皇后杯の敗戦から再び頂点へーーチームを支えた合言葉は”泥臭いトヨタ”
昨年12月に開催された皇后杯準々決勝で富士通に敗れたトヨタ自動車は、なんとしてでもWリーグファイナルでその借りを返さなければならなかった。昨シーズンのWリーグ覇者であるトヨタ自動車は、皇后杯でも優勝候補筆頭の存在だった。しかし、富士通との準々決勝で、後半に逆転されると、その後相手ディフェンスを攻めあぐみ55-62と敗戦。トヨタ自動車らしい覇気がなく、チームとしての一体感に欠けているような印象を見せていた。
そんな姿が一転したのが、年が明けた1月4、5日に行われたENEOSとのWリーグでの対戦だった。その連戦では皇后杯で9連覇を果たしたENEOSを圧倒して2連勝を挙げた。
「皇后杯で負けた後、選手だけで集まってミーティングをしたんです」と三好南穂はそのきっかけを明かした。「リーグの前半戦では、勝っていてもすっきりとしない状況でした。チームのよりも、自分が何点取れるかといったような…。それが皇后杯でも出てしまって、チームとしてプレーできなかったんです。しかし、全員で、本音で思っていることや不満を話し合えたことで、練習でも雰囲気が変わってきました。優勝という目標にチームが一つに向かっていく。自分たちでも分かるくらい、雰囲気が変わって、ENEOS戦ではそれが発揮できました。勝敗は別としても、試合の前から、いい試合ができるという自信がありましたし、試合中もコートの中だけではなく、ベンチからも声が出ているのを感じ、去年みたいなトヨタが戻ってきたなと実感しました」とチームの変貌を感じていた。
馬瓜エブリンは皇后杯敗戦後のミーティングをきっかけに「泥臭いトヨタ」というキャッチフレーズを掲げて、これまで戦ってきたと語る。 皇后杯での敗戦をきっかけに、選手それぞれが意識を改め、チーム一丸となったトヨタ自動車にとって、富士通とのファイナルは、それを証明するためにも、負けるわけにはいかない戦いだったのだ。
このプレーオフでルーカス・モンデーロHCも「チーム全員の勝利」ということを強調し続けた。そして、それは選手たちも十分に自覚している。馬瓜エブリンは「お互いの眼を見て、声を掛け合う」と選手全員が意識し続けたことでWリーグ連覇を成し遂げた。
今シーズン限りの引退を表明している三好は「安心して後を託せる」と口にし、「トヨタには選手が成長していくカルチャーがある」とファイナルの後に誇らしげに語った。ファイナルで大活躍を見せたルーキーのシラ ソハナファトージャも「ケンカするくらいの練習をしてきた」と、練習から真剣勝負のぶつかり合いがあったことで自身を含めた若手の成長が促されれているという。
ENEOSサンフラワーズの一強と言われる時代が長く続いたが、トヨタ自動車、富士通といったチームが再び台頭し、競争し合うことで、より日本の女子バスケットボールのレベルを上げていくことになるに違いない。
(月刊バスケットボール)