月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2021】運命のマッチアップに敗れた岐阜女、この負けを未来の財産に

 

 運命というのは本当にあるのだろうか?

 

 女子の準々決勝で対戦したのは、昨年大会3回戦と同じカード。岐阜女と昭和学院のマッチアップだった。同じなのは対戦相手だけではない。対戦したコートまでも同じBコートで、ユニフォームの色も昭和学院が淡色(白)、岐阜女が濃色(黒・赤)だったのだ。そして、試合展開も昨年の対戦を彷彿させるようなものとなった。

 

【写真】岐阜女×昭和学院写真ギャラリー(写真15点)をチェック

 

 序盤でリードを取ったのは岐阜女だった。インサイドを支える#7アググア・チカ・チュクウを軸に得点を積み上げ、#15絈野夏海の3Pシュートもヒット。ディフェンスでもマンツーマンとゾーンを併用してじわじわと差を付けていく。対する昭和学院も#9田嶋優希奈がドライブからバスケットカウント、#5石橋花穂の3Pなどで応戦。

 

 

 

 岐阜女は要となる#7チュクウが2Q早々に3ファウルでベンチに下がるアクシデントがあったものの、控えメンバーの踏ん張りもあり、前半を終えて32-28。4点のリードを取っていた。ファウルトラブルとスコアを加味すると、前半は岐阜女のペースだったと言える。

 

 そんな前半の戦いを踏まえて、昭和学院の鈴木親光コーチは「前半は単発なシュートが多くてオフェンスリバウンドに行けず、岐阜女は逆にセカンドチャンスでつないでいました。だから、ハーフタイムでその差が出ていることを指摘しました」と修正を図った。

 

【写真】岐阜女×昭和学院写真ギャラリー(写真15点)をチェック

 

 すると前半で13-15(オフェンスリバウンドは3-2で岐阜女)だったリバウンドは、岐阜女の#7チュクウが戻ったにもかかわらず、後半で16-16(オフェンスリバウンドは7-4で昭和学院)と改善。最大で岐阜女が10点をリードする場面もあったが、昭和学院はセカンドチャンスから#9田嶋の3Pや、控え3年生#7田平真弥がファウルでアグレッシブなディフェンスが制限されている#7チュクウに対して積極的にペイントアタック。

 

 徐々に点差を詰めると、4Q残り8分48秒でついに試合がひっくり返ったのだ(50-51)。同じ相手、同じコート、同じユニフォームで、同じようなシチュエーションで逆転を許した岐阜女の選手たちには、昨年の苦い記憶がフラッシュバックしたかもしれないーー。だからこそ、岐阜女も懸命に攻め立てたが、それでも昭和学院は再逆転を許さない。残り1分46秒の場面には#9田嶋が渾身のジャンパーをヒットし、岐阜女はたまらずタイムアウト。

 

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 タイムアウト明けには#7チュクウのインサイドと#5藤澤夢叶のフリースローで2点差としたものの、直後のオフェンスで流れるようなカッティングから昭和学院#7田平がスコア。この得点が決勝弾となり、運命のマッチアップはまたも逆転勝利という形で昭和学院に軍配が上がった(67-65)。

 

 敗れた岐阜女の安江満夫コーチは「大事なところで3、4本リバウンドを取られてしまいました。こういう展開のゲームは我慢をした方が勝つものです。重たいゲームになってくるのは分かっていたので、ディフェンスとリバウンドのことを指示はしたのですが、それがしっかりとできなかった」とリバウンドの面が勝敗を左右したことを示唆。

 

 

 もちろん、選手も安江コーチも昨年の苦い経験については意識しており、「昨日ミーティングでは昨年の3年生が悔しい思いをしたから、それを晴らすチャンスがこの舞台で巡ってきたという話をしました」(安江コーチ)という。#5藤澤も「去年のことがあったので、全員が『去年の先輩たちの分も勝ち切るぞ』という気持ちで入ったんですけど、まだまだ自分たちの力が足りなかったと思います」と涙を浮かべた。

 

 インターハイではラスト1分で大阪薫英女学院に逆転負け、そしてこの試合でも勝負どころで試合をひっくり返されてしまった。全国大会の上位回戦で勝ち切る難しさを改めて痛感させられたこの1年。安江コーチは「こういう負けも次の財産にしていきたい」と口にしたが、残された1、2年生も、次のステップに進む3年生たちも同じ思いのはずだ。

 

 ぶち当たった壁は分厚く、それを乗り越えるのは容易なことではない。それでも、困難を乗り越えて歴史を紡いできた結果が、今日の岐阜女の強さだ。来年またこの会場で、今度こそはーー。

 

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取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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