月刊バスケットボール5月号

今週の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.2-2

  Vol.2 REEBOK OMNIZONE 2 リーボック オムニゾーン2   文=岸田 林   勢いに乗るリーボックは、ショーン・ケンプ(当時ソニックス)、シャキール・オニール(当時マジック)ら、有望な若手選手と次々に契約。当時セルティックスのルーキーだったディー・ブラウンも、その一人だった。1990年ドラフト1巡目(全体19位)で指名されたブラウンは、プロ入り直後にリーボックと契約すると、翌91年のスラムダンクコンテストに「オムニゾーン」を履いて出場。右手で目隠しをしながらの“ノールックダンク”でケンプとの対決を制している。が、ともすればそのダンク以上に強いインパクトを残したのは、ダンク直前、ブラウンが「ポンプ」で自らのシューズに空気を送り込んだパフォーマンスだった。実際のところ、彼がカメラの前でシューズに空気を入れたのはコンテストの1stラウンドでの出来事。だが結果的にブラウンの“ノールックダンク”と「オムニゾーン」はセットで記憶され、現在でも「ポンプ」を象徴するエピソードとして語り継がれている。   当時のブラウンのダンクとシューズがこれほど注目されたのには、伏線があった。前年、同じくリーボックと契約していたウィルキンズが優勝した際、10万ドルのボーナスが払われたとして、商業主義の行き過ぎを非難する報道が起こっていた。2年連続のリーボック契約選手による優勝、しかもカメラ前での「ポンプ」のパフォーマンスを受け、メディアはこぞって「ブラウンはいくらもらうんだ?」と騒ぎ立てたが、リーボックは金銭ボーナスの存在を否定。ブラウンの代理人も、彼のCM収入は「6桁(10万ドル単位)にはなるが、本業の年棒(推定およそ70万ドル)には遠く及ばない」と明かしている。が、良し悪しは別として、この出来事以降、オールスターゲーム、とりわけスラムダンクコンテストが「新作シューズのPR舞台」という位置づけが決定的なものとなる。 そんなブラウンのダンクから25年。「ポンプ」システムはその後、靴ひもを完全に撤廃した「インスタポンプ」へと進化を遂げ、最近ではカジュアルシューズとしての人気も定着している。究極のフィット感を巡るスポーツブランド同士の争いは、これからも続きそうだ。   (おわり)   写真=中川和泉 (月刊バスケットボール2017年2月号掲載)

PICK UP