月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.01.27

リーグNo.1のオフェンスを司る齋藤拓実の存在感

 

 名古屋ダイヤモンドドルフィンズは現在、リーグトップのオフェンス力を備えたチームだ。1月26日に行われた第18節を終えた時点での平均得点は90.1。これは今季のB1で唯一の平均90点越えであり、シーズン中盤ではあるがBリーグの全6シーズン中でもトップの数字だ。

 

 今季から指揮を執るショーン・デニスHCはシーズンの目標の一つとして「平均90得点」を掲げたという。それが実行できている要因としては「ガードだけではなく、ビッグマンも絡んでいますし、全員での動きとスペーシングが良いです。良いスぺーシングが取れているからどんどんアタックできている」という点を挙げた。

 

 ロスター15人中12人が平均5得点以上(うち4人は平均2桁得点)を挙げている層の厚さも、スペーシングの向上に一役買っているだろう。それにインサイドだけでなく、アウトサイドのタッチが良くパススキルも高い外国籍選手の存在も大きい。

 

9試合目にしてシーズンハイの活躍を見せたシェーン・ウィティングトン

 

 さまざまなプラスの要素がある中でも、最大の武器はポイントガードのゲームメイクにあると言えるだろう。そのポジションを務めるのは172cmの齋藤拓実だ。桐光学園高、明治大を経てプロ入りし、昨季から名古屋Dをけん引するスピードスターは、今季もチームの中核として大活躍。平均11.8得点に加えてリーグ6位の6アシストも記録している。

 

 第18節で対戦したアルバルク東京相手にも、齋藤は見事なゲーム運びを見せた。序盤こそ、A東京に2-8と先行された名古屋Dだったが、そこで取ったタイムアウト明け以降は盛り返し、前半で47-35と2桁のリード。その口火を切ったのは齋藤で、最初のタイムアウト明けから積極的に点に絡むと、前半だけで11得点。彼のほかにも内外とオールラウンドに活躍するコティ・クラークが9得点、シェーン・ウィティングトンが3Pシュート2本を含む8得点、レイ・パークスジュニアも6得点と続いた。

 

 

 後半に入っても2桁リードをキープした名古屋D。4Q終盤にはA東京の反撃に遭い、5点差まで詰め寄られる場面もあったが、最終的には86-80で逃げ切り東地区の強豪相手に価値ある白星を挙げた。

 

 試合後、齋藤は「東地区の強豪と対戦する機会がなかなかなかったので、自分たちが勝率を上げてきた中で強豪相手のどれくらいできるのかがチームとしても楽しみで、(A東京戦に向けた)チームの士気は高まっていました。入りは簡単にやられてしまう部分もありましたが、選手同士でしっかりとコミュニケーションを取ってうまく対応できたと思います。自分たちのやりたいバスケットを、特にオフェンス面についてはA東京も止めるのが難しかったと思うので、そういう部分では自分たちがどういうバスケットをやりたいのかをうまく表現できたと思います」と及第点の評価。自身のプレーについても「うまくボールをシェアしながら切り込んでいけました。ピック&ロールのところで自分が狙えるチャンスにしっかりと自分がシュートが打てていた」と合格点を与えていた。

 

齋藤はこの試合でも攻める場面とコントロールする場面をうまく使い分けた

 

 そんな齋藤だが、今季はよりアグレッシブに攻める姿勢と、ゲームをコントロールする冷静さの2点を意識したプレーを心がけている。「オフェンス面ではプッシュできるところはして、自分たちのやりたいアップテンポなバスケットを変わらずにやっていきたいと考えています。控えのPGもプッシュできる選手たちですし、どの選手が出てきても変わらないオフェンスができるのはチームの強みです。あとは、時間と点差を見てコントロールしないといけないところを見極めたり、『このセットプレーは効いているな』とか、そういうことを考えながらプレーできているように感じます」

 

 この試合でも前述した試合の入りで盛り返す場面では積極的に得点を狙い、後半にリードをキープした場面では味方を使いながら冷静にゲームを見極めた。そして、5点差に迫られた4Q残り41.4秒には再び得点に舵を切り、相手の勢いを削ぐような3Pシュートをヒット。点差を8点(84-76)に押し戻した。結果的にはこの3Pが勝敗を分かつ一本となり、齋藤は自身の言葉通りのパフォーマンスでチームを勝利に導いたのだった。

 

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 名古屋Dは齋藤の20得点を筆頭に、シェーン・ウィティングトンがシーズンハイの15得点、コティ・クラークとレイ・パークスジュニアもそれぞれ2桁得点。この試合でも、巧みなスペーシングから満遍なく多くの選手が得点した形だ。

 

 ただ、シーズンはまだ中盤戦で、チームとしても修正しなければならない点は多い。齋藤も、話題がディフェンスに移ると「簡単にシュートを打たれてしまうところもあったので、そういう場面が減ってくれば、70点台、60点台に抑えられたと思います。それに、今日は相手の3Pの確率があまり良くなかったので、そこが上がってきたときに自分たちがどう対応するのかもしっかりと確認しながら修正していきたい」と明確に課題を口にしていた。

 

 プロ4年目にして、リーグNo.1のオフェンス力を持つチームを司る存在となった齋藤。次世代のスピードスターは、チームと共に進化を続けていく。

 

写真/©︎B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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