月刊バスケットボール5月号

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2022.01.13

ハイレベルなパフォーマンスを続ける安間志織(独ブンデスリーガ、アイスフォーゲル)

 昨シーズン、トヨタ自動車アンテロープスでWリーグ初制覇を果たしプレーオフMVPに輝いた安間志織。日本代表としての挑戦を経てドイツに渡った後、アイスフォーゲルUSCフライブルクでの活躍が止まらない。

 

 昨年暮れから後半戦に突入したブンデスリーガにおいて、ここまでの15試合で平均20.8得点、5.7リバウンド、5.7アシスト、2.9スティール。チームも11勝4敗で14チーム中3位と好調だ。個人スタッツでは得点とアシスト、スティールがリーグトップを争う数字であり、リバウンドでもトップ30に名を連ねている(公式アプリでスタッツ集計が見られるのだが、全試合の成績が反映されていないため、明確な順位は記載しないでおく)。

 


2022年に入ってからは、残念ながらブンデスリーガでも新型コロナウイルス感染拡大の影響が出て、アイスフォーゲルはまだリーグ公式戦を戦えていない。しかし、国内最高峰のカップ戦であるポカールでは、日本時間1月6日(ドイツ時間5日)にTKハノーバーと準々決勝を戦った。このチームはリーグ戦でもアイスフォーゲルと上位を激しく競っているライバルで、アイスフォーゲルは75-80で敗退したが、安間はこの試合でも15得点、9アシスト、3リバウンドと攻守で奮闘した。

 

 安間は主にTKハノーバーのアルドナ・モラウィエツという身長180cmのガード、あるいはアメリカ人フォワードで185cmあるダニエル・マクレーを相手にプレーするシーンが多かった。モラウィエツはポーランド代表で、ユーロバスケットにも出場した経歴がある。マクレーは2010年のWNBAドラフト1巡目7位でコネティカット・サンから指名され、3シーズンプレーした実績を持っている。相手チームがこうした実力者を安間に当ててくることは、いうまでもなくそれだけの“リスペクト”を安間が得、警戒される存在であることを示すものだ。


そのような世界のトップレベルを相手にダブルダブルに近いパフォーマンスを記録し、惜敗を喫した後、安間はコートに残ってこの日の出来を反省するかのようにシューティングを繰り返していた。“バスケットボール・アイランド”とも形容される沖縄が生んだ161cmのプレーメイカーが、勝利にこだわり向上しようとし続けていることが伝わってくる。

 

 

 フライブルクの地元紙バディシェ・ザイトゥンは安間を11月、12月に特集し、その中でアイスフォーゲルのブンデスリーガにおける歴史上、安間ほど注目されたプレーヤーがいなかったと綴っている。「Shootingstar」とか、オールラウンダーを意味する「Alleskonnerin」といった言葉が安間の活躍ぶりを物語る。


前半戦でひととおり13チームとの試合を見て驚くのが、ブンデスリーガに一つとして安間の総合的なオフェンスを止められるチームがなかったことだ。これは大げさな表現ではなく、実際に安間は15試合中14試合で2桁得点を記録し、1桁だった唯一の試合では12アシストを記録して90-52で勝利している(昨年12月4日の対バスキャッツUSCハイデルベルク戦)。

 

 しかしこれは、アイスフォーゲルのハラルド・ヤンソンHCが開幕前に「彼女はこのリーグで支配的なプレーヤーになれる」と太鼓判を押していたことが証明されているに過ぎない。世界の頂点を目指してきた日本の女子バスケットボール界において、その中でもトップに君臨した安間のレベルは高くて当然、驚くことでもないのかもしれない。


異文化に触れながら、毎試合世界のトップレベルと競い合う機会を得ている中で、安間のプレーは以前よりも大胆に見え、また明らかに効果を挙げている。言葉の壁を乗り越えられる実力をすでに証明している点を見ても、世界中どこのリーグでも活躍できると感じる。


トランジションの速さと正確さは群を抜いており、たびたびダイナミックな弾丸パスがフロントランナーにイージーバスケットの機会を生み出している。海外から加わった最初のシーズンであるにもかかわらず、チームを鼓舞してまとめるリーダーシップが非常に目を引く。トリッキーなドリブルワークから繰り出される果敢なドリブルドライブと多彩なフィニッシュ、ロングレンジから教科書のようなストロークで放つ高確率のショット、広い視野を生かした絶妙なパスワークなど、好材料をいくらでも挙げることができる。日本の関係者だけでなく、ヨーロッパ諸国やアメリカのエージェントたちがどんな目で安間の活躍を見ているか、非常に興味深い。

 


ブンデスリーガにおける安間とアイスフォーゲルは、チャンピオンシップが十分ねらえる位置にいる。次戦は日本時間1月17日午前0時からのルトロニック・スターズ・ケルターンとの一戦。ここまで11勝5敗で、アイスフォーゲルを0.5ゲーム差で追いかけるライバルチームとの重要な試合だ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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