月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2022.03.12

天皇杯連覇の川崎ブレイブサンダース、マット・ジャニングが勝利のXファクターに!

 

 今年で97回目を迎えた天皇杯。決勝で顔を合わせたのは連覇を狙う川崎ブレイブサンダースと、3年振りの王座奪還を狙う千葉ジェッツ。Bリーグ初年度の天皇杯と同じマッチアップとなったこの一戦を見守ろうと、さいたまスーパーアリーナには9196人ものファンが詰めかけた。会場は川崎と千葉、2色の異なる赤色で染まり、今か今かとティップオフの時間が待たれていた。

 

 そんな注目の一戦、前半で抜け出したのは川崎だった。序盤こそ0-8と千葉が走ったが、そこから藤井祐眞の3Pシュートやミスマッチを突いたパブロ・アギラールのインサイドなどで得点を積み重ね、守っては千葉のピック&ロールに対して絶妙なスペーシングとローテーションで対応。前半で52-33の大量リードを奪った。

 

前半を引っ張った川崎の藤井

 

 しかし後半、千葉が息を吹き返す。クォーター序盤こそ拮抗した展開が続いたが、クリストファー・スミスが連続3Pを沈めてリズムを作ると、前半は川崎に封じ込められていたチームとしての連係も徐々にスムーズになり、富樫のペイントアタックからギャビン・エドワーズにつなぎ、最後はジョン・ムーニーがボースハンドダンク。直後のディフェンスを守り抜き、今度はムーニーがトップから3Pをヒットし、9点差とした。この3Pは後に2Pと訂正されることとなるが、流れは明らかに千葉に傾いていた。

 

 そんな苦しい展開で力を発揮したのが、マット・ジャニングだった。セカンドユニットの一員として出場したジャニングは、劣勢の展開でコートインすると、ムーニーの連続得点で勢いに乗る千葉の流れを断ち切る3Pをヒット。その後もミスマッチを突いたポストアップや、積極的なドライブを仕掛けてファウルを獲得しフリースローでじわじわ点差を押し戻した。

 

苦しい場面での打開するきっかけとなったのがジャニングのプレーだった

 

「バスケットというのは点を取る競技なので、自分たちがどこを止めたかったかというと、あの場面ではそこ(ジャニングのところ)よりも大事なところがありました。彼のところはマッチアップや高さのミスマッチもあったので選手を交代しながらやっていました」と大野篤史HC。

 

 千葉としては、チームとして川崎のオフェンスをストップさせるためには、ジャニングの個人技である程度やられるのは致し方ないことだったのかもしれない。この試合に限っては、そんな場面で自らの仕事を全うしたジャニングを褒めるべきだろう。3Qの戦いについてジャニングは以下のように振り返る。

 

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「後半はビッグラインナップでスタートして、序盤はいい戦いができていたと思います。そこから千葉が連続得点で点差を縮めてきたところで佐藤HCから『マット、交代してくれ』と言われて試合に入りました。ただ、僕自身は特別なことはしていません。この試合のゲームプランでもあったアグレッシブなプレーは、僕が今季を通してやってきたこと。その中で僕がフリースローなどで得点するチャンスがありました。そこで点を取るのが自分の仕事ですし、できるだけ相手の流れを断ち切りたいと思っていました。向こうに少し点差を縮められてしまいましたが、最終的にはほぼトントンに戻すことができたし、4Qには再び13〜15点差くらいに戻せたので、3Qで自分がしっかりと仕事ができたのは良かったと思います」

 

 

 ジャニング自身、今季から川崎に加入したが、昨年10月と今年2月の二度、ケガのためチームから離脱。順風満帆というわけではない中でも、安定して2桁得点を記録するベテランらしい働きでチームに貢献してきた。この試合では、篠山と藤井が不在の時間帯には司令塔を務める場面もあり、ハンドラーとしての役割にも順応。篠山やニック・ファジーカスも3Qのジャニングの貢献に「マットを起点に3Qの10分間を6点ビハインド(20-26)のみで終えられたことがよかった」と発言していることからも、この試合でジャニングが窮地を救うXファクターとなったことがうかがい知れる。

 

 MVPの藤井やディフェンスで奮闘した篠山、安定感あるパフォーマンスを見せたファジーカスに、ゴール下のアンカーとして君臨したジョーダン・ヒースなど、それぞれが仕事を全うしたことが、川崎の連覇を引き寄せた。その中でも、影のMVPと呼べる活躍を見せたジャニングの活躍は評価されてしかるべきものだ。

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

写真/佐々木智明、石塚康隆



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