月刊バスケットボール5月号

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2022.02.16

“ワシントン・ミスティクスの町田瑠唯” - 期待とデビューまでのステップ

 WNBAのワシントン・ミスティクスが町田瑠唯と契約したことを受け、ミスティクス側からも公式リリースが届いた。


MYSTICS SIGN OLYMPIAN RUI MACHIDA
(ミスティクスがオリンピアンの町田瑠唯と契約)


シンプルだが電撃的なこの一行のタイトルで、この先どんなすごいことが起きるのかワクワクする思いが膨らんでいく。昨年の暮れには東京体育館で、ウインターカップのプロモーションに町田とワシントン・ウィザーズの八村 塁が起用されたことで、“ダブル・ルイ”という言葉が脚光を浴びたが、今度はそれがアメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.で、よりグローバルな注目の中で展開されるのだ。


ミスティクスが発信したリリースには、マイク・ティボー(Mike Thibault)HCの町田獲得に関するコメントが収められていた。いわく、「ルイとの契約は、我々にとって非常に楽しみな契約です。彼女は世界でも最もダイナミックなポイントガードの一人であり、我々のプレースタイルにピッタリです(Rui is a very exciting signing for us. She is one of the most dynamic point guards in the world and perfectly fits our style of play)」とある。

 

 ティボーHCはさらに、「彼女はオフェンスのテンポを押し上げ、トランジションでもハーフコートでもチームメイトに素晴らしい得点機を生み出します。ウチのガードの誰とでもコンビを組めて、一味違うラインナップを提供してくれます。チームメイトたちは彼女を気に入るでしょうし、ファンの方々も大好きになってくれるでしょう(She pushes the tempo offensively and creates great opportunities for her teammates both in transition and in the half court. We can pair her with any of our guards to give us different looks with our lineups. Her teammates will love playing with her and our fans will love watching her play)」と町田への期待を込めたコメントも記している。

 

(写真/©石塚康隆 月刊バスケットボール)


一方、町田自身は現在所属している富士通レッドウェーブの公式サイトで「このような素晴らしいチャンスをいただけたことをとてもうれしく思いますし、楽しみにしています」とコメントを発信。また自身のツイッターアカウントでチーム公式アカウントの投稿をリツイートし、「挑戦してきます!」と力強い言葉も残した。

 

 

 WNBAもすでに、北米時間2月14日付で町田のトランスアクションを公式サイトに公表済みだ。ただしその記述によれば、町田の契約は“トレーニングキャンプ契約(Training camp contract)”となっている。となると、ひとまず保証されているのは開幕前のキャンプにおける立場であり、レギュラーシーズンにおけるロスター入りは必ずしも保証されていないようだ。


2月16日時点でミスティクスのロスターを確認すると、町田を含め13人の名前が並んでいる。実際にはそこに、4月に行われるWNBAドラフト(ミスティクスは1巡目1位指名権を持っている)で獲得するプレーヤーも加わることになるので、その1人を含め14人が現時点で想定すべき人数だ。しかしWNBAのロスターは最大12人なので、最終的にそこまで絞り込む過程を踏まなければならない。ミスティクスは町田を含めて4人がトレーニングキャンプ契約。ごく一般的な考えからは、その中から順に誰かがカットされる公算が強そうだ。

 

 ただし北米のメディアやバスケットボール関連ブログサイトでは、すでに町田が2022シーズンにポイントガードのバックアップとしてプレーする前提で、さまざまな記事発信が行われている。トレーニングキャンプ契約の4人の中で、町田の実績は群を抜く価値を感じさせるものでもあり、期待の大きさが感じられる。

 

 また現実的にも、このスポット争いで町田が勝ち残る力は十分にあるし、町田のような存在に対するチームニーズがありそうだ。昨シーズンは町田の立ち位置に近いプレーヤーとして、オーストラリア代表で身長165cmのポイントガード、レイラニ・ミッチェルがプレーしていた。ミスティクスとすればそのポジションを、オリンピック銀メダリストでアシスト王というタイトルを持つタレントにアップグレードできることになるのだ。


ティボーHCが話しているとおり、ミスティクスのガード陣と町田のチームアップは楽しみでしかない。例えばスターターのポイントガードを務めるナターシャ・クラウドと同時に起用するなら、身長162cmの町田をプレーメイカーにして、183cmとサイズのあるクラウドを、よりコンボガード的に起用することもできそうだ。また両者を別の時間帯で起用すれば、異なるタイプのオフェンスを展開できるだろう。

 

 また、東京2020オリンピックの金メダリストであるシューティングガードのアリエル・アトキンスや、身長195cmでアウトサイドでもインサイドでも柔軟にこなせるベテランのエレーナ・デレ・ダーンは、町田にとって非常に頼れるフィニッシャーになる。


Wリーグのファイナルは4月18日(月)で終了する予定で、町田としてはまず国内タイトルを手にした上で渡米という形を目標としていることだろう。そこから約2週間のトレーニングキャンプで、ミスティクスとのフィット感を確認しながら信頼を得、順調なら日本時間5月7日(北米時間6日)のWNBA開幕初日に行われるインディアナ・フィーバーとの一戦で、ミスティクスの一員としてデビューを果たす。この日が日本人として4人目のWNBAプレーヤー誕生のXデーだ。

 


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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