてはA千葉が2位(37勝7敗、勝率.841)、岡山が5位(29勝14敗、勝率.674)。しかし得点と失点には大きな差がなくほぼ互角の数字だ。両チームとも破壊力のあるオフェンスでハイスコアリングな展開を得意としてきたが、直接対決の4試合ではA千葉の88.3得点に対し岡山が74.5得点で、シーズンアベレージと異なり2桁の差がついている。勝敗としてもA千葉の4戦全勝だった。

 

 ただし最初と最後の2試合は3点差。一発勝負のB2昇格決定戦では、過去の数値を単純にうのみにすることはできない。


A千葉では今シーズンリーグ3位の平均22.3得点を記録したイバン・ラべネルが、岡山ではその上を行く平均23.8得点で得点王となったクリストファー・オリビエが軸。4月17日にジップアリーナ岡山で行われた直近の対戦ではラべネルが33得点、オリビエが30得点と甲乙つけがたい得点力を披露していた。

 

 

 二人がどのようなパフォーマンスを見せるかにより、間違いなく得られる結果は異なってくる。また、岡山には今シーズンリーグ3位の1.4ブロックを記録したチュクゥディエベレ・マドゥアバムというショットブロッカーがおり、チームとしての3.4ブロックはリーグ3位の高水準。岡山がペイントをどう守るか、A千葉がどんな形でそこを崩してオフェンスを組み立てるかも見どころの一つになる。


☆リバウンド
総数 A千葉41.9本(リーグ4位) 岡山38.5本(リーグ9位)
オフェンス A千葉11.2本(リーグ9位) 岡山8.9本(リーグ15位)
ディフェンス A千葉30.6本(リーグ1位) 岡山29.5本(リーグ6位)


リバウンドに関してはアベレージ上A千葉が優位な数字で、直接対決の4試合でもいずれもA千葉が岡山を上回った。4試合平均で比較するとA千葉が36.5本に対し岡山が29.5。ただし最初と最後の2試合に絞ると、A千葉35.0本、岡山31.5本と差が縮まっている。つまり、よく言われるとおりリバウンド数が試合結果と相関していたと言えそうな傾向だ。


A千葉のリバウンドの核はリーグ3位の平均12.3本を記録したケビン・コッツァーで、直接対決の4試合ではシーズンアベレージを上回る平均13.5本のリバウンドをつかんでいた。A千葉はバックボードに食らいつくアグレッシブなリバウンドを40分間遂行することが勝利に欠かせない。岡山側からは、コッツァーだけでなく、ビッグがボックスアウトしたところに飛び込んでくるA千葉のペリメーターのプレーヤーたちとの50-50ボールの奪い合いをどれだけ制することができるか。ここは勝負を分けるポイントの一つになりそうだ。


☆3Pシューティング
成功率 A千葉37.9%(リーグ1位) 岡山35.8%(リーグ3位)
成功数 A千葉8.1本(リーグ6位) 岡山7.8本(リーグ8位)
ボリュームシューター(1試合での3P成功本数1本以上)
岡山(4人=合計5.3本、成功率39.1%)
向井祐介(1.7本、42.1%)、ジェフリー・パーマー(1.2本、38.8%)、小堺 翼(1.3本、33.7%)、樋口真斗(1.0本、43.2%)

A千葉(3人=合計4.9本、成功率41.2%)
大塚裕土(2.0本、41.3%)、岡田優介(1.7本、41.9%)、イバン・ラべネル(1.2本、40.2%)

 

 

 4度の直接対決のうち、点差が開いた2試合目、3試合目は3Pシューティングに明暗が現れていた。両チームはB3を代表する3Pショットのエリート同士だが、A千葉が87-60と点差を開けて勝利した1月5日の対戦(2試合目)では、岡山が23本中2本の成功(成功率8.7%)にとどまったのに対しA千葉は19本中9本成功(成功率47.4%)。また4月16日の3度目の顔合わせでは岡山が16本中4本成功(成功率25.0%)だったのに対し、A千葉は22本中12本成功(54.5%)で、102-80のA千葉勝利という結果だった。


対して接戦となった初戦と最終戦では異なる傾向だ。岡山は初戦で29本中10本成功(成功率34.5%)、最終戦も24本中9本成功(37.5%)と安定感があった。A千葉は初戦が19本中5本成功(成功率26.3%)、最終戦が26本中13本成功(成功率50.0%)。岡山が3Pショットを安定して決める展開になると、A千葉にとっては当然イヤな展開になる。逆にA千葉のディフェンスでのローテーションが機能して簡単に打たせないようだと、岡山にとって厳しい状況が訪れる。両チームのペリメーター・ディフェンスとロングレンジの決定力が結果を左右する大きな要素だ。


最初と最後の対戦では、岡山は今シーズン3P成功率ランキング3位の向井が計9本中7本の3Pショットを決めていた。また、シーズン最後の5試合で18本中9本成功(成功率50.0%)の川満寿史が、この試合で5本中3本成功(60.0%)だった。


また、両チームの“ボリュームシューター”として触れている顔ぶれの調子が重要なのはもちろんだが、中でも平均成功数が唯一2本に達しているA千葉の大塚裕土、そして岡山では昨シーズン3P王だった小堺 翼の両キャプテンの奮起は、リーダーシップとともにカギとなるのではないだろうか。また、岡山の川満、A千葉の小林大祐(平均0.8本、成功率33.7%)をはじめとした両チームのペリメーター・プレーヤーの出来が勝負に響くだろう。


☆フリースロー(FT)とファウル
FT成功数 岡山18.4本(リーグ1位) A千葉16.7本(リーグ2位)
FT成功率 A千葉76.2%(リーグ1位) 岡山69.4%(リーグ9位)
ボリュームシューター(毎試合2本以上成功)
岡山(4人=合計13.2本、成功率68.4%)
クリストファー・オリビエ(5.3本、67.2%)、チュクゥディエベレ・マドゥアバム(3.5本、69.0%)、ジェフリー・パーマー(2.4本、70.6%)、若狭功希(2.0本、68.1%) 

A千葉(2人=合計7.4本、成功率82.7%)
イバン・ラべネル(5.3本、81.3%)、小林大祐(2.1本、86.7%)


ファウル数 岡山21.6個(リーグ1位) A千葉17.3個(リーグ13位タイ)


最後に、重要な一戦の勝負を分ける要素としてフリースローとファウルに触れておきたい。両チームはフロントラインのフィジカルなプレーでフリースローを得、多くの得点につなげている。ただし成功率に差があり、また両チームはファウル数にも差がある。


岡山としてはファウルの少ないA千葉にフィジカルなプレーを仕掛けて相手のファウルトラブルを狙い、フリースローで得点という戦い方もありそうだが、大事なのはそこで逆にターンオーバーを犯さないこと、そして機会を得たら決めきることだ。逆にA千葉側は、どれだけ忍耐強くファウルせずに守れるか。あるいは、有効にファウルを使うことはフリースローという問題を離れても非常に重要だ。同時に岡山のファウルを誘ってフリースローを得たときに、ビッグゲームでもデータが示す通りの精度を発揮できることが重要になってくる。

 

 岡山には今シーズンのフリースロー王となった向井(48本中44本成功、成功率91.7%)、A千葉には同ランキング2位の小林大祐(98本中85本成功、成功率86.7%)という名手がいる。終盤に彼らが存在感を示すような展開なら、試合としても見応えのある内容に違いない。


意地がぶつかり合う激闘の40分間、抜け目なく自分たちの力を出し切れば、どちらのチームにも勝機がある。お互いのスカウティングも進んでいるはずの今回は、いくつもの傾向を受けてゲームプランをぶつけ合う。可能性としては80点台の勝負で最後にリバウンド1本が穫れるか、フリースロー1本、3Pショット1本を決められるか…という状況になるのではないだろうか。

 

☆B2昇格決定戦2021-22 トライフープ岡山 vsアルティーリ千葉
日 程: 2022年5月28日(土) 19:00 TIP-OFF
会 場: 東京体育館

放送・配信: B3TV、バスケットLIVE、J:COM チャンネル(地デジ 11CH)

※J:COMチャンネルは6月5日(日)2:00~4:00(6月4日[土]26:00~28:00)の録画放送(放送エリア:千葉市)

 


(月刊バスケットボール)



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