月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.02.10

千葉ジェッツが琉球ゴールデンキングスを倒し天皇杯決勝に進出

Bリーグを代表する2人のポイントガード、富樫勇樹と並里 成のマッチアップとゲームメイクが見られたこの試合は、天皇杯準決勝にふさわしい大激戦の末千葉ジェッツが勝利した

 

 2月9日に船橋アリーナで行われた千葉ジェッツ対琉球ゴールデンキングスの天皇杯準決勝は、千葉Jが中盤に大量リードを築き、終盤琉球が猛追する大激戦の末、千葉Jが92-87で逃げ切って決勝進出を決めた。


千葉Jは開始早々にジョシュ・ダンカンと佐藤卓磨が1 本ずつフィールドゴールを決めて4-0とリード。対する琉球もアレン・ダーラムが2本返して4-4と食らいついた。しかし試合開始2分過ぎに富樫勇樹がトップから3Pショットを決めて7-4としたところから、千葉Jは約4分間にわたる11-2のランで一気に18-6と主導権を奪う。


先制パンチを食らった序盤の琉球は、桶谷 大HCによれば状況判断が伴わず「ワイドオープンでシュートを打たなかった。タフなショットを選んでしまっていた」という。具体的には、琉球のサイドピック&ロールに対する千葉Jの“ネクストカバレッジ”と呼ばれるディフェンス(ウイークサイドの3人目のディフェンスがボールハンドラーに対応してくるディフェンス)に、十分対応して3Pショットのチャンスを作れていたが、それを自ら逃してしまっていたことを桶谷HCは試合後に振り返っている。

 

 結果琉球は、前半の3P成功率が10.0%(10本中1本成功)と低迷。守っても千葉Jに気分よくオフェンスを展開させてしまった。前半終了時点のスコアは36-25で、第1Qのランがそのまま千葉を優位に立たせた形だ。

 


千葉Jは第3Q開始早々にも勢いよく点差を広げた。攻勢の口火を切ったのは富樫の3Pショットで、その後ダンカンが2本、原 修太が1本と、約2分間の間に4本の3Pショットを沈める。この間の12-4のランでスコアは48-29となり、千葉の優位は動かしがたいところまで来たようにも感じられた。

 

 しかしその後、最大22点差まで広がった千葉Jのリードは徐々に縮まっていく。クリストファー・スミスのフリースローでスコアが64-44となった第3Q残り3分1秒から第4Q開始1分過ぎまでは、琉球が13連続得点と爆発力を見せ、64-57と追い上げる。


今シーズンのB1で最高勝率の琉球が見せた意地のランと、昨シーズンの王者である千葉Jのそれ以後の対抗心あふれる戦いぶりは、見応え満点だった。

 

昨シーズンまでホームとして親しんだ船橋アリーナでの試合を前に、「うれしくて眠れなかった」と語ったコー・フリッピンは、その思いが表現された素晴らしいパフォーマンスを見せた

 

 

 琉球は残り5分43秒にドウェイン・エバンスが3Pショットを決めた時点で一度は71-70と逆転にも成功。昨シーズンまではジェッツの一員で、「前の夜は眠れませんでした」と試合後に語ったコー・フリッピンも攻守に躍動し、再度逆転された後にもスティールから78-78と同点に追いつく豪快なダンクを披露した。このときには船橋アリーナのジェッツブースターたちから、感嘆と危機感が混ざったような吐息も漏れていた。昨シーズンの沖縄アリーナを舞台に行われたB1チャンピオンシップ・セミファイナルを思い起こさせる激闘の中で、琉球がアウェイでその雪辱を果たす雰囲気も十分にあった。


しかし、クランチタイムで勝利にふさわしいプレーを見せたのは千葉Jの方だった。琉球の追い上げムードの中、富樫は第4Qにベンチから出てきてすぐに3Pショットを沈める場面が2度あった。そのうちの1本は、前述のフリッピンのダンクの直後に危なげな流れを断ち切り、千葉Jに81-78とリードをもたらす一撃だ。

 

厳しくマークされた3Pショットもみごとに沈めていたクリストファー・スミスも、勝利の立役者の一人だった


83-81と2点リードで迎えた残り1分3秒には、原が右ウイングから5点差に引き離す貴重な3Pショットを放り込む。残り16秒を過ぎて3点差、5点差を追う状況でもまだまだあきらめない琉球は、ファウルをいとわず向かってくる。それでも西村文男と大倉颯太がきっちりフリースローを2本ずつ沈め、難敵を振り切った。

 

原 修太は終盤、勝利に欠かせないビッグショットを決めた

 


千葉Jは富樫が18得点、5リバウンドに9アシスト、1スティールと攻守にチームをけん引。スミスがゲームハイの23得点、ダンカンが16得点、ムーニーが11得点を記録した。どのプレーヤーも、チーム内の新型コロナウイルス感染拡大により1月には1試合しかプレーできず、コンディションが十分ではなかったとは思えない力強さ。富樫は終盤足の痙攣でベンチに下がっていたが、コート上のパフォーマンスは秀逸だった。

 

 大野篤史HCは試合後、「勝ててホッとしています。一発勝負で負けたら終わりですし、特にセミファイナルからの出場なので」と話し、「自分たちが天皇杯を獲るんだ、勝ちたいんだという気持ちをコートに置いていける方が強い。そういうところを出せました」と大事な一戦で気持ちの強さを示したプレーヤーたちを称賛していた。


一方の琉球はアレン・ダーラムの21得点を筆頭にフリッピンが16得点、ジャック・クーリーが14得点、岸本隆一11得点、今村佳太10得点と5人が2桁得点に到達。しかし先制パンチを食らった後しばらくの時間帯に我を見失い、40分間普段の自分たちらしさ保つことができなかった。3Pショットが20本中4本と不振に終わったことに加え、リバウンド数で33-40と上回られたことも響き、初めて4強入りを果たした天皇杯における歴史的快進撃の幕を閉じることとなった。

 

アレン・ダーラムもいつも通りの大奮闘で琉球を鼓舞していた


千葉Jは3月12日(土)にさいたまスーパーアリーナで開催される決勝戦で、川崎ブレイブサンダースと対戦する。昨シーズンのB1チャンピオンと天皇杯の覇者の激突は大いに注目を集めそうだ。

 

写真/山岡邦彦

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)

 



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