月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.11.19

渡邊雄太(ラプターズ)が心境を吐露 - 「この数週間はストレスをため込んでいます」

 トロント・ラプターズの渡邊雄太が、日本時間11月19日(北米時間18日)に遠征先のソルトレイク・シティ(ユタ州)で行われた練習時にメディアの囲み取材に対応。欠場の原因となっているケガの詳細と復帰に向けた思いを語った。その映像はトロント・ラプターズのチーム公式サイトで公開されている。以下はそのやりとりを和訳してまとめたQ&Aだ。

 

最初はアキレス腱かと思った


――ケガへの対処でストレスを感じているでしょうね。

 

 もう、本当に困ってしまっています。足の痛みもあるのですが、何よりも皆がバスケットボールをしているのを見るのがつらくて。僕がやりたくてしかたがないことなのに見ているだけなんて…。正直、ストレスが溜まってしかたありません。


――なぜそう感じてしまうんでしょうか?


やっぱりバスケが大好きなんですよね。

 

――最初に診断を聞いたときは、今頃までには復帰できているはずだったのでしょうか?


そうですね、最初は3週間くらいだと見ていました。でもそのあとぶり返してしまって、もう1ヵ月以上ですよね。この数週間は本当にストレスをため込んでいます。


――練習で何が起きたんですか? ニック・ナースHCはあの翌日、実際よりも悪い状況なのではないかと心配そうに話していましたが。


5対5をやっていてレイアップにいったんです。誰とも接触も何もなくて、何かがプチっといった感じがありました。ヤバいと思いましたよ。アキレス腱のあたりだったので。コーチもメディカルスタッフも同じ見方で、アキレス腱をやったのかと思って、これはマズいと思いました。


――ぶり返しが来たわけですよね。そのときはどんな様子だったのですか?


同じような状態でした。5対5をやっていて切れ込んだときに、同じ部位で同じことが起きたんです。バスケットボールをしていれば、こういったことはつきものですけどね…。

 

――2度目のときも最初と同じように感じたのですか?


これは前回と同じだなと思って、最初のときほど焦るようなことはありませんでした。でも残念な気持ちでしたね。


――メディカルスタッフはどんなことを言っていたのでしょうか? 今は何なら積極的にできる状態なのですか?


ワークアウトは頑張っていて、コンタクト系以外はすべてできる状態です。前進できていますから、間もなく戻れるとは思っているんですが…。彼らはこういった故障を長年経験してきているので、対処法はわかっていると言っているし、僕は彼らを信用しています。すごく良くやってくれていますよ。僕の方はしっかりワークアウトして治療を受けて、やれることをしっかりやっていくだけです。


――復帰のゴーサインが得られたら、どんな形でチームに貢献したいですか?

 

 活力を吹き込みたいです。僕は昨シーズンからそれをやってきましたからね。僕たちはNBAのトップで戦える力があると思っています。ベンチから出て行って元気いっぱいのプレーで盛り上げたいです。それがチームの力になるでしょう。


――パスカル・シアカムが10試合欠場し、クリス・ブーシェイやケム・バーチも離脱しました。本来ならその分出場機会を得られる可能性もあったわけですが、そうしたこともイライラにつながっているのでしょうか?

 

 それは間違いありませんね…。今はすべてがもどかしくてしかたがありません。

 

写真をクリックするとラプターズ公式サイトのQ&A映像が見られます

 

全力疾走の1年、体が休みを欲したか


いまだ復帰時期が未定の渡邊は、いらだちを覚えながらもこの欠場を前向きな休暇と捉えようとしていることも明かした。振り返ればこの1年間はそれまでにないほど緊張した日々の連続で、精神的にも身体的にも大きな負荷がかかった1年だったに違いない。


昨シーズンの今頃は、トレーニングキャンプで手にしたツーウェイ契約のプレーヤーで、NBAでプレーしていたとはいえ先行きの展望が見えにくい状態だった。今年に入ってからは故障欠場もあり、ようやく本来の持ち味をコート上で出せるようになってきたのはオールスター・ブレイク前後から。


うれしい知らせは4月に手にした念願の本契約獲得。チーム・オプション付きながら、努力と実力が認められての成果だった。また、オフに入ると日本代表ではキャプテンとして東京2020オリンピックでプレー。世界でもトップクラスの強豪国を相手に、自らも世界のトップレベルにあることを示すパフォーマンスを見せた。

 

 それから約2ヵ月もたたぬうちに、2021-22シーズンのトレーニングキャンプが始まる。チーム・オプションをクリアして開幕ロスター入りを目指す立場だった渡邊は、プレシーズンゲーム初戦で10得点(フィールドゴール4/7、3Pショット2/2)、7リバウンド(うちオフェンス・リバウンド2本)、2アシスト、2ブロック、1スティールを記録し、成長ぶりを印象付けた。


その直後、渡邊が話しているとおりの一連の出来事が起こってしまった。ノンストップで走り続けた後の試練。渡邊は「夏場は本当に忙しく、オリンピックなどたくさんの試合をこなしました。オリンピック後も、(今シーズンの)契約の保障がなかったのでものすごく頑張りましたし、かなり追い込んだ夏になりました。だからケガしたとき、これは僕の体が必要としている休養を取れということなのだろうとも思いました」とこのQ&Aを締めくくっている。

 

今は体を休めるときと受け止め、渡邊は前を向いていた(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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