月刊バスケットボール5月号

篠山竜青、サンダースファミリーに支えられたシーズンハイの20得点

 

 2月12、13日と群馬クレインサンダーズをホームに迎えた川崎ブレイブサンダースは、連敗を喫した。今季初めての連敗だ。

 

 13日の第2戦ではパブロ・アギラールと米須玲音に加え、第1戦でチームハイの24得点を挙げたマット・ジャニングがケガで欠場。藤井祐眞もコンディションが良いとは言えない状況で、前田悟もベンチ入りこそしていたが、プレーすることはなかった。さらにはジョーダン・ヒースがレフェリーへの抗議で2つのテクニカルファウルをコールされ、3Q途中で退場となってしまうなど、タイムシェアで戦ってきたチームにとっては緊急事態だ。

 

 それでも、ヒースに代わって試合に入った鎌田裕也がインサイドで体を張って群馬のビッグラインナップに応戦すれば、増田啓介や熊谷尚也も攻防に懸命な踏ん張りを見せ、1桁差で食らい付く。

 

 結果的には73-81と敗れたが、佐藤賢次HCの「今日はケガ人が出て限られたメンバーで戦う状況の中で、いない選手の分まで全員でステップアップして戦い抜こうということで試合に入って、それぞれが良い働きをしてくれたと思います」という言葉のとおり、一丸となって戦う姿勢を貫き逆転しかける場面も多々あった。

 

 ただ、「J(ヒース)がテクニカルファウルを取られたときのメンタル面や試合のコントロール含め、強くなるためにはまだまだ足りない部分があります。本当に強いチームであればこういう状況でも勝てると思いますし、一人一人が今日の試合でもっと何ができたのか、どういうステップアップができたのかを考えてほしいという事を伝えました」と佐藤HC。ヒースが1度目のテクニカルファウル宣告後にもなお激昂している場面では、チームメイトも、そして佐藤HC自身もそこに目を向けることができていなかったそうで、佐藤HC自身もその点については「ジャッジの方に目がいってしまって、Jがずっと言い続けているのには僕も、多分ほかの選手も気付けていませんでした。そこは反省しなければいけないです。普段はあんなに言うタイプじゃないんですけど、そのJでもそういうことがあるのを頭に入れないといけないですし、あの場面では僕がJを静止しないといけなかった」と反省を口にしていた。

 

 チームは9日で5試合というハードスケジュールを終え、一旦バイウィークに突入する。そのバイウィーク明けには、この試合での反省を踏まえて「また強い川崎をお見せしたいと思います」と佐藤HC。危機的状況にも言い訳をせず、まずは東地区制覇を目指す。

 

チームとしても、佐藤HC自身としてもこの敗戦を良薬としたいところ

 

窮地で見せたベテランのステップアップ

 

 この試合では、プラスの面ももちろんあった。佐藤HCが口にした“ステップアップ”を体現した一人が、篠山竜青だ。川崎一筋12年目のフランチャイズプレーヤーは、この試合でシーズンハイの20得点。しかも、その全得点を後半に集中し、勝負どころの4Qではチームの20得点中14得点を一人で奪った。

 

 この活躍には佐藤HCも「相手がニック(ファジーカス)にずっとくっついて体をぶつけて削ってくるようなディフェンスをやっていたので、ハンドラー陣の状況判断が重要でした。竜青はよく判断してくれて、シュートが入るか入らないかは別にして、調子が良かったので最後はずっとそこに託していました。祐眞もあまりコンディションが良くなくて、調子も上がってこなかったので、その分、竜青がステップアップしてくれたなと思っています」とベテランの活躍を評価した。

 

 篠山の20得点越えはBリーグで出場した310試合中8試合のみ(チャンピオンシップ含む)であり、直近で20得点以上を記録したのは2019年12月12日の富山グラウジーズ戦(21得点)までさかのぼる。このデータとシュートアテンプトもシーズンハイの16本を記録した点を見ると、いかに篠山が緊急事態のチームを救おうと奮闘したかが分かる。

 

 篠山は「コンディションの問題やケガもあってタフな試合でしたが、全員でしっかりとつないで接戦でチーム全体で戦うことができたと思います。そこから追い付き追い越し、勝ち切る力を身に付けないといけないなと思いました」と試合を振り返った。

 

 4Q残り46秒と26秒の場面ではトップから2本の3Pシュートを放ったがこれを決め切ることはできず。プレー単体を切り取ると、これも篠山の言う「勝ち切る力」を身に付けるための課題なのかもしれない。

 

 

「応援してくれる方のおかげで最後まで足を動かせた」

 

 ただ、この2つの場面ではとどろきアリーナの“サンダースファミリー”が「入ってくれ」と願っているかのような一体感が感じられた。

 

 そのことについて篠山は「ホームゲームだったからこそ、最後までくっついていけたと思ってます。観客の皆さんはどんなときでもクラップであったり、応援タオルやグッズを掲げる手であったり、そういういろいろな部分で自分たちを後押ししてくれていますし、それを僕らも感じています。今節は代替試合で天気も悪かったりする中でしたが、それでも会場に来て後押ししてくれるファミリーの皆さんがたくさんいました。そういう方たちがいての今日のチームのプレーだったと思いますし、自分も最後まで足を動かせたと思います。もし、無観客試合だったら自分はこんなにプレーはできていないと思います」と言う。

 

 もちろんプロスポーツは最終的には結果が全てだ。ただ、この篠山の言葉のように、応援してくれるファンがいて選手やクラブ、リーグが成り立っていることを忘れてはならない。

 

 佐藤HCも思いは同じで「今日のような状況でもファミリーの方が来てくれて、我々の試合を楽しみにしてくれています。今日もベンチの人数は少なかったけど、じゃあそこで何を見せるのか、今日来てくれた方に何かを感じて帰ってもらえるかが、僕たちの使命というか。それを忘れたら僕らがバスケットをやっている意味、存在している意味がないので、そこだけは絶対に忘れないようにしています。いろいろなことがありますけど、試合はしなければいけないし、その試合で何かを伝えなければいけない。それはいつも選手に伝えていることです」と、言葉に力を込めた。

 

 この連敗で川崎は東地区2位、リーグ全体で4位。まだまだ厳しい戦いが続くこととなるが、篠山は「今年こそはチャンピオンシップをホームでやるという目標に向かってやっていきたいと思います」と最後に言葉を並べた。

 

 思いは常にサンダースファミリーと共にある。

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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