月刊バスケットボール6月号

今週の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.6-2

  Vol.6 NIKE AIR JORDAN 6 ナイキ エア ジョーダン 6   文=岸田 林   (つづき) ところで日本のNBAファンにとっても、この年のジョーダンと「AJ6」は、ひとつのターニングポイントとなった。1990年11月2日に開催された「NBA Japan Games」を機に、日本におけるNBAの認知度が一気に高まったのだ。『週刊少年ジャンプ』誌上で漫画「スラムダンク」がスタートしたのもこの頃で、この作品中、主人公の桜木花道が最初に履いたバッシュが「AJ6」であることはよく知られている。おそらく作者の井上雄彦氏は、ジョーダンのブレイクとAJ人気の過熱ぶりをリアルタイムで体感しながら執筆していたのだろう。花道は当時最新の「AJ6(ホワイト×インフラレッド)」をチエコスポーツの主人からわずか30円で強引に譲り受ける(#49『バッシュ』コミックス第6巻参照)。こうして日本の多くの少年少女たちは、「スラムダンク」を通じ、NBAとジョーダン、そしてAJという特別なバッシュの存在を知ることになる。   その後、91年2月、NBAオールスターで「AJ6」のブラック×インフラレッドがお披露目されると、専門誌のみならず、ストリートファッション誌までもが「ジョーダンの新しいバッシュ」を特集し始める。東京・原宿駅前のスポーツショップ「オッシュマンズ 原宿店(17年2月に閉店)」にバッシュを買い求める人々の行列ができたのは、「AJ6」が初めてだったという。ジョーダンとAJの人気は国境を越え、またバスケの枠をも超える存在になろうとしていたのだ。   こうしてジョーダン王朝の歴史は、ブラックの「AJ6」から始まった。ジャクソンはその後もプレイオフでのゲン担ぎを継続し、ブルズは90年代のNBAを支配し続ける。96年からはソックスまで黒に統一し、90年代2度目のスリーピートを達成。いつしか黒い足元は、強いブルズの象徴となっていった。いっぽうの「スラムダンク」では、花道が所属する湘北高校が神奈川県予選を勝ち抜きインターハイへ進出。ここでチエコスポーツの主人は、「赤と黒…湘北の色だ」と、当時すでにヴィンテージスニーカーとして数万円で取引されていた「AJ1」を花道にプレゼントする。「特別な試合に黒いバッシュで臨む」というブルズのスタイルを想起させるエピソードだ。   2017年、ブルズは2年ぶりのプレイオフ出場権を手にしようとしている。90年代と比べ、選手たちの足元はよりカラフルになっているが、”伝統”の黒い足元でそろえた、あの憎たらしいほど強いブルズの復活にも期待したいところだ。 (おわり)   写真=中川和泉 (月刊バスケットボール2017年6月号掲載)

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