月刊バスケットボール5月号

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2022.04.03

男子NCAAトーナメントのファイナルフォー、カンザス大とノースキャロライナ大が決勝に進出

 アメリカの男子カレッジバスケットボール界の最強チームを決めるNCAAトーナメントの準決勝2試合が、日本時間4月3日(北米時間2日)にルイジアナ州ニューオリンズのシーザース・スーパードームで行われた。初戦ではバスケットボールを考案したジェームズ・ネイスミスがかつてヘッドコーチを務めたチームとして知られるカンザス大と過去6年間で2度全米制覇に成功しているビラノバ大が対戦し、81-65でカンザス大が勝利。伝統的に強烈なライバル関係にあるデューク大とノースキャロライナ大が激突した2試合目は、大激戦の末にノースキャロライナ大が81-77で勝利した。


この結果決勝戦は “バスケットボールの父”ネイスミスゆかりのカンザス大と、“バスケットボールの神様”と形容されるマイケル・ジョーダンの母校ノースキャロライナ大という名門同士の対戦となった。一方、準決勝2試合目でノースキャロライナ大に敗れたデューク大では、42年間チームを率いたマイク・シャシェフスキーHCがコーチとしてのキャリアに終止符を打つこととなった。

 

NCAAトーナメント4月3日時点勝ち上がり状況(画像をクリックするとNCAA公式サイトのトーナメント詳細ページにつながります)

 


カンザス大vs.ノースキャロライナ大の決勝戦展望


両チームの対戦は、一見すればカンザス大が“格上”ということができそうだ。カンザス大は今大会では中西部地区の第1シードで、AP通信社の全米トップ25ランキングで3位という高評価を得ている。それに対しノースキャロライナ大は、今大会にチーム史上最も評価の低い第8シード(過去に3回ある)で出場してきたチームであり、全米トップ25ではランク外だ。


ただし、この組み合わせはこれぞ“マーチマッドネス”というべき決勝戦とも言え、ここまでくるとどちらが勝ってもまったく不思議ではない。第8シードから決勝戦に勝ち上がった例は過去に3度しかないが、王座に就いた例が一度ある。1985年の大会でこの位置から決勝に進出したローリー・マシミーノHC率いるビラノバ大は、パトリック・ユーイングを擁し圧倒的に有利と見られていたジョージタウン大を、当時45秒だったショットクロックをフルに使ってじりじりと攻めるディレー・オフェンスと驚異的なシューティングを武器に、66-64のスコアで打倒している。

 

 37年ぶりに、この歴史を再現しようとしているノースキャロライナ大は、ファイナルフォー進出を決める東地区決勝で、大会史上初めて第15シードからエリートエイト入りを実現したセント・ピータース大を69-49で破った。一発勝負でジャイアント・キラーとして名を馳せた今大会で最も危険なチームをたたき潰してのファイナルフォー入りに加え、自らも低評価を跳ね返しての快進撃。デューク大との準決勝では、身長193cmのガード、ケイレブ・ラブ(Caleb Love)が28得点と爆発的な活躍を見せ、フロントラインの要となる身長208cmのビッグマン、アルマンド・ベイコット(Armando Bacot)が11得点に21リバウンドとモンスターゲームを披露して、伝統的ライバルとの一戦を制した。


順当に勝ち上がってきたカンザス大には、今シーズン平均18.9得点、5.2リバウンドのアベレージを残してNBAドラフトでもロッタリーピックになることが予想されている身長196cmのシューティングガード、オチャイ・アグバージ(Ochai Agbaji)というスターがいる。準決勝ではそのアグバージが21得点を記録した上、 “Dマック”のニックネームで知られる身長208cmのフォワード、デイビッド・マコーマック(David McCormack)がそれをしのぐ25得点に9リバウンド、さらにはDマックと同じく身長208cmのフォワード、ジェイレン・ウィルソンが11得点、12リバウンドのダブルダブルと、フロントラインが際立った強さを見せつけた。彼らが持ち味を発揮できれば、やはりカンザス有利と言えるかもしれないが、果たして勢いに乗るノースキャロライナ大がそれを許すか。アグバージにはラブ、Dマックとウィルソンにはベイコットを軸としたフロントラインの奮闘という答えが見えている。

 

 両チームのヘッドコーチも、ともにバスケットボールの世界では広く知られた人物だ。カンザス大のビル・セルフHCは、2008年に同大で全米制覇を成し遂げ、近年はアンダーカテゴリーのアメリカ代表チームをヘッドコーチとして率いた経歴も持っている。ノースキャロライナ大を率いるのは、かつてNBAでシューターとして活躍したヒューバート・デイビスHC。ベンチボスとしては初シーズンのデービスHCだが、前任のロイ・ウィリアムズの下で9年間アシスタントを務めており、今大会での決勝進出でその手腕が示された形だ。経歴ではセルフHCがしのいでいるのは間違いないが、デービスHCとノースキャロライナ大にはそのような見方さえも発奮材料だろう。


決勝は1日空けて、日本時間4月5日(北米時間4日)に、準決勝と同じシーザース・スーパードームで行われる。カンザス大が勝てば2008年以来14年ぶり4度目、ノースキャロライナ大が勝てば2017年以来5年ぶり7度目の優勝となる。

 

カンザス大vs.ビラノバ大ハイライト
デューク大vs.ノースキャロライナ大ハイライト


 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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