月刊バスケットボール6月号

新生・男子日本代表の初陣(vs中国)は序盤の差が響き16点差で完敗

 11月27日、「FIBA バスケットボールワールドカップ 2023 アジア地区予選 Window1」(開催地:ゼビオアリーナ仙台)の中国戦を迎えた男子日本代表。日本はフィリピンとともに開催地としてすでにワールドカップへの出場が決定しているが、トム・ホーバス氏がヘッドコーチに就任してから初めての公式戦、なおかつ代表チームとしては新鮮なメンバーが加わった中での初陣とあって、新生日本代表がどのような戦いを見せるのか注目の一戦となった。

 

相手の圧倒的な高さに苦しむも

セカンドメンバーの活躍で反撃

 

 

 日本のスターターは#2富樫勇樹、#6比江島慎、#32シェーファー アヴィ幸樹、#88張本天傑という東京2020オリンピックメンバーに、#11アキ・チェンバースを加えた5人。一方の中国は、#4ジャオ・ジーウェイ、#6グォ・アイルン、#10ジョウ・ポン、#15ジョウ・チー、#21フー・ジンチュウという5人をオーダーしてきた。スタメン平均身長は、日本が190.6cmなのに対して中国が201.0cm。選手たちがコートにずらりと並ぶと、そのサイズ差は歴然だった。中国のエースは25歳の#15ジョウ(212cm)。2016年のNBAドラフトでヒューストン・ロケッツから全体43位指名された経歴を持ち、2016年のリオオリンピックや2019年のFIBAワールドカップなど国際大会経験も豊富な逸材だ。

 

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 振り返れば、勝負の分かれ目はゲームの出だしだった。立ち上がりからその高さの優位を存分に生かしてきたのは中国。開始早々、#15ジョウがセルフリバウンドから先制すると、その後もリバウンドを掌握してセカンドチャンスから得点を重ねていく。対する日本は開始2分半でたまらずタイムアウトを請求し、その約30秒後に#88張本がジャンプシュートでチーム最初の得点を挙げたものの、その後は再びオフェンスが沈黙。中国のプレッシャーディフェンスに押され、相手がスイッチしたときにもなかなかスピードのミスマッチを突くことができず、積極的に狙った3Pシュートもことごとくリングに弾かれる。逆に中国は、日本のお株を奪うような速攻から#21フーが豪快なダンクシュートを決めるなど、ゲームの序盤戦を完全に支配していた。

 

 流れを変えたい日本は#1齋藤拓実、#19西田優大、#51古川孝敏らをコートに投入。ハードなディフェンスを仕掛けて相手の得点を停滞させ、アップテンポなバスケットを仕掛けると、#3ルーク・エヴァンスがオフェンスリバウンドからフリースローを決めて4-19。そこから日本は動きが良くなり、女子日本代表を彷彿させるようなテンポの良いパス回しから#32シェーファーがバスケットカウントを獲得。さらに#19西田がこの試合チーム最初となる3Pシュートを沈め、11-27で最初のQを終えた。

 

 

 良い形で2Qにつなげた日本は、開始2分の間に#19西田、#51古川が3Pシュートを決めて18‐29と追い上げ、中国にタイムアウトを取らせることに成功する。だが中国も落ち着いて#21フーが得点。さらに#15ジョウがダンクシュート、日本のミスから速攻を決めるなど、中国はインサイド陣が確実に得点を重ねて再び引き離しにかかった。

 

 選手交代で流れを変えたい日本。#15ジョウの強烈なアリウープダンクにもすぐさま#11チェンバースが3Pシュートで返すなど集中を切らさず、#3エヴァンスの速攻や#6比江島のドライブが決まる。しかしディフェンスではファウルがかさみ、相手にフリースローを許してなかなか点差を縮められない。前半終盤には#15ジョウに連続得点を許し、29-45と大きなビハインドを背負って前半を折り返した。

 

#19西田や#1齋藤ら若手が奮闘するも

リバウンドを掌握され差を縮められず

 

 大事な3Qの立ち上がり、日本は開始早々に#6比江島が4ファウルでベンチへ。ゾーンディフェンスで中を固めて守ろうとするものの、高さのある中国#15ジョウらを止められない。#15ジョウは前半の先制点で早くも自身の得点を20点台に乗せ、得点とリバウンドを量産する。日本は開始3分たって、#2富樫のフリースローでようやく後半初得点。ここから反撃を開始したいところだったが、#19西田の速攻は相手の高さに阻まれて決め切れず、#88張本のシュートもブロックされる。

 

 ただ、中国はエースの#15ジョウが右足を負傷して退場した影響もあり、攻撃リズムがやや停滞。その間、日本はゾーンディフェンスで我慢し、#1齋藤がディフェンスを引き付けてノーマークで#10竹内の得点を演出。さらに#19西田が先ほど決め切れなかった速攻を今度はきっちりとねじ込み、#6グォの3Pにもすぐさま3Pを決め返すなど存在感を放つ。それでも20点以上離れた点差はなかなか縮まらず、40-64へ最終Qへ。

 

 4Q、大きく24点差を追い掛ける日本。#21藤井祐眞が3Pシュートを決め、#77岡田侑大のアシストから#3エヴァンスがフローター、相手のミスから速攻に走って#3エヴァンスがバスケットカウントを決めるなど、徐々に良いプレーが出始める。対する中国はベンチメンバーを積極的に起用し、215cm以外の#55ハン・ドゥジン以外はサイズを落として、#6グォといったアウトサイド陣を軸に前半とはまた違った戦いを仕掛けてきた。日本は#10竹内のゴール下シュートやフリースローなどでじわじわと差を詰めていくが、要所でシュートを決める中国に手こずり、爆発的な追い上げムードとはならない。終盤は#2富樫が連続得点でチームを引っ張るが、大きく開いた差を埋めるには至らず、63-79で試合終了となった。

 

 

 出だしから相手に流れを奪われ、その差が最後まで響いて苦い試合内容となった日本代表。トム・ホーバスHCも試合後の会見で「出だしが大きかったと思います。スタッツを見ると相手の方がオフェンスリバウンドを取ってペイント内の得点も多く、うちの3Pシュートの確率は上がらなかった。16点差で負けたことが不思議で、本来ならば40点差くらいの試合」と振り返る。ただ、多くの課題を挙げながらも「ディフェンスは良かったですし、選手たちはエネルギーを持って一生懸命にプレーしていました」と、ポジティブな面にも目を向けていた。

 

 試合前から予想されていたことだが、日本と中国の戦い方は対照的だった。高さの利を存分に生かした中国は2Pの得点が28/56本に対し、日本は14/30本。リバウンド数では中国が53本に対して日本が34本と、大きく水をあけられた。また、サイズで劣る日本だからこそ積極的に3Pシュートを狙っていったが、7/35本で確率は20.0%に終わった(中国は5/17本で29.4%)。3Pに関しては「1Qでは3Pが1/13本でしたが、リズムが良くない打ち方をしていました。2Q以降は入らなかったですが、リズムは良かったと思います」と分析するホーバスHC。

 

 確かに完敗ではあったが、新指揮官就任から急ピッチにチームの強化を図ってきた中、積極的な3Pシュートや動きの中でのペイントアタック、執拗なディフェンスなど、ホーバスHCの求めるバスケットの方向性は大いに示した一戦だった。また、新鮮な顔ぶれが積極性を見せて存在感を見せたことも今後につながる好材料だろう。チーム最年少の22歳で、この試合11得点を挙げた#19西田は「自分の仕事は3Pシュートとアグレッシブなディフェンスで、そこは体現できたと思います」と手応えをコメント。また、バックアップガードとして流れを変えた#1齋藤(4得点、3アシスト)は「やりたいバスケットの精度がまだまだ低いということが再認識できましたが、個人的には前日も含めて特に緊張することなく、ペイントアタックからのキックアウトなど、トムHCのやりたいバスケットを少し体現できた部分もありました」と話していた。

 

 

 キャプテンの#2富樫が試合後のインタビューで「パリオリンピックに向けた第1歩。ここから良いチームを作っていきたいと思います」と語っていたとおり、まだまだチームは始まったばかりであり、これから遂行力を高めていけばもっと違った勝負ができるはず。ホーバスHCは「この経験が勉強にならなければ良くありません。我々のやりたいオフェンスは完成まで時間がかかりますが、明日の試合では今日よりも直したい。あとはリバウンドが課題なのは当たり前ですし、ローテーションの遅さなど、細かなところも少しずつ直したいです」と翌日の中国戦に向け力強く意気込みを話していた。

 

 明日の中国戦は、同じゼビオアリーナ仙台を舞台に18時35分ティップオフ。ロスターは多少入れ替わる予定で、新たな戦力の台頭も見どころとなる。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/石塚康隆



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