月刊バスケットボール6月号

大学

2022.05.09

【大学バスケ】火花を散らした得点王と3P王のライバル関係

 5月8日に最終日を迎えた第71回関東大学バスケットボール選手権大会、通称“スプリングトーナメント”。男子5位決定戦は、1部の強豪・大東文化大と、昨年3部で全勝優勝して今年度から2部に昇格する山梨学院大の対決になった。結果的には、大東文化大が88-62で勝利し、5位フィニッシュ。山梨学院大は3Pシュートや速攻を決めて前半までは1点差に食らい付いたものの、相手の堅いディフェンスを前に後半から失速し、一矢報いることはできなかった。

 

 この試合、個人的にも熱い火花を散らしていたのが、大東文化大の#4菊地広人と山梨学院大の#67武内理貴だ。一方がシュートを決めればもう一方が決め返すようなシーンも見られ、さらに菊地はディフェンスで武内に付いて、簡単にはボールを触らせないほどの激しいプレッシャーを仕掛けていた。

 

 

 当の本人たちにそこまで意識はなかったようだが、この2人は先に試合を終えていた拓殖大の益子拓己(7位決定戦で4本の3Pを含む27得点)も含め、今大会の得点ランキングと3Pランキングを僅差で争っていた。結果的には、この最終試合で5本の3Pシュート(30得点)を決めた菊地が順位を抜いて3P王に。また、得点ランキングではこの試合で17得点を決めた武内が、益子(80点)や菊地(77点)を上回る84点で逃げ切り、見事得点王に輝いた。

 

 

 試合中にも「(マッチアップするのが)しんどいよ(笑)」と楽しそうに会話を交わしていた菊地と武内。実は高校3年生のとき、2019年のウインターカップ1回戦で対戦しており、お互いの実力をその頃から認め合う仲だった。当時は菊地が28得点を挙げた藤枝明誠高が112-80で勝利したが、敗れた松山工高のエース・武内も36得点を奪取。菊地は「(武内のことを)チームとして対策しようとしたのですが、止め切れなくて…。すごい選手だなと思って、自分はずっと覚えていました」と振り返る。

 

 その後、お互い大学生となったが、1年時は関東1部と3部で隔たりのある舞台。2年生になった昨年のスプリングトーナメント、ベスト8懸けで対戦したが、そのときはまだ菊地が層の厚い大東文化大の中でそこまでプレータイムを得られなかった。だからこそ、今回の対決は“3年越しの再戦”と言って良いだろう。武内は「恐らく『0得点に抑えてやる』くらいの感じで、ディフェンスの覇気がありました」と菊地の印象を語り、菊地は「武内選手のすごさはよく知っていたので、今日は絶対に負けられないなと思っていました」と気合い十分だったことを明かす。

 

 そうして熱い戦いを繰り広げながら、最終的には得点王と3P王という2つの栄冠を分け合った2人。まだ3年生とあって、今後も良きライバル関係は続いていくだろう。2部から1部昇格を目指す山梨学院大の武内にとっては、来年度、今度は1部の舞台で再びマッチアップしたいところ。これからも、切磋琢磨し合う彼らの行く末に注目したい。

 

 

取材・文・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

 



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