月刊バスケットボール5月号

岸本隆一(琉球ゴールデンキングス) - FIBAワールドカップ2023アジア地区予選Window1男子日本代表候補名鑑

©JBA

岸本隆一(31) PG 176cm/75kg 琉球ゴールデンキングス(大東文化大学/沖縄県)

キースタッツ(Bリーグ): G=14(0) M=19:42 P=9.5 FG%=42.5% 3P%=39.5% FT%=100.0% R=1.4 A=2.6 TO=0.6 S=0.57 B=0.00

G=出場試合数(先発回数) MIN=出場時間 P=得点 FG%=フィールドゴール成功率 3FG%=3P成功率 FT%=フリースロー成功率 R=リバウンド数 A=アシスト TO=ターンオーバー S=スティール B=ブロック


「あまり代表には縁がなかったタイプなんですけど、今回こうして選んでいただいて、本当にうれしく思っていますし、身の引き締まる思いです」


2年後に沖縄アリーナでグループラウンドを行うFIBAワールドカップ2023の、アジア地区予選に臨む日本代表合宿中の会見で、岸本隆一は候補選出の感想を問われこう答えた。ごく自然に出てきた素直な表現であると同時に、心底本音に違いない。


こんな思いの後ろには、琉球ゴールデンキングスのチームメイトや、チームを支える関係者への感謝の思いがあるだろう。バスケットボールが盛んな、生まれ故郷の沖縄に住む人々の期待に応えたいという思いももちろん強いはずだ。


10月27日に沖縄アリーナで行われた対広島ドラゴンフライズ戦には、トム・ホーバスHCが視察に訪れ、岸本と今村佳太の名前を挙げて高く評価した。そんな折でもあり、試合後の会見でも代表選出の可能性についての質問がたびたび岸本に浴びせられた。

 

 その中の一社として、チームの仲間たちとどんな話をしているのかを岸本に問いかけると、「深い話をチームメイトとはしていません」と答え、続けて代表への思いを話してくれた。「現実的なところでいうと、代表もどう強くなっていくかがやっぱり大事です。それを考えたときに、試合経験がないとしても若手が台頭していかなきゃいけないというのを、僕だけじゃなくみんなが感じていると思うんですよね。その中でチームとしての役割を理解して、そこに対してベストを尽くしていける人だけが、代表候補というスタートラインにチャレンジできる資格があると思います」


岸本は今回招集されたポイントガード6人の中で最年長の年齢だ。その自覚があるからこそ、「是が非でも代表入り」といったストレートな表現をする代わりに、「まずチーム(キングス)にとって何がベストなのかを考えて、そこをプレーで示すことでつながっていく部分。良い意味であまり意識せず、今あることにベストを尽くしていきたいです」と自らの意欲を表現している。


沖縄県出身の岸本には、特に今回の代表だからこそ、非常に強い思い入れがあるはずだ。ただ、それが自分の力でコントロールできる類いのものではないことを理解している。「こう言うとちょっと投げやりのようにも聞こえてしまうかもしれませんが、運みたいなものもあると思います…。いろんな要素があると思うので、起こるべきことは起こる、タイミングの良し悪しだと捉えて、今ある状況にベストを尽くして楽しんでいけたらなと思います」


実力的には十分な可能性がある。岸本と言えば「ココナッツスリー」という言葉が連想されるように、3P成功率は40%台に迫り、平均得点も2桁に届きそうなレベルだ。また、プレーメイカーとして非常に高く評価できるのは、ターンオーバー数を1分間当たりに換算してみると、0.03で今回の6人のポイントガード中での最小値になる点だ。フリースロー成功率が唯一100%なのも、アテンプトが11本と少ないとはいえプラスだろう。キングスのここまでの14試合すべてでベンチからスタートし、激しさとともに堅実さが求められる役どころをこなしてきている岸本は、チャンスが来るたびに効率よく結果につなげているのだ。


ディフェンスでは非常に激しくフィジカルにプレッシャーをかけられる。本人が近年の成長のポイントと感じているのもディフェンスだという。「Bリーグに入ってからですかね。やっぱりディフェンスの意識は、キャリアの中で相当僕自身も上がってきたかなと思います」


Bリーグのレベル自体がグングン上昇している中で、今シーズンのキングスは、チームメイトの誰が代表に選ばれてもおかしくないほど素晴らしいバスケットボールを展開中だ(14試合消化時点までで11勝3敗、西地区首位)。岸本はその主役の一人として毎試合貢献をもたらしてきた。


10月末の時点では、自分自身を含め誰に声がかかるか、あるいは誰にも声がかからないのかわからない、微妙な緊張感があった。一丸となってBリーグ入り後初のチャンピオンシップ獲得を目指すチームにあって、その目標をブレさせずにチームも自身も前進していきたいという強さや優しさのようなものが言葉や表情にあふれていた。

 

 今こうして候補の一人に名を連ねたからには、すべての人々が誇りに思える岸本隆一の姿で期待に応えたい。あれから約3週間が過ぎた11月19日の冒頭の言葉からは、そんな気持ちがいっそう強く、ひしひしとと伝わってくる。

 

11月19日に行われた合宿中のズーム会見で、心境を語る岸本(©JBA)

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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