月刊バスケットボール5月号

渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ) - FIBA女子ワールドカップ2022予選日本代表候補名鑑

 

リオオリンピック準々決勝での渡嘉敷来夢(写真/©fiba.basketball)

 

 

写真/©JBA


渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ/埼玉県/桜花学園高校)
C 193/85 1991/06/11(30歳)
☆キースタッツ
Wリーグ2021-22: 19.3P, FG76.8%, 3P40.0%, FT78.2%, 10.4R, 2.6A, 0.8S, 1.5B
リオオリンピック: 17.0P, FG49.4%, 3P-, FT84.2%, 6.3R, 1.7A,1.2S, 0.8B
WNBA通算(2015~17): 5.5P, FG43.7%, 3P0.0%, FT83.6%, 2.4R, 0.6A,0.3S, 0.4B


2018年にスペインのテネリフェで開催されたFIBA女子ワールドカップに出場しなかった渡嘉敷来夢は、今回ロスター入りして予選を突破し、また本戦に向けたセレクションもパスすれば、2016年のリオオリンピック以来6年ぶりに世界の舞台に立つことになる。ワールドカップとしては2014年のトルコ大会(当時の呼称は世界選手権)以来8年ぶりだ。


リオオリンピックでは得点が大会全体の3位、フィールドゴール成功率が9位、リバウンドも10位と個人として数字を残し、チームはベスト8に進出。最終的な金メダリストだったアメリカ代表との準々決勝は64-110で敗れたが、大きく突き放された第4Qに至るまでの過程は、ハードパンチの打ち合いのような試合だった。その中で渡嘉敷はチームハイとなる14得点を記録した。

 

リオオリンピック準々決勝での渡嘉敷来夢(写真/©fiba.basketball)

 


この数字を振り返れば、渡嘉敷がまぎれもなくワールドクラスのタレントであることがわかる。またもう一つ思うのは、それまでのチームで最長身であることに加え幅の広いプレーができるタレントを欠いた日本代表が、東京2020オリンピックで銀メダルを獲得し、その後のFIBA女子アジアカップ2021で大会5連覇を達成したことの偉大さだ。プレーヤーたちの頑張りとスタッフの能力の高さは称賛されるべきだし、それまでの長い歴史をつないできた女子バスケットボール関係者は誇りに思うべきだとあらためて思う。


合宿に参加中の渡嘉敷は、1月27日のメディア向けズーム会見にさわやかな笑顔で登場した。「ケガ明け最初の代表合宿ですけど、とても一日一日を有意義に過ごせているなと感じています」と話し、恩塚 亨HCが掲げていることの一つである「ワクワクするようなバスケットボール」を楽しめているような印象だ。「トムさん(トム・ホーバス現男子日本代表HC)のときとは違ったバスケットスタイルなので、自分自身も最初はそのスタイルになれるのに時間がかかりました。でも今はだいぶそれが浸透してきて、いつもと違った自分のスタイルで、自分自身もこれから自分がどうなっていくのかとても楽しみな状態です」


ワールドクラスの渡嘉敷が今回実際に代表カムバックを果たす場合、おおきにアリーナ舞洲でマッチアップする相手は現時点での女子バスケットボール界で世界最高のタレントたちだ。渡嘉敷は具体的に、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のジョンケル・ジョーンズと、カナダ代表のナタリー・アチョンワを挙げて、対戦が待ちきれない様子だった。


ジョーンズは身長198cmで、WNBAでの登録はフォワード、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表での登録はセンターとなっている。渡邊雄太(NBAトロント・ラプターズ)と同じジョージ・ワシントン大学出身で、WNBAのコネティカット・サンに所属。その間平均17.1得点、10.3リバウンドとアベレージ自体がダブルダブルだ。フィールドゴール成功率は50.3%、チャンスがあれば3Pショットも狙ってくる。2021年はレギュラーシーズンMVPと最優秀ディフェンシブ・プレーヤーに輝いた。

 

 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表としては、昨年のFIBAユーロバスケット2021で平均24.3得点と16.8リバウンドがともに大会全体の1位。同大会におけるチームの5位躍進は、このプレーヤーなしに語ることはできない。まさしく現在世界最高峰のタレントだ。

 


FIBAユーロバスケット2021でのジョンケル・ジョーンズ(写真/©fiba.basketball)

 

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渡嘉敷は自身がシアトル・ストームに在籍していた当時、ジョーンズとマッチアップしたこともある。だからこそわかるそのレベルの高さを、「一番はあの身長でオールラウンドなプレーができるのが本当にすごいですね。自分がアメリカにいたときよりもはるかに一つ一つのプレーの精度が上がっているんじゃないかと感じています」と評し、「ジョーンズとできるのがむちゃくちゃ楽しみ」と素直な気持ちを言い表した。


しかし感心するだけではなく、その相手を叩きのめす仕事のイメージも作り始めていた。「彼女はプレッシャーをあまり好んでいないんですよね。それと、オフェンスではよく走って積極的にプレーするんですけど、そのあとの戻りが遅かったりするので、そういうところで粘り勝ちたいです」と分析を語る。「自分はやっぱり彼女よりも身長が低いですし、チームディフェンスでも1対1でもフットワークを使ってしっかりとプレッシャーをかけて守ること。それで相手がフラストレーションをためたところでしっかりと走り勝てたらいいなと思います」


もう一人、「ジャンプシュートが上手なカナダの11番」と話したのが、WNBAのミネソタ・リンクスのフォワードで身長191cmのアチョンワだ。「試合になればマッチアップすることになると思うんですけど、相手も私のことを知っているので、そこも負けられないと思います」とライバル心を見せる。アチョンワは東京2020オリンピックのカナダ代表の一員でもあり、同大会で平均8.3得点、6.0リバウンド、4.0アシストとオールラウンドな貢献をもたらしていた。


世界一のアジリティーを発揮し、3Pショットやスピーディーなガード陣とフロントラインの連係を生かす恩塚HCのバスケットボールで、渡嘉敷はこれまで以上の脅威になれるはず。ジョーンズやアチョンワをきりきり舞いさせるシーンを期待したい。

 

東京2020オリンピックに出場したアチョンワもWNBAプレーヤーだ(写真/©fiba/basketball)

 


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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