月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.12.19

渡邊雄太豪快ダンク“18 Express”炸裂!! 12得点でラプターズの快勝に貢献

 渡邊雄太(トロント・ラプターズ)の存在感がいよいよ強くなってきた。日本時間12月19日(北米時間18日)にラプターズのホーム、スコシアバンク・アリーナで行われた対ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦で、21分10秒間コートに立った渡邊は、フィールドゴール9本中4本を成功させて12得点、4リバウンド、2スティールを記録して119-100の快勝に貢献した。2桁得点は2試合ぶりで今シーズン3度目。12得点はシーズンハイに並ぶ数値だ。

 

 

 この試合での渡邊は、3Pが4本中2本成功の50%。第4Qには速攻から豪快なワンハンドダンクも叩き込んだ。ダンクのシーンでは、リーグパスのホーム側音声で実況を担当したポール・ジョーンズ氏が、渡邊の背番号18にちなみ「エイティーン・エクスプレス!!」と絶叫。またこのダンクは、この日のNBA全体におけるトップ10プレーの第6位としても紹介された。

 

 しかし目を引いたのは得点だけではなかった。渡邊は4日前の対ブルックリン・ネッツ戦で、今シーズンのUSAバスケットボール最優秀プレーヤーに選ばれたケビン・デュラントのドライビング・レイアップを叩き落とすなど、キャリアハイ・タイの3ブロックを記録したが、この日も第4Qに、驚異のバネでスラムダンカーとして今シーズン話題を集めているゲイリー・ペイトン2世のトマホーク・ダンクをクリーンブロック。強烈な印象を残す「リム・プロテクター」ぶりは、NBAの空中戦でもまったくひ弱さを感じさせないレベルだ。

 

 ディフェンス面での好プレーはこのシーンだけではなく、実は前半にコールされた2つのファウルも、スローリプレーを見れば渡邊のナイスプレーと捉えられるものだった。不運な2つのファウルの最初のシーンは第1Q残り29.1秒のジョナサン・クミンガのダンクに対するブロック。もう一つは第2Q開始早々に、モーゼス・ムーディーのドリブルドライブのコースに立ちはだかったプレー。チャージングをもらったかと思いきや、渡邊のファウルのとしてコールされてしまった。どちらもラプターズが2桁点差のリードを保っていた状況で、ニック・ナースHCはあえてビデオ判定のチャレンジを行わなかったが、実際にチャレンジすれば覆った可能性が高いと思われるプレーだった。

 

 渡邊はこの試合が戦列に復帰してからちょうど10試合目。そのうち3試合で2桁得点を記録しており、自身初のダブルダブル(12月13日の対サクラメント・キングス戦の12得点、10リバウンド)も達成した。2桁得点が8試合しかなかった過去3シーズンからは、あらゆる意味で一段ギアアップした活躍ぶりだ。実際、ここまでのアベレージを見ると、6.7得点、4.0リバウンド、1.1アシスト、0.6スティール、0.7ブロックのいずれもがキャリアハイとなっている。

 

 現時点での課題はシューティングで、フィールドゴール成功率37.3%、3P成功率35.9%、フリースロー成功率52.9%はいずれも昨シーズンを下回っている。長期離脱後の影響が残っていることは否めないものの、本人もシューティングについては心配していないと話しており、この日の確率を見ても、今後多少の波はあるにせよ上昇傾向とは言えるだろう。

 

 試合後ラプターズのニック・ナースHCは、渡邊の得点力についての期待を、この日のパフォーマンス全体を称賛しながら「いい数字ですね。できれば彼には2桁得点を望んでいきたいところです。今日はすべてを少しずつやってのけましたね。ダンクあり、3Pショットあり、リング目前でのブロックありで、あらゆることにかかわっていました(That’s pretty good. I’d like to see him around that double-figure mark if we could. He got a little bit of everything today. Didn’t he get some dunks, drives, 3s, block shot at the rim. He was involved in everything)」と言い表した。

 

 ここまでのラプターズは、渡邊以外にもパスカル・シアカム、OGアヌノビ、ケム・バーチという主力の長期離脱が続いたことで、本来控えに回るはずのプレーヤーがたびたびスターターとしてプレーしてきた。この日はアヌノビが戦列に戻ったが、シアカムが再度欠場。ここまで上記の4人がそろって戦った試合は一度もない。

 

 苦しい台所事情だが、ナースHCは、「うちのベンチは…、皆が戻ってくれば強くなると思っています(I mean I think our bench…, you know hopefully I think our bench gets strengthened with some more scoring as guys come back in to play)」と話し、故障者の復帰後のパワーアップに期待を寄せていた。「これまでスターターに入っていた何人かがベンチに入り、得点源として計算できるようになるでしょうからね. There’s probably you know some…, a lot of guys that have been starting a lot of games that will then go to the bench so hopefully they’ll provide some scoring punch.)」

 

対ウォリアーズ戦後の会見でのナースHC(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 

 渡邊は自身初のダブルダブルを記録した試合の後の会見で、「出場時間さえもらえれば、ある程度の数字は残せる」と自らの成長に対する自信をのぞかせていた。この試合でのプレーぶりもそれを証明する成果。ナースHCの言葉は、今のラプターズにとって渡邊のハイレベルなパフォーマンスが欠かせない要素になっていることを感じさせる。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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