月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2022.04.29

岡島和真(アースフレンズ東京Z)、18歳の決意 - 「世界で2番目の最強リーグB1でスターターになりたい」

 この2月、アースフレンズ東京Zにあらたに18歳のポイントガードとして加わった岡島和真は、オーストラリアのレイクランド高校に留学し、同国のプロリーグNBLの下部組織にあたるNBL1でプレーした経験を持っている。3年間の留学を終えた昨夏に帰国してからは三遠ネオフェニックスU18に所属し、11月のBリーグU18チャンピオンシップ2021でチームのベスト4入りに大きく貢献。その後はさらなる成長を目指してトップチームにも練習生として加わっていた。


岡島が飛び込んだ東京Zは4月28日現在、B2で全14チーム中下から3番目の10勝42敗(勝率.192)という非常に厳しい状況にあるチームだ。それでもユースからB1トップチームの練習生、そしてB2のプロへという経過は、18歳の若者にとってキャリアに大きな影響を及ぼすステップアップだ。 4月20日、大田区総合体育館で青森ワッツを相手に7試合ぶりの勝利を手にした後、飛躍と貢献に意欲を燃やす岡島和真に話を聞いた。

 


171cm、69kgのプレーメイカー、岡島和真は東京Z加入後コンスタントに出場機会を得、成長をみせている(2月19日撮影 写真/©B.LEAGUE)


流れを変える強い気持ちで臨む


――春まで三遠ネオフェニックスのU18チームでした。東京Zにきて、どんなことがプラスになっていますか?


チームメイトに久岡幸太郎選手、栗原 翼選手という違うタイプのポイントガードがいて、それぞれに良いところがあります。ゲームコントロールする久岡選手、ペイントアタックする栗原選手を間近に見られて、マッチアップしてそこから自分に取り入れようかと考えられるのがすごくいいです。


――三遠のユース時代にもトップチームとやっていましたよね。そこでは経験したり学んだりできないことなのでしょうか?


やっぱり練習生という立場ではコートに立つ機会が少なかったのですが、ここではコンスタントに選手達と一緒にできる環境にあり、すごくいいと思っています。


――どうして移籍を決意したのですか?


ここに来たきっかけは、全国のベスト4に入ったBリーグユースの大会でした。当時、B1のチームである三遠のトップチームで練習していて、自分として少しレベルが高いと感じていたところにオファーをいただきました。今、Bユースのレベルを上げていかなければいけないという流れがある中で、Bユースからプロになるということを表現したい気持ちもありました。大学に進んでプロになるというのはもちろん良いのですが、(プロになれる)チャンスがあるならすぐにつかみに行きたいと思ったのが、ここに来た理由です。


――今日は2分37秒の出場でした。ブラニスラフ・ヴィチェンティッチHCは、岡島選手のプレーに満足そうなお話をしていましたよ。


自分ではまだまだ満足できていなくて…。やっぱりコーチの信頼が素晴らしい先輩たちに比べたら得られていません。2分30秒、3分という出場時間は毎試合かなりコンスタントにもらえているのですが、その中で自分がする仕事を明確にしていかないと、今日のようにうまくいっていない場面で出されたときに、自分が流れを変えられるぐらいの気持ちでいかないと…。それをやろうとしたけれどできなかったので、自分で何が足りないのかを考えていきたいですね。

 


取材当日の青森ワッツより。左は栗原 翼(写真/©B.LEAGUE)

 

 この日岡島が起用されたのは、19-31と12点差を追う第2Q残り3分9秒から残り32秒までの2分37秒間。その間に岡島は栗原のレイアップへのアシスト、速攻でファウルをもらってのフリースローによる1得点にディフェンスリバウンド1本を記録し、東京Zはチームとしてこの時間帯に7-6と互角に戦った。最終的にこの試合は第4Q終盤の逆転劇で69-68のスコアで東京Zが勝利したが、前半の終盤の流れも重要な意味を持っていたことは明らかだ。


東京Zの強さを全国に知らしめたい


――今、岡島選手に足りないと感じているのは何ですか? 課題はどんなところでしょう?


課題はやっぱりゲームをコントロールすることです。2分30秒、3分という時間をもらえていることにも理由があると思うので、自分から点を獲りにいったり、調子のよい選手にシュートを打たせるようにゲームメイクしたりしていかなければいけないと思います。


――今後はどんな目標を持っていますか?


最大の目標は新B1の舞台でスターターを張れるポイントガードになりたいです。でも、それより身近なものとして、アースフレンズ東京Zは今タフな状況だと思うので、全国に向けて「このチームは強いんだぞ!」というのを証明していけるポイントガードになりたいです。


――オーストラリアのNBLやアメリカのNBAは考えてはいないのですか?


そうですね、留学中はNBL1の練習生としてやらせてもらっていたので、いつかそこでやりたい気持ちはあります。NBL1は新しくできたリーグで、これからレベルがどんどん上がっていくと思うので、そのリーグで自分がどのくらいできるのかを試したいとは思っています。でも、今の目標としては、これから日本が世界で2番目のリーグを目指すということですので、そのリーグでコートに立っていたいと思います。


――海外経験があって、言葉の壁がクリアされているのでチャンスがあるのではないかと思いますよ!


そうですね、でも自分の意志を表現するにはまだまだ語彙力を増やしたり、感情をどれだけ英語で伝えられるか、もっと勉強しないといけないと思います。


――留学やユースチームでの機会などは当たり前のものではないと思います。ご家族の支援も頼もしいのではないですか?


自分の力があまり振るわなかった中学生の頃、「将来プロバスケットボールの選手になりたい」と両親に相談したら海外を進めてくれました。留学経験があった姉も、バスケットボールをしていた兄もアドバイスをくれるし、家族からすごく大切にされているなと感じています。デビューするとなれば東京まで見に来てくれて、オーストラリアにも何回も来て試合を見てくれました。これからどうやって親孝行や恩返しできるかを考えてやっていきたいですし、頑張っているところを見せて感謝の気持ちを返していきたいです。

 


ブラニスラフ・ヴィチェンティッチHCは岡島のポテンシャルを高く評価している(写真/©B.LEAGUE)


3月に入ってから、岡島と同じく三遠から東京Zに移籍してきたブラニスラフ・ヴィチェンティッチHCは、岡島の能力を三遠時代から知っている。「彼は優れたプレーヤーです。クイックネスがあり、情熱があり、3Pショットもうまい。相手チームのリズムを変えられます(I know he’s a good player. I know his qualities, you know, his quickness, his passion, his 3P shots, his change of the rhythm of the team)」.。課題は経験値であり、それは今後の積み重ねだという。


しかしこの日岡島がプレーした2分半については、「見方によってはたったの2分半かもしれませんが、その2分半に試合を崩さずよくやった! と言えます(Well, he just played two and a half minutes. But you can also say “he played two and a half minutes without breakoffs, wow!)」と話し、仕事ぶりを高く評価していた。「彼は若く才能に満ちた頑張り屋です。これからも毎日よくなっていきますよ。ゆっくり見ていきましょう。まだ18歳なのですから(I think he’s a young, talented hard worker. And I expect him to be better every day. Give him a time. He’s just eighteen years old)」


岡島がBリーグのビジョンを自身のキャリアに重ね合わせていることは、バスケットボールの社会における成長が、次世代の発展にどんな責任を持っているかを感じさせる。「世界2位のリーグで輝きたい」——キラキラした若者たちの思いを、各クラブもリーグも、プレーヤーや指導者も、メディアやファンも、いま一度かみしめておくべきなのかもしれない。


岡島が語ったB1でスターターになることと東京Zを強くするという目標は、現段階では異なる目標に思えるかもしれない。しかしそれは、東京ZがB1で戦うことを想定すれば一つの目標になる。ヴィチェンティッチHCがどのようなかじ取りで東京Zを強くしていけるかということだけでなく、今後の岡島の成長にも東京Zの飛躍にも期待したくなるインタビューだった。

 


インタビューに答える岡島(写真/©B.LEAGUE)

 


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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