月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.01.22

八村 塁&渡邊雄太、待望のNBA日本人対決が実現 - 試合後、それぞれの言葉

 八村 塁と渡邊雄太のマッチアップが実現した日本時間1月22日のワシントン・ウィザーズ対トロント・ラプターズ戦。個別スタッツでは、シーズンハイの19分50秒出場して11得点、8リバウンドとダブルダブルに迫る数字を残した八村の活躍が際立った。しかし、調子を落としてここ2試合出場がなかった渡邊も、5分47秒の短い出場時間の中で、数字として残した2リバウンド以外にも徐々にコンディションが高まってきていることを感じさせるプレーを随所に見せた。

 

直接マッチアップも実現


試合はラプターズがウィザーズの終盤の追撃をかわして109-105で勝利。この結果により、ラプターズは同日の日程終了時点で22勝21敗としてイースタンカンファレンスの8位に浮上し、逆にウィザーズは23勝23敗で9位に後退した。また、両チームの対戦は今シーズンこれが最後で、ラプターズが3勝1敗と勝ち越している。仮にシーズン終盤にプレーオフ、プレーイントーナメントへの出場枠を両チームが争う場合、この直接対決結果がモノを言うことがあるかもしれない。

 

 八村はこの日、フィールドゴール12本中5本を成功させ3試合連続の2桁得点。緩急の利いたドライブからの巧みなレイアップが2本あり、力強くドリブルで押し込んでからのターンアラウンド・フェイドアウェイ・ジャンパー、そして4試合連続となる3Pショット成功という多彩なフィニッシュで復調ぶりを印象づけた。


渡邊には得点機が巡ってこなかったが、ディフェンス面で動きの良さが見えてきている。第1Qに八村と同時にコーチに登場した直後、両者がマッチアップする待望のシーンが訪れたシーンでは、八村のミドルジャンパーに対し食らいつきミスで終わらせた。八村はこのいシーンについて、試合後に「彼もディフェンスが得意な選手なので、良いディフェンスをされました」と脱帽だった。

 

 また、ウィザーズのシューター、ダービス・ベルターンスのオフボールの動きを追いかけ得点機を阻むシーンもあった。安全衛生プロトコル適用を脱した直後の3試合と比べると、体の軽さが感じられた。

 

復調に自信を見せる渡邊とナースHC


試合後、ラプターズのニック・ナースHCは渡邊の出来を次のように評した。渡邊の今後の復調に自信を持っている様子はこれまでと変わらない。


「今夜、彼は一歩前進したと思います。ディフェンスで2度しっかり止めた場面があり、リバウンドも獲りました。足が動き。相手のショットに挑戦してミスを誘い、リバウンドです。オフェンスではあまり機会がありませんでしたけれどね。良くなってきていると思います。動き回っている様子を見るとリズムも取り戻しつつあり、いけるという感触があります」
“I think he took a step forward tonight. You know he ended up with a couple of great defensive stops and rebounds you know. He moved his feet, challenged shots, made them miss, collected the board. He really didn’t get much of an opporunity on offense but…. I agree with you. I think, again, there’s just kind of a look in the way. You move around out there that you know you’re kind of in the rhythm and ready to go.”

 

「今日は大きな一歩だったと思います。自信にもなるでしょうし、このまま進みたいですね。彼を元の状態に戻してみせますよ。この感じなら大丈夫でしょう」
“I still think…, I think he made a big step to getting back to that tonight and that’ll build some confidence and hopefully we’ll just keep moving forward. We’ll get him back there. We’ll get him back there. He’s playing too well not to get back to that form.”

 

試合後会見でナースHCは、渡邊の復調に自信を見せていた(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)


故障による長期離脱、復帰後ダブルダブルを2度を記録した力強い活躍、安全衛生プロトコル適用、そこから復帰直後の強豪チーム相手のスターター起用と不調。さまざまなことが起こっている今シーズンだけに、渡邊の心身のコンディションと復調への道のりはどうしても気になるところ。しかし本人は「メンタル的にそんなに落ち込んでいるということはないです」と話し、調子の浮き沈みに動じることなく落ち着いて今シーズンの戦いに臨めている様子だった。「コロナ明けの3試合ぐらい、正直調子は全然よくなくて、プレータイムをもらえないのは自分の責任だと思っています。ただ、そこに対してフラストレーションをためるとかパニックを起こすことはなく、プレータイムをもらえない期間というのは今までも何回もありましたし、また一から信頼を勝ち取っていけばいいと僕は思っています」

 

渡邊は内面的には落ち着いた状態で、復調への道のりと向き合っている

(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます[リンク先映像の1分21秒過ぎあたりから])


自身の能力に自信をもてていることがわかるコメントであり、またナースHCのコメントも合わせて考えれば、コーチ陣ともしっかりしたコミュニケーションが取れているだろうことも推察できる。「もちろん試合に出られないのは悔しいですし、自分がローテーション入りしてしっかりとチームの勝ちに貢献したいというのは大前提です。ただ、今ローテーションから外れているからと言って大きく気持ち的に変化があるかと言ったら、そこまではないですね」と渡邊はこちらからの質問に対する回答を締めくくった。

 

レベルを急速に高める八村、ブレアー臨時HCも称賛

 

 一方、八村はホームで大切な試合に負けた悔しさを込め、「チームとしてもこの一戦はすごくほしくて、最初の出足から僕らが先にパンチを打っていこうと。それができたと思うんですけど、続けることができなかったなというのが敗因になったと思うので、それがこれからの課題じゃないかなと思います」と話した。自身の復調ぶりには好感触で、シュートタッチも「上がってきている」と答えていた。「僕のミッドレンジも少しずつ上がってきていると思うので、しっかりとそこを考えながらプレーしていきたいなと思います。(シュートの弾道も)課題としてやってきたので、調整しながらやっていきたいなと思います」

 

試合後は八村も会見に登場。渡邊とのマッチアップを楽しんだことを語っていた(写真をクリックするとコメント映像が見られます)

 

 試合には敗れたものの、ウィザーズのジョセフ・ブレアーHCも八村のパフォーマンスには以下のように称賛の言葉を発していた。

 

「よくやってくれたと思います。ルイの話にデニ(アブディヤ)を含めるのは良くないかもしれないですが、どちらも止めてほしいときに相手を止めようと挑戦し、ほしいときに重要なリバウンドをとって頑張ってくれていました。なので、彼のプレーぶりはうれしかったですね」

“I think he did a good job. But I talk about Rui right now I hate to include Deni. But I think that they both did a good job of stepping up to the challenge of guarding the men when we needed them to and some big rebounds when we needed them to. So I’m pleased with the way he played.”

 

ブレアー臨時HCは八村の出来を高く評価していた(写真をクリックするとコメント映像が見られます[リンク先映像の1分20秒過ぎから])


八村は渡邊とのマッチアップについて、「いつも対戦するときにどちらかに何かがあってできなかったので、久しぶりに対戦ができて良かったなと思います」と話し、今シーズンが始まってから初めて会う機会を楽しんだ様子だった。同じ日本人として頑張っている渡邊が刺激になっていることも明かしながら、「二人で切磋琢磨して頑張っていきたいなと思います」と話す。「試合前にもマッチアップできたらいいねと話していたので、すぐにそれができて良かったなと思います」

 

 頼もしい二人の直接対決は、2021-22レギュラーシーズンでは見納めとなったが、まだポストシーズンで見られる可能性が十分ある。仮に7戦シリーズで両者が対戦することになったら…。そんな想像をしながら後半戦を見れば、NBAの楽しみが一層膨らむというものだ。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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