月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.05.31

宇都宮ブレックス「やられたらやり返す」24点差大勝- B1ファイナルは決戦のGAME3へ

 千葉ジェッツの20点差の快勝で始まったB1チャンピオンシップファイナルは、GAME2が5月30日に横浜アリーナで行われた。この日は前日と全く逆に、宇都宮が83-59という豪快な勝ちっぷりでシリーズをタイに持ち込んだ。内容としても、東地区王者となった宇都宮が、引き締まったディフェンスと泥臭くボールを追いかける本来の姿を際立たせる展開。また、ベンチプレーヤーまでも含めた一体感がコート上の5人の背中を押していることが感じられる戦いぶりでもあった。

 試合後の会見で渡邉裕規は、前日の内容を「恥ずかしい試合」と表現した。このまま終わってなるものか――自分とチームにそう言い聞かせるかのようなこの表現に、初代チャンピオンのプライド、今シーズンの東地区チャンピオンのプライドがあふれていた。

 宇都宮が主導権を握れた大きな要因は、リバウンドということになるだろう。前日5本しか決められなかった3Pショットを、倍の10本決められたことも大きかった。戦術、駆け引き、いろいろな要素が試合の結果を生んだ。しかし勝負を決めたのはプライド。これに尽きる。

 千葉はセバスチャン・サイズのポストプレーで先制したが、続くポゼッションで宇都宮は遠藤祐亮の3Pショットが決まりすかさず3-2と逆転。富樫勇樹の3Pショットが決まり千葉が再び5-3とリードを奪い返したが、宇都宮は次のポゼッションでもライアン・ロシターが得点を奪い5-5。ティップオフから2分は互角。しかしこの時点から、宇都宮が勢いをつかんでいく。

 宇都宮が5点目を奪った2度目のポゼッションでは、早々に3Pショットを成功させた遠藤が再び3Pショットを狙った。これはミスになったが、こぼれ球に食らいついたのがジョシュ・スコット。前日徹底的にやられたオフェンシブ・リバウンドからボールを鵤 誠司につなぐと、鵤もペイントから果敢にゴールを狙った。このショットもこぼれたが、それをロシターがティップインして得点に繋げた。

 宇都宮のアグレッシブさが強く表現されたこのポゼッションから、宇都宮はあっという間に18-5と13点のリードを積み上げた。第1Q、リバウンドの勝負を見てみると宇都宮が13本に対して千葉は6と半分以下。千葉はコー・フリッピンが前日に続き好調で、3Pショット1本を含む3本のフィールドゴールすべてを成功させこのクォーターだけで7得点を奪い、富樫も序盤の3Pショットを含め5得点でチームをけん引した。しかし、大きな武器であるはずのフロントラインが先制点となったサイズの2得点止まり。第1Q終了時点で宇都宮に26-16と2ケタ得点差のリードを奪われた。

 第2Qに入っても宇都宮は積極性を失わず攻勢を続けた。このクォーターではロシターが2本の3Pショットを成功させたほかジェフ・ギブス、LJピーク、渡邉裕規も1本ずつ決め、チームとして3P成功率が50%(10本中5本成功)。これはリーグ戦期間の対戦で見られた宇都宮の勝ちパターンであり、こうなると千葉は苦しい。このクォーターではギャビン・エドワーズが7得点に4リバウンドと調子を上げてきてはいたが、前半終了時点で点差は20。52-32という思わぬ大差で宇都宮が突っ走っていた。

 とはいえ千葉もおとなしく黙っていたわけではない。後半開始時点の20点差は、第3Q終盤、残り30.8秒に西村文男が3Pショットを決めた時点で66-48の18点。何とか挽回できる範囲に踏みとどまっていた。現代バスケットボールで18点差はワンチャンス…とは言えないかもしれないが、良い流れを2度でも作れれば追いつける点差だ。

 しかし次のポゼッションで千葉は、西村のレイアップが惜しくもリムに弾かれ、そのリバウンドをロシターがつかみ取る。ほぼ24秒のショットクロック丸ごとの残り時間でボールを得た宇都宮は、第3Q終了までの時間いっぱいを使って比江島 慎が華麗なドライビング・レイアップを沈め68-48。千葉の追撃はあと一歩のところで勢いをそがれ、点差を詰めることができない。

 

【関連記事】 宇都宮の2度目か、千葉念願の初王座か? – B1ファイナル展望

 

サイズのディフェンスをかわし得点をねらうロシター。GAME2ではリバウンド、得点、アシストでゲームハイを記録する大活躍だった(写真/©B.LEAGUE)

 

【関連記事】 千葉ジェッツが20点差の圧勝で初のリーグ制覇に王手 - B1ファイナルGAME1レポート


第4Qが始まっても、千葉は流れをつかむことができなかった。このクォーターは、開始から約5分間にわたって宇都宮がオフェンスでミスを連発させ得点することができなかったにもかかわらず、ディフェンスとリバウンド、ルーズボールの頑張りで千葉の得点を4にとどめていた。

 この時間帯の攻防で、もしも千葉側に3Pショットが1本でも決まっていたら、あるいは速攻からの得点があと1本でも奪えていたら、その後の展開はちがっていたのかもしれない。しかし宇都宮のハッスルはコートの隅から隅までをカバーするような印象を与えるものだった。緊迫した流れの中、スコットのレイアップがリングからこぼれたところをロシターがティップして押し込む。残り5分11秒、70-52で宇都宮リード。

 ここが分かれ目だったのではないだろうか。お互いに我慢強く戦っていた中、千葉側から見れば一番やられたくなかったオフェンシブ・リバウンドからのセカンドチャンスによる失点。千葉はこれ以降、点差を詰めることができず、83-59の24点差で試合終了となった。

 試合後の会見で安齋竜三HCは「昨日の試合では自分たちの強みややってきたことを、逆に千葉にやられてしまった。今日はウチの強みはどこかを選手全員が見つめ直して、プライドを持ってやってくれた」と勝利を振り返るとともに、竹内公輔、田臥勇太、喜多川修平ら出場機会が少ないベテランを含め全員が戦いに参加していたことを大いに評価した。「これが本当にウチのチームらしさ。そこが今日は出せて本当に良かった」。

 千葉の大野篤史HCは「昨日自分たちの勝ったところですべて負けていた」と敗因を分析。宇都宮に多くのポゼッションを与える結果につながったリバウンドでの苦戦を最大の要因として挙げていた。ただ、「選手全員わかっているけど頑張り方が違った。自分が何とかしようという思いが強くなりすぎていた」とも話し、チームとして手を抜いたようなことではなく、意欲の空回りをその原因として捉えていた。

 頂点まであと一歩まで迫った千葉は、Bリーグ史上初めて2戦先勝方式で行われているファイナルで、誰も味わったことのない緊張感に直面しているのかもしれない。富樫はそれを肌で実感しているかのように、ゲーム3に向けて「もう一度チャンスがあるのでメンタル的に準備して臨みたい」と闘志を見せた。

 B1ファイナルは、6月1日(火)に行われるゲーム3で日本一のクラブを決めることとなった。宇都宮か。千葉か。どちらのプライドが上回るか。勝ったチームがすべてを手にする決戦の舞台が整った。

 

エドワーズはこの試合で12得点、9リバウンドを記録したが、第4Qは無得点、1リバウンドに終わった(写真/©B.LEAGUE)

 

【関連記事】 宇都宮vs千葉のB1ファイナル、横浜アリーナで5.29(土)開幕


☆B1チャンピオンシップファイナル第1戦・第2戦結果
第1戦
日付: 2021.05.29 会場: 横浜アリーナ 観衆: 4,678人
千葉85-65宇都宮 宇都宮0勝 千葉1勝
宇都宮 65 17 18 11 19
千 葉 85 19 17 21 28
宇都宮トップパフォーマー 得点=ジョシュ・スコット(18)/リバウンド=ジョシュ・スコット(7)/アシスト=ライアン・ロシター(5)
千葉トップパフォーマー 得点=ギャビン・エドワーズ(15)/リバウンド=セバスチャン・サイズ(16)/アシスト=シャノン・ショーター(5)


第2戦
日付: 2021.05.30 会場: 横浜アリーナ 観衆: 4,700人
宇都宮83-59千葉 宇都宮1勝 千葉1勝
宇都宮 83 26 26 16 15
千 葉 59 16 16 16 11
宇都宮トップパフォーマー 得点=ライアン・ロシター(17)/リバウンド=ライアン・ロシター(11)/アシスト=ライアン・ロシター(6)
千葉トップパフォーマー 得点=セバスチャン・サイズ(15)/リバウンド=ギャビン・エドワーズ、セバスチャン・サイズ(9)/アシスト=シャノン・ショーター(3)

 

☆日本生命B.LEAGUE 2020-21 FINALS GAME3
Bリーグファイナル第3戦情報
【対戦カード】 宇都宮ブレックス(1勝1敗) vs. 千葉ジェッツ(1勝1敗)
【開催日時】 GAME3 2021年6月1日(火)19:05
【試合会場】 横浜アリーナ
【チケット】 販売方法が変更され、出場クラブファンクラブ会員には抽選販売を行い、一般販売は見送りとなっている(詳細は公式サイトで確認のこと)


☆B1ファイナル公式サイト
https://www.bleague.jp/postseason/2020-21/finals/ticket/


【放送メディア】
<放送(地上波/BS)>
GAME 3 NHK BS1 19:00~
<配信>
全試合ライブ配信 バスケット LIVE(※1)/スポーツナビ
全試合 VR ライブ配信 VR SQUARE
<放送(CS/その他)>
全試合ライブ配信 スカパー!B リーグセット/Amazon Prime Video チャンネル
/DAZN/Hulu
※1:マルチアングル配信含む

日本生命B.LEAGUE 2020-21 FINALS特設ウェブサイト
https://www.bleague.jp/postseason/2020-21/finals/

 

【関連記事】 リバウンドで千葉にリズムをもたらしたギャビン・エドワーズ「良いシュートが打てればリバウンドも良いところに落ちてくる」


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



PICK UP