月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2022.04.14

オリンピアンたちが激突。Wリーグファイナルは熱戦必至

昨年10月から始まったWリーグもいよいよクライマックス。4月16日~18日に国立代々木競技場第1体育館で頂上決戦が行われる。16日・第1戦、17日・第2戦は18:00~、1勝1敗になり18日に第3戦が行われた場合は19:00にティップオフ。

 Wリーグ プレーオフ ファイナルに勝ち進んだのは富士通レッドウェーブとトヨタ自動車アンテロープス。先週末に行われたセミファイナルではそれぞれENEOSサンフラワーズ、シャンソン化粧品シャンソンVマジックを2連勝で退けた。

 富士通とトヨタ自動車は今シーズン初顔合わせとなる。レギュラーシーズンに予定されていた対戦が、新型コロナウイルス感染症の影響により中止となってしまったのだ。しかし昨年12月に行われた皇后杯では準々決勝で対戦しており、その試合では富士通が62-55で勝利している。また、両チームは昨シーズンのプレーオフではセミファイナルで対戦し、トヨタ自動車が2連勝でファイナル進出。そしてENEOSを破って初優勝を遂げた。昨シーズのリベンジを果たしたい富士通と、皇后杯の借りを返したいトヨタ自動車の対戦というわけだ。

 両チーム共に東京2020で銀メダルを獲得した日本代表のメンバーを多く抱えている。富士通には町田瑠唯、宮澤夕貴、オコエ桃仁花。そして3x3代表の篠崎澪もいる。トヨタ自動車には馬瓜エブリン、長岡萌映子、三好南穂の銀メダリストに加え、3x3代表の馬瓜ステファニーと山本麻衣。また東京2020後に開催されたFIBAアジアカップには馬瓜ステファニー、山本麻衣が5人制で出場し、加えて永田萌絵、宮下希保も名を連ねている。富士通からはオコエ桃仁花が出場したFIBAアジアカップは、若手中心(26歳以下)の代表で臨みながら、見事に優勝。アジア5連覇を果たしている。

 

 

 リーグトップクラスの選手たち(ということはワールドクラスの選手たちということだ)を多く擁するチーム同士の戦いは、それだけでも見ごたえのあるファイナルであるに違いない。

 例えば町田と山本の司令塔対決。二人ともゲームコントロールに長け、サイズはないが、相手のスキをついてインサイドへ果敢にドライブを仕掛けていく。町田はオリンピックでアシスト王に輝き、その活躍が世界で認められたことで、このシーズンが終わるとWNBA(ワシントン・ミスティック)に挑戦することになっている。対する山本はオリンピックの3x3ではアメリカから勝利をあげており、そのサイズを感じさせないプレーでゴールを重ねていく。町田の後を継ぐ日本代表の司令塔候補として名乗りを挙げた勢いのある選手だ。アシストでは町田、得点力では山本といったところだが、このマッチアップは試合の流れを大きく左右するだけに注目したいポイントの一つだ。また、3Pシュートを得意とする宮澤、オコエとアグレッシブでインサイドが強い馬瓜姉妹のマッチアップや、1オン1能力の高いスコアラーの篠崎と3ポイントシューターであり、今シーズン限りの引退を表明している三好のマッチアップなど、いたるところでオリンピアン同士、日本代表同士の戦いが繰り広げられる。

 チームの特徴を見れば、富士通はチームディフェンスと3Pシュートが売り、トヨタ自動車はアグレッシブさとリバウンド力で相手を圧倒する。特にインサイドはトヨタ自動車に分があり、富士通のインサイドを担うオコエは「リバウンドが勝敗につながる」と気持ちを引き締めている。BTテーブスヘッドコーチは、今シーズン、ENEOSから移籍で加わった宮澤、中村優花という優勝経験豊富な二人が、練習中からリバウンドやルーズボールへの執着心を見せ「周りの選手の意識も変わった」と語っており、チーム全員でリバウンドを取りにいく意識を徹底し、トヨタ自動車の高さと強さに対抗しようとしている。

 一方のトヨタ自動車は富士通の3Pシュートをいかに抑えるか。「シュート力に警戒している」と山本。馬瓜ステファニーは「自分たちがどれだけディフェンスできるか」と話し、ディフェンスからオフェンスにつなげていくことがトヨタ自動車のチームカラーであると強調する。

 今シーズンの成績を比べると、富士通は1試合平均失点が58.7得点でリーグトップのディフェンス力を誇り、トヨタ自動車61.1点で2位に付ける。双方ディフェンスに力を注いでいるチームだということが分かる。オフェンスでは、トヨタ自動車が1試合平均87.1得点の1位で、富士通は6位の73.1点と劣るが、3Pシュートではリーグ1位の1試合平均9.7本の成功で、トヨタ自動車の7.8本を上回る。リバウンドはトヨタ自動車が41.9本(2位)、富士通が40.3本(5位)で、トヨタ自動車が優位だが、大きな差にはなっていない。

 こうした数字からも、見ごたえのあるファイナルシリーズになることは間違いなさそうだ。トヨタ自動車が勝てば2年連続2回目。富士通が勝てば14シーズンぶり2回目の優勝となる。ちにみにENEOSのいないファイナルは2005-06シーズン以来のこと。その後2007-08シーズンに富士通が優勝。その翌シーズンから続いていたENEOSの11連覇を止めたのが昨シーズンのトヨタ自動車だった。

 

(月刊バスケットボール)



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