月刊バスケットボール6月号

今週の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.4-2

  Vol.4 Nike Air Zoom Huarache 2K4 All Star ナイキ エア ズームハラチ SK4 オールスター   文=岸田 林   (つづき) ナイキとの契約が正式に発表されたのは03年オフのこと。そして迎えた03-04シーズン、彼が最初に履いたのは、レイカーズカラーの「エア フライトハラチPE(プレイヤーズ エクスクルーシブ)」という意外なシューズだった。1991~92年、ミシガン大の1年生軍団、通称“ファブ・ファイブ”が着用し人気となったモデルだ。レトロスニーカー好きとしても知られるコービは、自身が子どものころに持っていて、大切にするあまり当時は月に1回しか履けなかった想い出のモデルをナイキにリクエストしていたのだ。   彼はシーズン序盤をこの「エア フライトハラチ」と、「エア ジョーダン12 レトロ」、「エア ズームフライト2K3」でプレイしている。 そして、初の『コービモデル』ともいうべきシューズがようやく登場したのは、03-04シーズン中盤のこと。それまでナイキのラインナップは、選手のプレイスタイルに合わせ「フライト」「フォース」「アップテンポ」の3種類に大別されていたが、ナイキのデザイナー、エリック・エイバーは、新世代のバスケと、コービのような多才な選手のプレイに対応できる、モダンかつクラシックなシューズが必要だと考えた。   その答えが「エア ズーム ハラチ2K4」だった。独特のヒールカウンターにインナーブーツ、大きくくりぬかれたアンクル部分など、そのフォルムはエア フライトハラチの“21世紀版”といっても差し支えないもので、04年2月15日、コービは地元ロサンゼルスで開催されたオールスターゲームにこの「エア ズームハラチ2K4」を履いて出場。おりしもプライベートでのスキャンダル報道が過熱し、直前にはコロラドの裁判所への出廷を強いられるなど決して万全とは言えないコンディションだったが、そんな中コービは20得点をマーク。だがこの試合でMVPを獲得したのは、やはり人気者のシャック(24得点、11リバウンド)だった。当時すでに二人の確執は決定的で、同年夏、レイカーズはコービの要求に押される形でシャックを放出したと言われるほどだった。   それから約2年が経過した06年、コービ自身の名を冠した初のシグニチャーシューズ「ズーム コービ1」が発売される。するとこの年、コービはそれまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような大活躍(平均35.4得点)を見せ、自身初の得点王に輝く。中でも圧巻だったのは、1月のラプターズ戦で記録した1試合81得点だ。これは1試合におけるNBA歴代2位の得点記録となっている。   以降コービは、16年に引退するまで「ズーム コービ」シリーズを着用し続ける(最終的には11まで)。現在ではジョーダン、レブロンに次ぐ人気シグニチャーシューズブランドの地位を確立しているが、その原点には、決して順風満帆とは言えなかったコービの苦闘の歴史が刻まれているのだ。 (おわり)   写真=中川和泉 (月刊バスケットボール2017年4月号掲載)

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