月刊バスケットボール5月号

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2022.03.19

FIBA U17W杯2022 - 2度目の出場権獲得を果たしたい男子日本代表

 今年の7月2日(土)から10日(日)にマラガ(スペイン)で開催される、FIBA U17ワールドカップ2022のグループラウンドの組み合わせが発表になっている。この大会は2010年から2年ごとに開催されており、直近の2020年大会はパンデミックの影響により中止されていたため、4年ぶり6回目の開催となる。アジア/オセアニア地区の代表チームは6月12日(日)から19日(日)にかけてクウェートで開催されるFIBA U16 アジア選手権2022(2021年から延期)で決まるため、現時点ではU17男子日本代表も出場権を持っていない。各グループの組み合わせは以下のとおりだ。

 

©FIBA.basketball


グループA: TBC(アジア3)、フランス、セルビア、カナダ
グループB: スペイン、ドミニカ共和国、TBC(アジア2)、リトアニア
グループC: アメリカ、マリ、スロベニア、TBC(アジア4)
グループD: TBC(アジア1)、アルゼンチン、エジプト、ポーランド
※TBC=アジア/オセアニア地区代表の4チームは6月12日(日)から19日(日)にかけてクウェートで開催されるFIBA U16 アジア選手権2022(2021年から延期)で決定


今大会ではまず、出場権を得た16チームが4チームずつ4つのグループに分かれ、総当たり戦を行う。グループラウンドでは順位を決めるがどのチームも敗退ということにはならない。16チームすべてが決勝トーナメントに進み、多くの経験を持ち帰ることができる。

 

 過去の大会をひも解くと、これまでの5大会はすべてアメリカ代表が金メダルを獲得している。歴代のMVPには、現在ワシントン・ウィザーズで八村 塁とチームメイトのブラッドリー・ビール(2010年)、現クリーブランド・キャバリアーズのコリン・セクストン(2016年)などNBAで活躍するスターの名が並ぶ。4年前の2018年大会に出場したアメリカ代表にはエバン・モブリー(現クリーブランド・キャバリアーズ)、現在トロント・ラプターズで渡邊雄太とチームメイトのスコッティ・バーンズ、さらにはジェイレン・サグス(現デトロイト・ピストンズ)ら、今年のNBAオールスター・ウイークエンドで注目を集めたライジングスターが含まれていた。

 

 同大会ではフランス代表にテオ・マレドン(現オクラホマシティ・サンダー)の名があり、カナダ代表には現在ミシガン大学の一員として活躍中のケイレブ・ヒュースタンというプレーヤーがいた。つまり、この大会で活躍した後でプロやNCAAの強豪大学に進み成功を収めた例が多々あるということだ。

 

#11スコッティ・バーンズと#12エバン・モブリーは現在NBAで新人王争いの最有力候補に成長している(写真/©FIBA.basketball)

 


将来を左右する大きなチャンスをモノにしたいU17男子日本代表


U17男子日本代表のFIBA U17ワールドカップにおける過去の出場実績は、ドゥバイ(アラブ首長国連邦)で行われた2014年大会の1回のみ。その2014年大会でのU17日本代表は、グループラウンド、決勝トーナメント、順位決定戦を通じて7試合を戦い、1勝6敗の成績で16チーム中14位だった。

 

2014年大会に出場したU17男子日本代表 (写真/©FIBA.basketball)


福岡第一高校の井手口 孝氏がヘッドコーチを務め、八村 塁(当時明成高校2年、現ワシントン・ウィザーズ)、牧 隼利(当時福岡大学附属大濠高校2年、現琉球ゴールデンキングス)、前田 悟(当時県立山形南高校、現川崎ブレイブサンダース)らが名を連ねたこのときのU17日本代表は、タレントとしてのポテンシャルもスタッフの情熱も高いチームだった。しかしスカウティングの面である程度の準備ができた初戦の対オーストラリア代表戦(最終的に延長の末84-97で黒星)、91-49で勝利したアラブ首長国連邦との13-16位決定戦のほかは、世界の壁を思い知らされる結果だった。


ただし、八村が平均22.6得点のアベレージで得点王に輝く快挙を成し遂げたことは非常に大きな収穫も得ている。この活躍がその後のゴンザガ大学進学、NBAドラフト1巡目9位でのウィザーズ入りというキャリアの道を開いたのは言うまでもない。また八村の飛躍がバスケットボール界の発展を加速したことも明らかだろう。

 

2014年大会で得点王となった八村 塁(写真/©FIBA.basketball)

 

 

 昨年6月に行われたU16代表合宿(その時点では2021年内に開催予定だったFIBA U16 アジア選手権に向けた合宿)には、川島悠翔(PF / 200cm / 福岡大学附属大濠高校)、平良宗龍(琉球ゴールデンキングスU18)らが参加していた。開催延期後の現在は、あたらな顔ぶれは今後の発表を待つ状態だ。アジアを勝ち抜いてFIBA U17ワールドカップ2022の舞台に立てるかどうかは、日本のバスケットボール界の今後の展望の中でも重要事項であり、同時に八村の例が示すように、個々のプレーヤーのキャリア構築にも大きな影響を持ってくる。

 

 国内でのプロキャリアはもちろんのこと、海外留学や海外リーグでの成功までも現実的な目標として捉えられる該当世代の若者たちにとって、FIBA U16 アジア選手権2022とFIBA U17ワールドカップ2022は、望むような飛躍を成し遂げるための大事なステップに違いない。その世代のタレントとしてのポテンシャルとともに、周囲の大人たちが彼らの夢をどのような形で後押しできるかも含め、日本のバスケットボールの現状を映し出す注目すべき道のりとなりそうだ。

 


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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