月刊バスケットボール6月号

大学

2022.04.30

【日筑戦男子】古橋正義(日体大)×中田嵩基(筑波大)のキャプテン対談

 4月17日、日本体育大世田谷キャンパスにて今年も日筑定期戦が開催された。日体大と筑波大による定期戦で、今年で開催57回目という伝統を誇る一戦。両チームにとって新チーム最初の公式戦という位置付けにあり、今シーズンを占う重要な戦いとなる。今年の男子本戦は両チームともに1年生も含めて多くの選手が貴重な試合経験を積み、たくさんの収穫を持ち帰った。ここではそのゲームレポートと、試合後に行った#1古橋正義(日体大)×#92中田嵩基(筑波大)のキャプテン対談の模様をお届けする!

 

 

男子本戦は筑波大が日体大の追い上げをかわす

 

 日体大はインサイドの#35ムトンボ・ジャン・ピエール(206cm)や#89楊博(195cm)がケガで欠場。そのためスタメンが全員190cm以下というスモールラインナップとなった。立ち上がりは#23小川麻斗や#31青木遥平が機動力を生かして得点するが、その後は筑波大の高さを前に攻めあぐねる。その間、筑波大は#92中田を起点に#34三谷桂司朗らが得点を重ね、23-11と11点リードして1Qを終えた。2Qも引き続き、筑波大が逃げて日体大が追い掛ける展開に。筑波大は1年生の4人、#1福田健人(中部大第一高)、#5岡川久輝(北陸高)、#13岩下准平(福岡大附大濠高)、#41大澤祥貴(福岡大附大濠高)も起用しながら、いろいろな布陣を試していく。一方の日体大も1年生の西部秀馬(東山高)が果敢にドライブを決めるなど、両者フレッシュなメンバーがコートで躍動した。39-31の筑波大リードで後半へ。

 

3Q、引き離せそうで引き離せない筑波大に対して、日体大は#23小川や#31青木の3Pシュートで10点前後のまま付いていく。55-46で入った4Qには、残り7分で#23小川の3Pシュートが決まり5点差(59-54)に。だが筑波大も#28浅井英矢のフリースローや#13岩下のスティールで再び盛り返し、逆転はさせない。最後はコートに戻ったスタートのメンバーがきっちり仕事を果たし、81-70で日体大を振り切った。

 

 サイズで不利になった日体大は走力や3Pシュートを生かして最後まで追いすがるも、筑波大は慌てずに対応。タイムシェアしながら堅いディフェンスを崩さず、トーナメントにつながる大きな1勝を手にした。

 

今季の意気込みを語る男子キャプテン対談
古橋 正義(日体大4年/184cm/福岡第一高)×
中田 嵩基(筑波大4年/173cm/福岡大附大濠高)

 

 

――試合の振り返りからお願いします。

 

中田 日筑は今シーズン最初の公式戦ですし、お互いに大濠、福岡第一出身の選手も多いので、絶対に負けたくないという気持ちでしっかり万全を期して戦いました。前日も練習試合だったので疲労が溜まっている中でのゲームでしたが、しっかりタイムシェアしながら、要所でいいプレーも出たし新たな課題点も見つかって、すごくいい試合だったと思います。

 

古橋 この試合にはもちろん「勝ちにいく」という気持ちもありますけど、何より日頃練習してきたことを試す場として挑みました。昨年まで固定メンバーで戦ってきた僕たちとしてはいろんな選手が試合に出てタイムシェアできましたし、負けはしましたけれどいろいろ収穫はあったかなと思います。

 

――自分個人としてはいかがでしたか?

 

中田 個人的には最近までケガしていて、この試合がほぼ復帰戦でした。だからどこまで前からディフェンスのプレッシャーをかけられるか未知数で、その点は結構できたかなと思います。ただ、反省点としては僕たちのピックプレーに対して、日体が今回小さい布陣だったこともありほぼスイッチしてきて攻めにくかったので、もう少しスムーズに攻められるような組み立てをするべきでした。

 

古橋 井手拓実さん(広島)という得点源の抜けた穴が今年は大きいので、その中で自分がもっと得点に絡まなければいけないという意識でプレーしました。今日の試合は自分が5番ポジションをやったこともあって、かなり大変でしたし得点の面もまだまだでしたね。ただ、チーム的には雰囲気も良い感じで戦えたので、まぁいいかなと思っています。

 

――お二人は高校時代からよく知る仲ですが、今日の試合での印象は何かありますか?

 

古橋 (中田)嵩基は、いつもどおりポーカーフェイスだなって(笑)。顔に出ないですよね。いつもどおりクールで冷静でした。あと、安定してシュートがうまい。良いところで決めてくるじゃないですか。ちょっとムカつきますね(笑)。

 

中田 今日の試合、コーナーでフェイクしてジャンプシュート打つときに、『お、ノーマークだな』って思ったら、正義が結構遠くからめちゃくちゃクローズアウトしてきて、『え、そんな来る?』って。『こいつ、絶対俺に決めさせない気だな』って思いました(笑)。でもそこで僕も絶対決めてやるって熱くなって打ち過ぎて、結果的に交代させられましたね(笑)。

 

――お互いバチバチだったわけですね(笑)。中田選手から見て古橋選手の印象は?

 

中田 (古橋)正義は、普段はおちゃらけているんですけど、バスケになると真面目なんです。今日も苦しいときに率先して声をかけたり、プレーで引っ張ったり、良いロールプレーヤーぶりを感じました。僕たちが良い流れをつかみそうなとき、正義がいると日体が踏みとどまる印象があります。

 

――お互いに聞いてみたいことはありますか?

 

古橋 嵩基はシュートの確率がめっちゃいいので、何を考えて打っているのか聞きたいですね。無駄な本数を打たずに、2/2とか3/3で決めてくるからすごい。相手からすればめっちゃウザい選手です(笑)。

 

中田 しかもなぜか僕がシュート入るときって、相手に福岡第一の選手がいるときなんですよね(笑)。日体とか東海の試合は結構入る。何でだろう…。勝手にスイッチが入るんでしょうね。

 

古橋 高校の時からそうだもんな。福岡第一との試合はすごい入る。

 

中田 確かに(笑)。まぁ、シュートのときに何を考えているかとは違いますけど、自分の中でスイッチの入れ方というのはありますね。僕は「決めたい」って強く思ってしまうと気負って全然入らなくなるので、気負わないように、わざと試合のことを忘れるようにしています。音楽を聴いたり関係ない動画を見たり。試合のことを考えずにアップして、試合が始まるときに「あ、試合だな」くらいの感じで入ると、不思議とシュートが入るんです。

 

――興味深いメンタルコントロールですね。では中田選手から古橋選手に聞いてみたいことは?

 

中田 ここ数年思うんですけど、正義ってこの身長(184cm)でたまに4番ポジションもやるじゃないですか。今日なんて5番だし(笑)。よくその身長で、大きい選手を守ったり攻めたりできるなって。どんなことを考えながらやっているのかコツを知りたいですね。

 

古橋 それはたぶん、俺って“セコい”んですよ(笑)。自分より大きな選手に対して真っ向から100%で頑張ろうとしたら、たぶん戦えない。工夫することが大事かなって。僕、福岡第一のときから結構セコくて、相手にバレないように手を抜くのがうまいと思うんです。試合中、無駄なところで頑張っても意味ないと思うので、「今はサボれるな」って思ったらディフェンスしていてもただ見てるだけとか。抜くところと頑張るところのメリハリを付けると良い気がします。オフェンスでも、ドリブルが苦手なのでなるべくドリブルしないでカッティングで抜けるようにと考えて、相手が目線を切った瞬間にカッティングするとか。オフェンスもディフェンスも、全体的にセコいんだと思います。藤田さんにもよく「お前、セコいなぁ」って言われます(笑)。

 

――キャプテンから見て、今年の自分たちのチームカラーを教えてください。

 

中田 去年は4年生の半澤凌太さん(三遠)、二上耀さん(千葉)、井上宗一郎さん(SR渋谷)がドーンと3本柱としていて、そこにみんなが乗っかる感じのチームでしたが、今年は1、2年生がやんちゃというか、思い切ってフレッシュに戦う感じがあるのかなと思っています。そういった意味では下級生も含めてタイムシェアできるのではないかと。毎年、僕たちってケガ人が出て大事な試合で誰かしらいないパターンが多いので、そのリスクマネジメントも含めて試合で使える選手が多いことは大事ですよね。メンバーがどんどん変わりながら、激しいディフェンスを仕掛けることが今年の課題ですし目指しているチームカラーです。

 

古橋 今年の日体は……チームカラーで言ったら「白」ですね。

 

中田 本当に色で表すんだ!?(笑)

 

古橋 白ってこれから何色にもなれるじゃないですか。そういう可能性を秘めたチームです。ただ逆に言えば、白って上から塗られると弱いですよね。それがまさに、勢いに乗っているときは良くても、相手に勢いに乗って来られると沈んでしまうのが課題で、僕たちらしいなって思います。

 

中田 うまいこと言うね!

 

――では筑波大を色で表すと?

 

中田 筑波は青ですかね。冷静。でも冷静過ぎて淡々としてしまったり、相手にのまれたときにシュンって大人しくなってしまうので、良いところでもあり悪いところでもありますね。

 

 

――筑波ブルー(「FUTURE BLUE」※大学のチームカラー)ですしね。ではキャプテンから見て、今シーズンのキーマンを挙げてください。

 

中田 うわー、いっぱいいるな。誰だろう…。

 

古橋 じゃあ俺が先に答えるね。キーマンというか一番頑張ってほしい選手は、楊博(#89)です。今日はケガで出てないですけど、今年は留学生がジャンピ(#35ムトンボ・ジャンピエール)一人なので、タイムシェアしないと絶対にキツくなる。ジャンピのファウルがこむとサイズが一気に下がってしまうので、博には体作りやバスケットIQなど頑張って高めてもらいたいです。

 

中田 待って、まだ決められない。

 

古橋 じゃあその間にもう一人挙げてるわ(笑)。もう一人挙げるとすると、1年生の西部秀馬です。日体って1年生はあまり試合に出られないことが多いのですが、今年は練習試合などを見ても西部君が結構使われているので、これからの成長に期待したいですね。大学はフィジカルが強いのでその辺りにちょっと苦戦している感じですが、食事やトレーニングは僕ら先輩たちでも指導しつつやっていきたいです。

 

 

中田 正義は4番やっているくらいのフィジカルだからめちゃくちゃ良い見本だね(笑)。
よし、決めました。筑波でのキーマンは三谷桂司朗(#34)にします。去年、インカレの日大戦とかを含めてすごく成長してくれたし、半澤さんや二上さんが抜ける分、三谷にはいろいろ頑張ってもらいたいなと。半澤さんと二上さんってオフェンスに目が行きがちですけど、ディフェンスとかリバウンドでの貢献もすごく大きかったんですよ。2人がしっかりリバウンドを取り切ってくれるからブレイクに走れた部分は大きくて。だから三谷もあの2人のように、コートにいてくれるとチームが安定するって選手になってほしいです。
あともう一人挙げるとすると、岩下准平(#13)ですね。僕の中高大の後輩ですが(西福岡中→福岡大附大濠高)。彼は練習中から物おじしないプレーを見せていますし、良い意味で筑波っぽくないと思います。イメージ的に、筑波って堅いバスケットって印象があるかなと思うのですが、岩下はそういう筑波のバスケットを壊す存在になれるかなと。起爆剤になることを期待したいですね。

 

 

――では最後に、今シーズンに向けて意気込みをお願いします。

 

中田 先ほども言ったように筑波って堅いイメージがあると思うのですが、今シーズンは新しい筑波のイメージを持ってもらいたいなって。どんどんアグレッシブに仕掛けて、見ていて楽しいバスケットを展開したいですね。僕個人としてもラストイヤーなので、しっかり4年生としての責任を果たせるようにしたいです。僕たちが1年生の頃に、牧隼利さん(琉球)たちの代が引っ張ってくれて優勝したのがここ数年で最後の優勝なので、もう一回僕たちが後輩たちに優勝の景色を見せられるように、という気合いはすごく入っています。まずはトーナメントから優勝したいです。

 

古橋 今年は井手拓実さんという大きな得点源がいなくなりましたし、サイズも小さいチームなので、去年以上に走ってディフェンスして、というふうに運動量を去年の倍くらい増やさないと戦えないと思っています。運動量は意識して強化していきたいですね。今はケガ人などでメンバーがそろっていなくて、トーナメントはそろってすぐのぶっつけ本番みたいな形になると思うので、もちろん優勝を狙いますけれど、みんなで試合経験を積んでリーグ戦、インカレにつながる収穫を得たいです。僕個人としてはキャプテンを務めますが、日体はここ数年、絶対的なキャプテンが一人で引っ張るという感じではないですし、みんなで引っ張っていければなと。その中で僕はしゃべるのが好きなので、学年関係なくみんなとたくさんコミュニケーションを取って、頑張っていきたいと思います。

 

 

 

取材・文・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール)



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