月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.12.26

B3首位攻防戦はアウェイのアルティーリ千葉が先勝

 B3新規参入ながらリーグ最高成績を競っている2チーム、長崎ヴェルカ(以下長崎)とアルティーリ千葉(以下A千葉)が、12月25日に初めて直接対決の機会を迎え、アウェイのA千葉が91-83で勝利。両チーム19勝2敗ながら直接の対戦成績結果により、この試合を終えた段階でA千葉がリーグ首位に立った。

 

序盤の接戦から岡田優介の連続スリーでA千葉がペースをつかむ

 

 両チームは天皇杯でも結果を出している。長崎は3次ラウンドでB1のサンロッカーズ渋谷を85-84で撃破。秋田ノーザンハピネッツに対しても、敗れたとはいえ92-102と特徴の一つである高い得点力を示した。A千葉も同じく3次ラウンドまで駒を進め、敗れたのは最終的に6強に残っているB1のアルバルク東京。79-96と17点差はつけられたものの、前半は41-46の5点差だった。


ハイレベルな対戦が期待された中、会場の長崎県立総合体育館には1,866人の観衆が詰めかけた。長崎は前週の対山口ペイトリオッツ戦第2試合に続き、ガードで共同キャプテンの一人である狩俣昌也が欠場(家庭の事情)となり、松本健児リオン、ディクソンJrタリキ、マット・ボンズ、高比良寛治、ハビエル・カーターの5人がスターター。対するA千葉のスターターは杉本 慶、大塚裕土、小林大祐、イバン・ラべネル、ケビン・コッツァーという、レオ・ライオンズ離脱後のいつもの布陣で試合開始となった。


序盤は点の取り合い。高比良が素早いトランジションからユーロステップでゴールにアタックして長崎に先制点をもたらせば、A千葉はすかさず大塚の3Pショットでリードを奪い返す。追いつ追われつの展開からA千葉が一歩先行する状態が続いた後、A千葉は残り1分4秒にジャマール・ソープが速攻でレイアップを流し込んだ時点で23-16と7点のリードを積み上げた。しかし長崎は近藤崚太のフィールドゴールとフリースロー、さらには山本 エドワードの3Pショットで6連続得点を挙げ、第1Q残り20秒でスコアボードは23-22。クォーター最後のポゼッションで、ラべネルの3Pショットがこぼれたところを藤本巧太がスルスルとペイントに切れ込みプットバックを決め、25-22とA千葉3点リードで第2Qに突入することとなった。


この藤本のプットバックと、第2Q早々わずか1分間に岡田優介が成功させた2連続3Pショットが、その後の流れを大きく変える要素となった。岡田の1本目はラべネルのスクリーンを使ってコッツァーからボールをもらい左ウイングから、2本目はベースライン・インバウンドプレーで、これもラべネルのスクリーンを使って右ウイングで大塚のパスを受けてのキャッチ&シュート。「3Pショットは2本連続成功がポリシー」という岡田の持ち味を発揮したパフォーマンスで、A千葉のリードは31-22となり、以降前半終了まで点差は徐々に拡大していった。


長崎はこのクォーターだけで8得点を挙げたカーターを軸に食らいついた。一方のA千葉も大塚が3Pショット3本中2本成功を含む8得点、ラべネルも3Pショット1本を含むフィールドゴール3本すべて成功の7得点とこのクォーターで効率よく得点を重ねた。また、前半終了間際の大事な場面で小林がタリキのドリブルをスティールし、アンスポーツマンライク・ファウルも誘ってフリースローでの得点とポゼッションを稼ぐなど、コートに立つメンバーそれぞれが良い仕事をした。クォーターの始まりと終わりに抜け目ないプレーを遂行したA千葉は、55-40とさらにリードを広げてハーフタイムを迎える。

 

ギブスの奮闘とフルコートプレスで長崎も対抗


第3Qも序盤はA千葉のペースで、最初の2分間に大塚の3Pショット、コッツァーのゴール下、小林のミドルジャンパーとフリースローで8-0のランを展開し、63-40と一気に23点差までリードを広げる。長崎は後半開始から3分間無得点。しかし無抵抗では終わらなかった。


長崎にとっての重苦しい雰囲気を変えた一つの要因は、控えガードの近藤が後半開始3分4秒過ぎに決めた3Pショットと、次のオフェンスで榎田拓真が右コーナーから沈めた鮮やかかつ難度の高いステップバック3Pショット。この6連続得点に加え、榎田のタフなディフェンスも長崎に勢いをもたらした。


息を吹き返した長崎は野口大介、ジェフ・ギブスの3Pショットなどで追い上げる。A千葉のタイムアウト後も厳しいフルコート・プレスディフェンスで2度ターンオーバーを誘い、残り54秒に山本がレイアップを決めた時点で56-67と11点差まで詰めていた。


A千葉は長崎のしぶといオフェンスと厳しいディフェンスに苦しんだ。しかし山本のレイアップ以降をラべネル、藤本、コッツァーのフリースローでしのぎ、このクォーターを16-16のタイで終えたことが、最終的に勝負に大きく影響した。特にコッツァーのフリースローは、A千葉側の厳しいプレッシャーディフェンスが効いて長崎が思うようなオフェンスをできずに終わった後、残り0.3秒で得たもの。コッツァーは2本中1本を外したが、クォーターの中盤約6分間にペースをつかみかけていた長崎としては、与えたくない1点を与えて最終クォーターに入ることとなった。


第3Qに詰め切れなかった長崎だが、地元ファンの熱烈な応援の中、最終クォーターも緊迫感に満ちたディフェンスで点差を徐々に詰めていった。フルコート・プレスは非常に効果的で、特に司令塔の杉本が右足を痛め一時ベンチに下がらざるを得なかった中、A千葉はこのクォーターだけで6つのターンオーバーを犯している。また、藤本が果敢なドリブルでプレスを破り、大塚、ソープとボールをつないで左コーナーで待つシューターの岡田に得点機かという場面があったが、近藤がクリーンブロックで岡田の3Pショットを阻止するなど、あきらめない姿勢が強く表現される好プレーが随所にあった。


フィジカルなオフェンスでこのクォーターだけで11得点を稼いだギブスが、残り55秒にフリースロー2本を沈めた時点で、A千葉のリードは85-83とわずか2点となっていた。しかし大塚、ラべネルのフリースローでA千葉が89-83とリードを6点差にした後、長崎はタイムアウト明けのセットオフェンスで3Pショットを狙った近藤の足がサイドラインを割ってしまう。痛恨のターンオーバーの後、小林の決定的なレイアップで勝負ありとなった。


勝ったA千葉は小林がシーズンハイの22得点でトップスコアラー。ラべネルが18得点に11リバウンド、大塚は3Pショット6本中4本成功の高確率での16得点に加えゲームハイの4スティールが光る。

 

 ソープも10得点に4リバウンドで貢献。杉本は得点こそ少なかったが4アシストがゲームハイだ。一方長崎はギブスの18得点を筆頭に、ボンズが16得点と11リバウンド、近藤も10得点を記録した。

 

 両チームは12月26日に再び長崎県立総合体育館で対戦する。ティップオフは14時だ。2度目の対戦では、お互いに特徴をこれまで以上に良く把握できているだろう。長崎の伊藤拓摩HCとA千葉のアンドレ・レマニスHCが、序盤の主導権の奪い合いにどんな手で臨むか。また初戦では各クォーターの始まりと終わりにA千葉が良い形を作ったが、長崎がどのような対策を立ててくるか、興味深い対戦だ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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