ガードで26年ぶりNBA最優秀ディフェンシブプレーヤー賞のマーカス・スマート(セルティックス)、ゲイリー・ペイトンの祝福に感激
NBA2021-22シーズンの最優秀ディフェンシブプレーヤー賞を、ボストン・セルティックスのマーカス・スマートがガードとして26年ぶりに受賞した。1996年に、当時シアトル・スーパーソニックスに所属していたゲイリー・ペイトンが受賞して以来、いわゆるリムプロテクタータイプのビッグマンが受賞するのが常となっていた中、スマートは身長190cmのペリメーター・ディフェンダー。今シーズンはスティール部門でリーグ7位の1.7本(総数119本は6位タイ)を記録していた。トリッキーでプレーメイク力に秀でたポイントガードやスピードもサイズもあるウイングのスコアラーの前に立ちはだかり、執拗にまとわりついては頭脳的に窮地に追いやるディフェンス力は、特に今シーズンの後半に快進撃をみせたセルティックスに欠かせない戦力として高い評価を獲得。投票では2位のミケル・ブリッジズ(フェニックス・サンズ)の202ポイントに対し257ポイント、1位票だけで見ても22ポイントに対して37ポイントと大きく差をつけていた。セルティックスのプレーヤーとしては、2008年のケビン・ガーネットに続く史上2人目の受賞とのことだ。
(写真をクリックするとセルティックス公式YouTubeでスマートとペイトンの映像が見られます)
そのスマートを、ゲイリー・ペイトンその人がセルティックスの練習施設に訪れ、直接トロフィーを渡すサプライズがあった。NBAとセルティックス、そしてペイトン自身の粋な計らいが生みだした祝福のひとときに、殿堂入りレジェンドのペイトンは「君はD(ディフェンス)を本来あるべき形でプレーしている。尖って、魂がこもったプレーぶりだよね」(You play that D in the way you're supposed to play, with a chip on your shoulder and some heart.)」という称賛の言葉で花を添えた。
ディフェンスのテクニックや相手に挑む姿勢を学ぶ手本として憧れの存在だったペイトンからの言葉を受けたスマートは感激の様子で、まずは周囲を囲んだチーム関係者に「コーチングスタッフとチームメイトのみんな、ありがとう。簡単なことではなかったよ。ジェイソン(テイタム)やジェイレン(ブラウン)みたいなヤツらばかりのリーグでプレーしているんだからね(First of all, definitely thank you guys, coaching staff, teammates. You know it's not easy playing in this league full of guys like Jason and Jaylen)」と感謝を言葉にした。「8年間頑張ってきたけど、みんなのおかげさ(This is eight years just to try to make…, do what I do. You guys allowed me to do that…)」
そう話した後は傍らで見守るペイトンに向け、「映像を見て、僕にも同じことができるかどうかと思いながら、言葉に耳を傾け、あなたのプレーを研究しました(Man, looking at your tape, wondering if I could do it, listening to the words and scouting everything you do)」と敬意のこもった謝辞を伝えた。最後に「最高にうれしいです。みんなありがとう、大好きだよ!(This means the world. I appreciate you, love you man!)」と再びチーム関係者への感謝を述べると、そこからはチームメイトたちがスマートのそばに集まって清涼飲料水を浴びせかけての大騒ぎ。スマートはやはりよほどうれしかったからか、手荒い祝福の映像を自身のSNSアカウントでシェアしていた。
俊敏なフットワーク、活発なハンドワーク、やんちゃなトラッシュトーク、そしてなにより、マイケル・ジョーダンをはじめとしたNBA史に名を残すスコアラーに対しても恐れることなく1対1で勝負を挑む強い心。そうした特徴を最大限に生かしてNBAで17シーズン活躍し、歴代最高のディフェンダーの一人として殿堂入りも成し遂げたペイトンのプレースタイルを、スマートの中に見出しているファンも多いのではないだろうか。レジェンドから「おめでとう、君はこの賞にふさわしい。これでオレたち二人は仲間だな(Congratulations man, you deserve it, man. Now it’s two of us)」と激励されたスマート。現在進行中のプレーオフでもいっそう強力なディフェンダーとして活躍を期待できそうだ。
文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)