月刊バスケットボール5月号

バスケットボール男子日本代表、世界3位オーストラリア代表に挑戦 - 2.27 FIBAワールドカップ2023アジア地区1次予選Window2

 2月27日に沖縄アリーナで行われるFIBAワールドカップ2023アジア地区1次予選Window2で、男子日本代表が対戦するオーストラリア代表は、FIBA世界ランキング3位、東京2020オリンピック銅メダリストという肩書きを並べるまでもなく強豪であることはわかっている。チャイニーズ・タイペイ代表との初戦には98-61でほとんど危なげなく勝利した。

 

2月25日の対チャイニーズ・タイペイ代表戦前のオーストラリア代表(写真/©FIBA.WC2023)

 

オーストラリア代表対チャイニーズ・タイペイ代表戦ハイライト(映像/©FIBA.WC2023)


島根スサノオマジックに所属している206cmのパワーフォワード、ニック・ケイがゲームハイに並ぶ14得点を記録し、香川ファイブアローズの208cmのセンター、アンガス・ブラントも11得点など5人が2桁得点。ブラントと香川でチームメイトのリース・ヴァーグ(208cm、パワーフォワード)も8得点など、登録12人全員が得点を記録しての快勝で、FIBA世界ランキング66位のチャイニーズ・タイペイ代表に対して格の違いを見せつけた。


オーストラリア代表の平均身長200cmは、日本代表の193cmよりも7cm大きい。チャイニーズ・タイペイ代表との試合では、リバウンドで49-24と圧倒し、ペイントでの得点でも44-21と差をつけた。フィジカリティーで優位に立てるこのチームは、3Pショットも24本中10本成功の41.7%という確率で30得点を奪っている。ケイが記録した7リバウンドと5アシスト(いずれもチームハイ・タイ)というスタッツ、また12人全員が得点だけでなくリバウンドも記録し、11人がアシストを記録していたという事実は、チャイニーズ・タイぺイがなすすべなく敗れ去ったことを印象づける。


日本代表はどのように戦うべきなのか? 戦術的な細部に関して語れることはないものの、基本的な考えとしては以下の点が挙げられるのではないかと思う。

 

1. スピードを生かしたトランジションで、序盤から日本代表ペースの展開を生み出す
2. トム・ホーバスHCが26日の試合後会見で話していたとおり、カット生かしたオフェンスと3Pシューティングを最大限生かす(そのために良いショットを狙う)
3. 相手のフィジカリティーという強みを最小化し、特にリバウンドを競うことでブレイクを減らしてハーフコート・ゲームに持ち込む
4. 劣勢に立たされたときこそ逆襲のタイミングを逃さずラン(連続得点)の時間帯を生み出す

 

相手のビッグマンの威力をいかに最小にとどめるかは、日本代表にとって勝利へのカギの一つだ(写真/©FIBA.WC2023)

 

 

 今回のオーストラリア代表は、まだ完成形とは言えないチームだ。ロブ・べバレッジHCは、「悪くなる時間帯があると予想していましたし、実際にうまくできず、ターンオーバーが多すぎたし、プレッシャーに崩されました(I did expect us to be a little bit ugly at times, didn’t handle that. We turned the ball over too much. We broke down under pressure)」とチャイニーズ・タイペイ代表との試合を振り返った。オーストラリア代表は第3Qに、3-20のランで追い上げられた時間帯があったのだ。ただ、第4Qには完全に流れを取り戻し、何事もなかったかのように試合終了のときを迎えている。


序盤に先行を許さずついていき、相手に流れを持っていかれても崩れるときがやってくるので、そこでリズムを取り戻し、渡さないことができたらよい試合になりそうだ。


日本代表は、ファウルにも注意する必要がある。べバレッジHCは、初戦で成功した点の一つにフリースローを23本得られたことにも言及していた。200cm台が7人、そのうち2人が210cmというスケールのフィジカリティーに対し、日本代表は200cm台4人で、最長身は竹内公輔(宇都宮ブレックス)の206cm。相手のフリースローを少なくするとともに、ファウルトラブルでビッグマンが機能不全に陥る事態を避ける必要があるだろう。


べバレッジHCは日本代表について、「日本についてわかっているのは、とても誇り高い人びとであること、非常に懸命に頑張るということです。ものすごくフィジカルに、インテンシティーも高めてぶつかってくると思います(One thing I know that Japanese are very very proud people. One thing I know they’re going to compete exceptionally hard. I think they’re going to come out incredibly physical, high intensity)」と話していた。「日本代表の試合を見て、どのようにボールを動かし、ゴールにアタックするか、どのようにシュートしてくるかを見ました(I’ve watched some games of Japan and how they moved the ball, how they attacked the rim, how they shoot it)」とも言い、研究もしているようだ。しかし、“ホーバス・ジャパン”の本質をつかめる唯一のヒントは、昨年の対中国代表戦しかない。あの2試合では、今回のチーム状態を把握するのに十分ではないことも思われる。


だからと言って、それでオーストラリア代表の強みが打ち消されるとも当然思えない。それでも、今村佳太(琉球ゴールデンキングス)や佐藤卓磨(千葉ジェッツ)ら3&Dタイプのプレーヤーたち、ルーク・エバンス(ファイティングイーグルス名古屋)、野本建吾(群馬クレインサンダーズ)や谷口大智(茨城ロボッツ)、マシュー・アキノ(信州ブレイブウォリアーズ)、そして竹内のフロントラインが40分間対抗し続け、富樫勇樹(千葉ジェッツ)、安藤誓哉(島根スサノオマジック)、寺嶋 良(広島)のスピードと勝負強さを持つプレーメイカー・トリオに躍動する機会を生み出し、自信を深めている西田優大(シーホース三河)、故郷での活躍に意欲を燃やすアイザイア・マーフィー(広島ドラゴンフライズ)が得点量産体制に入り…とファン目線での日本代表勝利の筋書きは膨らんでいく。


ホーバスHCが自らのプレースタイルにとっての「テスト」と言い表したオーストラリア代表との一戦は、27日の18時30分に、沖縄アリーナでティップオフを迎える。

 

チャイニーズ・タイペイ代表と素試合で第4Qにビッグショットを成功させた富樫勇樹。27日にもその活躍に期待がかかる(写真/©FIBA.WC2023)

 


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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