月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.01.03

渡邊雄太、2022年初戦は10分6秒出場、4得点でラプターズの勝利に貢献

 渡邊雄太が所属するトロント・ラプターズが、ホームのスコシアバンク・アリーナにニューヨーク・ニックスを迎えて2022年の初戦をプレー。渡邊は10分6秒の出場時間を得、3Pショット1本とフリースロー1本で4得点、リバウンドも2本掴み、アシストも1本記録して120-105の勝利に貢献した。

 


渡邊はベンチからのスタートで、試合への登場は第2Q残り4分。ラプターズはながらく主力のほとんどが欠場する状態が続いていたが、2日前の対ロサンゼルス・クリッパーズ戦を休んだルーキーのスコッティ・バーンズもついにこの試合で復帰。今シーズン初めてほぼ完全な状態で試合に臨むことができた。


その中で渡邊の出番は10番目で、出場時間としても今シーズンの14試合で最も短かったが、試合後のニック・ナースHCは、「彼はよくやっています(He’s doing fine)」と話し、渡邊のプレーぶりを高く評価していた。

 


上記の一言は、こちらから渡邊のフリースローをどう思っているかを質問した際の回答。渡邊は長期欠場から復帰した後、今シーズンを通じて本来らしからぬフリースロー成功率(54.5%)が続いており、この日もダンクを狙ったプレーで得た2本のうち1本を落としていた。


しかしナースHCは、「そうですね、こう言えると思います。次に2本決めれば75%、そういうことじゃないですか(Well, let’s put it this way. If he make his next two, he’ll be 75%, right?)」と笑顔で懸念を一蹴。それよりもナースHCは、ラプターズの目くるめく変動の中で渡邊が総合的に期待に応えていると捉えているようで、以下のコメントを聞く限り、この試合での出場時間の減少を悲観的にとらえる必要はないと思われる。

 

試合後会見でのナースHCは渡邊のプレーを高く評価し、チームとしてもようやく本来の戦力が整っての勝利を素直に喜んでいた

(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)


「我々は今夜、今シーズンやっと初めて十分厚みのあるローテーションで戦えたところです。彼とスビ(ミハイリュク)はさまざまな起用方ができるプレーヤーで、たぶんお気づきだと思いますが、私は彼らのどちらかを使ったら次はもう一方、その次はまた戻るという具合でした。ハーフの前にはファウルトラブルへの対応でも出てもらいました。実際、良くやったと思います。10分間だけでしたけど、良いプレーぶりだったと思っていますよ」
“We kind of got longer rotation tonight for the first time this year. You know I think that he and Svi are utility guys. You probably noticed that I use one of them one time and then the next time around used the other one. And then Yuta got back in at the half with some foul trouble. I actually thought Yuta had a good game tonight. He only had 10 minutes. But I thought he had a good game.”

 

 

 第2Q残り3分51秒にギャリー・トレントJr.と交代する形で最初の出番が回ってきた渡邊は、試合を通じてシューター、エバン・フォーニエ、スイングマンのアレック・バークス、機動力のあるビッグマンのオビ・トッピン、スピードあふれるコンボガードのイマニュエル・クイックリーらと対峙し、ところどころでスタッツに反映されない体を張ったファイトを見せた。コーチの立場からすれば、主力がそろった中ではコートに出るたびにタイプの異なるプレーヤーにタフなディフェンスをし続け、相手のエナジーを削り取るようなファイトやハッスルを提供する点にこそ、渡邊の最大の価値を感じるのかもしれない。


とはいえオフェンスでの貢献は必須の要素ということを、渡邊自身も開幕前から話している。その点では、第4Q終盤に右ウイングから距離のある3Pショットを1本決め、さらにトップからのアグレッシブなドライブでディフェンスを引き付け、ジャスティン・シャンペニーの3Pショットをアシストしたプレーにも意義があった。


第4Qのユニットはスターターが完全にベンチに下がった後だったが、この流れのようなプレーを別のユニットでも安定して発揮していければ、出場時間は今後も徐々に長くなっていくと思われる。その意味で現時点での渡邊にとっては、いま一度ラプターズの環境に慣れること、ディフェンスでこれまで同様の貢献をすること、離脱期間に自ら「さびついた」と表現したショットメークの安定感を本来のレベルに戻すことの3点が、今後数週間の課題になるのではないだろうか。

 

 ラプターズはこの勝利で通算成績16勝17敗。イースタンカンファレンスのプレーオフ争いで現在8位のワシントン・ウィザーズ(18勝18敗)を0.5ゲーム差で追いかけている。次戦は日本時間1月5日(水=北米時間4日[火])にホームで戦うサンアントニオ・スパーズ(14勝21敗)との一戦だ。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



PICK UP