月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.03.22

ジェイコブス晶(横浜ビー・コルセアーズ)が挑戦した夢舞台 - NBAグローバルアカデミーとはどんなところなのか

 横浜ビー・コルセアーズのジェイコブス晶が3月18日から24日までトライアウトに参加しているNBAグローバルアカデミーは、オーストラリアのキャンベラにあるNBA のエリートトレーニングセンターだ。NBA という名前は日本でも津々浦々に広まっているが、そのグローバルアカデミーについてはあまり話題になることがない。

 

 しかし公式サイト、公式YouTubeを見ると、息を呑むほどハイレベルな成長の機会を提供する場所であることが感じられる。ジェイコブス自身も「NBA Global Academyのトライアウトに参加できることに興奮しています。 同年代の非常に才能のある選手と練習し、競争することは素晴らしい経験になると信じています」というコメントを発信しており、今頃はワクワク感に包まれてチャレンジしているに違いない。

 

NBAグローバルアカデミーのトライアウトに挑戦したジェイコブス晶(写真/©B.LEAGUE)

 


オーストラリア国立スポーツ研究所(AIS)内にあるNBAグローバルアカデミーは、オーストラリア国内のバスケットボール統括団体であるバスケットボール・オーストラリア(BA)とのパートナーシップの下で運営されている。BAセンター・オブ・エクセレンス(BA Centre of Excellence)と呼ばれる施設を使い、アメリカ以外の世界各地から将来有望なアスリートを集め、育てる機関だ。公式サイトでは年間受け入れ人数がわずか16人までとなっており、トライアウトを通過できるのは、まさしく世界のエリートとなりうるポテンシャルを持つ若者だけだということがわかる。


NBA グローバルアカデミーに入ったアスリートは、NBA公認コーチングスタッフとBAの育成スタッフによるトレーニングを受けることになる。アドバイザリー・コミッティーにはNBA、NCAA、USAバスケットボールでコーチとして名声を手にしたPJカーリシモ、ゴールデンステイト・ウォリアーズほかで活躍したレジェンドのアドナル・フォイル、現在ブルックリン・ネッツのヘッドコーチを務めるスティーブ・ナッシュらそうそうたる名前が並んでいる。身につけるのはバスケットボールの知識だけではなく、若者たちに欠かせない内面の健全な成長や学業面の支援プログラムも行き届いている。滞在中は「AIS Residence of Champions(王者の住処)」と名付けられた居住スペースで暮らし、近隣の高校に通うのだ。


世界のさまざまな場所からやってきた、文化的背景や価値観の異なる若者たちが、世界最高峰の舞台でバスケットボールのエリートとして活躍することを夢見て日々のトレーニングに取り組み、人としての成長を遂げる。NBA公認コーチたちがNBAコーチ協会に認められた手法を日々提供し、その後押しをする。


現在NBAのオクラホマシティ・サンダーでルーキーとして活躍しているジョッシュ・ギディーは、NBA グローバルアカデミーからNBA 入りした初めてのケースだ。また、韓国出身で現在NCAAディビジョン1のデイビッドソン大でプレーしている身長201cmのシューター、イ ヒョンジュンもNBA グローバルアカデミーの卒業生で、将来NBA入りを有望視されている。ジェイコブスはビー・コルセアーズユースから田中 力に次ぐ2人目の挑戦者とのことだが、仮に合格した場合、その先に見えている景色は世界の最高峰ということになる。


島田慎二Bリーグチェアマンは、ジェイコブスの挑戦を受け、「Bリーグは、今後もユースチームの活動環境の向上やBリーグにおける特別指定制度により、U15・U18 年代選手の後押しをし、『世界に通用する選手やチームの輩出』を目指します」とのコメントを発信した。こうした機会を生かせるような育成システム、タレント発掘システムを促進・確立するのも、間違いなくBリーグの役割の一つであり、ビー・コルセアーズのユースからトップチームでプレー、そしてNBAグローバルアカデミーに挑戦したジェイコブスは一つの成功例だろう。トライアウトの結果いかんによらず、こうした認識を確認する機会を提供し、可能性として、また話題として見せてくれた時点で、すでにジェイコブスの挑戦には価値がある。さらなる吉報への期待を込めて動向を見守ろう。

 

NBAグローバルアカデミー公式サイト

NBAグローバルアカデミー公式YouTubeのプログラム紹介映像

 

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



PICK UP