月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.11.11

川崎に惜敗の新潟・納見悠仁、司令塔としての更なる進化を目指して

 

 11月10日の水曜ナイトゲームで川崎ブレイブサンダースと対戦した新潟アルビレックスBB。この試合はラストポゼッションまで勝敗が分からないクロスゲームを演じたが、81-82で敗れた。

 

好勝負を多々演じるも

勝ち切るには至らず

 

 新潟にとっては今季10敗目、第2節の三遠ネオフェニックスとのゲーム2から9連敗という苦しい状況だ。この川崎戦のような惜敗はこれまでにも何度もあった。黒星を喫した10試合のうち実に7試合が1桁点差、うち5試合は1ポゼッション差(3点差以内)なのである。

 

 その中には西地区首位の琉球ゴールデンキングス、同3位のシーホース三河、東地区首位のアルバルク東京といった強豪も含まれており、勝率ほどの力の差はないと言える。

 

 この試合でも、序盤こそ川崎に遅れをとったが、納見悠仁とロスコ・アレンを起点に2Qで同点とすると、後半は控えビッグマンのジェフ・エアーズがリバウンドで存在感を放つ。4Q残り37.7秒にはコービー・パラスがルーズボール争いを制し、エアーズのダンクにつなげて1点のリードを作った。続く17.7秒に川崎のファウルゲームで納見がフリースローを獲得した時点では、新潟が勝利をほぼ手中に収めていたと言ってもいいだろう。

 

 しかし、川崎のラストポゼッションで運は新潟を突き放す。アレンがインバウンドで痛恨のファウルを犯してしまったのだ。4Q残り2分を切った場面でのこのファウルは、アンスポーツマンライクファウルと判定されてしまった。ただ、シューターのパブロ・アギラールは2本中1本を沈めるのみで81-80。まだ新潟がリードしている。

 

ファジーカスはこの試合23得点、10リバウンド、9アシストとほぼトリプルダブルの大活躍だった

 

 しかし、続く川崎のオフェンスでニック・ファジーカスが左コーナー手前からショートジャンパーをヒットし逆転。新潟もアレンに再逆転の望みを託したが、最終的にはファジーカスの一本が決勝弾となり、わずか1点差で敗れたのである。

 

 新潟にとって痛かったのは勝負どころのターンオーバー。特に川崎がオールコートで当たってきた4Qに6本を記録してしまう。試合全体では16本だったため、実に4割近くを4Qだけで犯してしまったことになる。

 

 「我慢強く戦えたと思いますが、ターンオーバーが多かったり、ディフェンスの決まりごとなどを遂行できていない時間帯がたくさんありました。それで最後は勝ち切れなかったと思います」と平岡富士貴HC。戦える実感は選手たちも持っているはずだが、この試合もしかり、勝負どころのミスを減らさないことには白星という結果を持ち帰ることは難しい。

 

 

司令塔・納見が直面する課題は

チーム浮上のカギでもある

 

 特に司令塔の納見は4Qの3つを含む7つのターンオーバー。17得点とシーズンハイを記録するアグレッシブな姿勢も見せたが、彼にとっても大きな課題を突き付けられた試合となった。

 

「今日はチームとしても個人としても絶対に勝ちたかった試合なので、この負け方はやってはいけない負け方だったと思います。まずは連敗を止めないといけないという中で、今日は自分のシュートが入っていましたが、ミスも多かった。それを一つでも少なくできていれば、この1点はひっくり返ったと思います。勝ちゲームの流れは自分たちにあったので、そこを相手に渡してしまったのは自分たちの弱さであり、自分自身の弱さ。そこは絶対に直さないといけません」と納見。

 

 今季、キャリア最高のパフォーマンスを発揮する新潟の司令塔がもう一皮剥けるためには、いかに要所のミスを減らすかが大きなテーマとなる。

 

 平岡HCもそれを感じており、納見について「今年彼とずっと話しているのは『1点差、2点差でも勝てるようになれば、もっと成長できるんじゃないのか?』ということです。彼のターンオーバーが各試合、大事な時間帯で起きてしまっています。これを減らすには周りの協力も必要だと思いますし、彼のこれからの努力も必要です。ああいうミスが減ってくれば(納見は)もっと成長できると思うので、今日の試合に関しても私としてはまだ合格点は出せない」と厳しいコメント。

 

 ただ、同時に「ターンオーバーが減って、1点差でもチームを勝たせられるようなガードになってくれたらもっと彼の力は発揮されると思いますし、そういう選手になってもらいたい」とも話しており、納見の実力を信じているからこその厳しい評価であることは確かだ。

 

 綿貫瞬がケガで離脱している新潟にとって、同じPGの納見が担う責任は大きい。この試合では、敗戦が決まってからタオルで顔を覆いコートを後にする姿が印象的だったが、それは彼の責任感を表す象徴的な瞬間だったようにも感じられる。

 

「長い時間使ってもらっている中で、できている部分も感じていますが、今日の試合ではプレッシャーをかけられた場面などでパスターゲットを探したときにミスが出ていました。川崎や千葉などのプレッシャーを強くかけてくるチームはたくさんあるので、それに負けない強さは今後絶対に必要になってきます。上にいくには(そういったチームに勝つことは)避けてはとおれない部分なので、プレッシャーリリースのところはやっていかなければいけません。逆にそこを乗り越えられれば、もうワンステップ上にいけると思っている」と納見。

 

 新潟に上位陣ともわたり合える力があることは、スコアが証明している。そこからもう一歩先へ進み、チームとして浮上していくためには、納見のステップアップは必要不可欠だ。

 

 次節の相手は昨季王者の千葉ジェッツ。チームとしても、納見としても課題克服は1日、2日では難しいもの。ただ、この川崎戦を踏まえて新潟の、特に勝負どころの納見の試合運びには注目したいところだ。

 

写真/©︎B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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