月刊バスケットボール5月号

“学び”を体験する実践学園の小学生向け無料クリニック

 実践学園中の森圭司コーチ主導で、2012年から始まった小学生対象の無料クリニック『JISSEN SPORTS SCHOOL』(以下JSS)。誰でも申し込める1回完結型の練習会で、年に6回ほどの頻度で開催されている。10年目を迎えた現在では、申し込み開始から30分以内に定員60名の枠が埋まるほどの人気ぶり。時には地方から親子で足を運ぶバスケットボールファンもいるそうだ。

 

 

 12月4日、その52回目となるJSSが開催された。実践学園中のコーチ陣やトレーナーが講師となり、同校の卒業生たちがそれをサポートする形で、年齢も競技レベルもバラバラな小学生たちを指導していく。内容は、メンタルトレーニングの基本やファンダメンタルドリル、ストレッチやトレーニングといったコンディショニングなど1回の中でも多岐にわたるが、「楽しくチャレンジするという原点が最優先」と森コーチ。どのメニューも盛り上がり、選手たちは真剣な表情で、ときおり笑顔も見せながら夢中になって取り組んでいた。

 

 

 また、1回完結型のクリニックとあって、近年は毎回異なる個人スキルを1つ取り上げて指導している。そのとき、参加する選手たちを4グループに分け、4つのエリアで異なるドリルに取り組むのがJSSの特長。4つのエリアにはそれぞれ「トレーニング」「動き作り」「ドリブルスキル」「状況判断を磨く」というテーマがあり、時間で区切ってグループごとに4か所を回ることで、1つのスキルに対してさまざまなアプローチができるのだ。人数の多い参加者を丁寧に指導できるとともに、ドリブルに長けたスキルコーチ、コンディショニングに長けたトレーナーなど、各エリアに専門的なスタッフを置けるメリットもある。

 

 

 開催52回目の今回、取り上げられたスキルは「ラテラルステップ」。ドリブルで相手を抜く際、大きく横に移動してディフェンスをかわす技で、Bリーグでも富樫勇樹(千葉)らが多用している。まずは体育館に設置したスクリーンで富樫の動画を見ながらイメージを作り、そこから4グループに分かれて4つのエリアで練習。例えば「ドリブルスキル」エリアでは、正面に置いたパイプ椅子を越すように大きく左右にドリブルをつくなどし、「状況判断を磨く」エリアでは、1対1でディフェンスの動きに応じて抜き方を変える方法などが指導された。

 

 

「ただ反復練習をするだけでなく、必ず判断を伴う練習や、その動きに使う筋肉のトレーニングもあわせて行う。そうしてしっかりと設計を立てた学びを大切にしています」と森コーチ。そして「“学ぶ”という経験を、バスケットはもちろん勉強などにも生かしてほしい」とクリニックの狙いを語る。

 

 クリニックの最後には、JSSをサポートする企業やプロクラブから提供されたタオルやTシャツなどのお土産が配られ、笑顔で集合写真を撮影。楽しみながら“学び”を体験した選手たちは、満足そうな表情で会場を後にした。

 

 

文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)



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