月刊バスケットボール5月号

富樫勇樹(千葉ジェッツ) - FIBAワールドカップ2023アジア地区予選Window1男子日本代表候補名鑑


©JBA

富樫勇樹(28) PG 167cm/65kg 千葉ジェッツ(モントロス・クリスチャン高校/新潟県) 東京2020オリンピック出場

キースタッツ(Bリーグ): G=14(14) M=25:55 P=13.0 FG%=37.3% 3P%=30.1% FT%=86.2% R=1.1 A=5.9 TO=2.1 S=0.86 B=0.07

G=出場試合数(先発回数) MIN=出場時間 P=得点 FG%=フィールドゴール成功率 3FG%=3P成功率 FT%=フリースロー成功率 R=リバウンド数 A=アシスト TO=ターンオーバー S=スティール B=ブロック


富樫が新生男子日本代表にもたらすものは非常に多い。上記のスタッツの中で、平均13.0得点はバックコートの12人中トップであり、アシストも2番目(B1全体の7位)という高い数値だ。また、フィールドゴール・アテンプト(169本)と3Pアテンプト(103本)も24人中最も多い。成功率は突出して高くはないが決して悪くない。放っておけば直接ゴールに放り込まれ、下手に近づけばフロアバランスのスキをついて電撃的なクイックネスでペイントアタックに転じられてしまうというプレッシャーを、常に相手に感じさせることができる。

 

 こうしたテクニック面に加え、これまでの代表歴が何らかモノをいうときが来るだろう。2019年に中国で開催された前回のワールドカップ本番の舞台には、富樫は予選期間中の故障離脱により立つことができなかった。しかしその前年、4連敗の泥沼から、千葉ポートアリーナでオーストラリア代表を倒した歓喜の勝利を経て、その後8連勝で本大会出場権をつかみ取ったアジア地区予選の経過を、富樫は当事者として体験している。

 

 あのとき逃した最高峰の舞台は、東京2020オリンピック代表選出で取り返した。世界のトップだけが集うその舞台では、3試合で平均18.8分の出場時間を得て平均6.3得点、フィールドゴール成功率41.2%(3P成功率は40.0%)、1.7リバウンド、1.7アシストのアベレージ。どの試合でも、ベンチから登場するたびに良い流れをもたらすプレーを見せた。

 

東京2020オリンピックの対スペイン戦での富樫(写真/©fiba.basketball)

 

 FIBAアジアカップ2021にも出場し、中国代表と2度対戦しているということももう一つのポイントだ。今回最終ロスターに残れば、相手方も富樫のスカウティングはできているだろうが、富樫の方もそれは同じことだ。

 

 特に2度目の対戦の第4Q半ば、80-73とリードしながら、終盤相手のディフェンスの変化に対応できず4-17のランを食らって逆転負けを喫したそのコートに立っていたことを、きっと良い意味で富樫は胸の片隅にとどめているはずだ。「あらたにトムさんに代表に選んでもらって、すごく光栄です。あたらしいメンバーも集まり、最初の中国との2試合がすごく楽しみです」と話す表情は柔らかだったが、その瞳には闘志がみなぎっているように感じられた。

 

文=柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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