月刊バスケットボール6月号

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2021.11.10

ケイン・ロバーツ(ストーニー・ブルック大学)、NCAAディビジョンI公式戦初登場

 昨シーズンB2のアースフレンズ東京Zでプレーし、今春ストーニー・ブルック大学への進学を発表したケイン・ロバーツが、日本時間11月10日(北米時間9日)に行われた同大の2021-22シーズン公式戦初戦でNCAAディビジョンIデビューを果たした。この試合はノンカンファレンスの公式戦で、アトランティック10カンファレンスのジョージ・メイソン大学を相手に、同大がホームアリーナとするイーグルバンク・アリーナ(バージニア州フェアファックス)で行われた。

 

 ストーニー・ブルック大は52-74とやや点差をつけられての黒星となった。しかしロバーツは後半残り2分33秒にコートに登場し、4,558人の観衆が見守る中、無得点ながら試合終了までコートに残ってプレーしている。


アメリカ・イースト・カンファレンスに所属するストーニー・ブルック大は、シーウルブズ(直訳は「海の狼」だが、海洋生物や海賊など、海に暮らす凶暴な存在を総じて言い表す言葉)をニックネームとし、ニューヨーク・ニックスが本拠とするマディソン・スクエア・ガーデンから約70km東にあるストーニー・ブルックという町にキャンパスを構えている。昨シーズンは7勝19敗(カンファレンスでは7勝9敗で10チーム中7位)で、ポストシーズンの大会に出場することはできなかったが、今シーズンは他校からの有力なトランスファーとロバーツをはじめとしたフレッシュマンの加入もあり、カンファレンスのプレシーズン展望で堂々1位と予想されている。

 

 中心となるのは、1年間マイアミ大学に転籍して今シーズン再び“古巣”にカムバックし、プレシーズンのオールカンファレンス・チームに選ばれたガードのイライジャ・オラニーイ。初戦ではオラニーイが8得点と今一つ振るわなかったことも敗因の一つだった。ただしチームとしての課題は、個々の技量以上にそのつながりにあるのかもしれない。

 

 新戦力が多い今シーズンのチームについて、ジーノ・フォードHCは9月のインタビューで、「何がチャレンジかといえばケミストリーですよ。皆をうまくプレーさせるということです」と課題を挙げていた。「夏場とプレシーズンの時期で、お互いに慣れていきたいですね」と話したフォードHCの思いを反映する数字として、この試合でのアシスト2本という数字は少なすぎる(個人としてではなくチームで2本だけだった)。これは相手がミッドメジャーの有力校の一つであったことを差し引いても、次戦に向けぜひとも改善したいところに違いない。ディフェンス面でも1対1からのアタック、ポストアップとペイントで次々と得点を許し、相手はフィールドゴール成功率が52.5%(2Pショットに限れば69.4%)という高確率。これも個々の技量の差というよりは連係に問題がありそうだ。


ただしこうした課題を初戦で浮き上がらせたことと、ターンオーバー(12本)ではジョージ・メイソン大(14本)よりも少なかったという点は、この試合で持ち帰ることができるポジティブな側面だろう。


ロバーツとしても、コートに立ったこと自体に価値がある。思い起こせば、昨年10月2日のB2開幕戦ではロバーツはコートに立つこともできなかったところから始まっていた。しかし翌日行われた開幕第2戦で7得点、2リバウンド、1スティールを記録し、目の覚めるようなティップイン・ダンクを叩き込んで存在感を印象づけると、最終的には56試合に出場し、そのうち12試合でスターターを務めるまでに成長したのだ。NCAAでの初戦黒星は苦い体験かもしれないが、この日チームとして持ち帰ったであろう課題にしっかり向き合えば、次戦以降でも出場機会を望めるだろう。


ところでその次戦には、ファンにとっては見逃せないビッグゲームが組まれている。日本時間11月19日(金=北米時間18日[木])のシーズン第2戦はビッグ12カンファレンスの名門カンザス大が相手。プレシーズンの全米ランキングで3位に入っている強豪中の強豪で、ストーニー・ブルック大と同じく日本時間11月10日に戦ったシーズン開幕戦で、ビッグ10カンファレンスの名門として知られるミシガン州立大学を87-74で破っている。

 

 アウェイのアレン・フィールドハウス(カンザス州ローレンス)に乗り込んでのこのシーズン第2戦でストーニー・ブルック大がどのようなプレーを見せるか。アップセットの可能性は簡単には論じられないが、ストーニー・ブルック大はこの試合までに9日間のギャップを作っている(カンザス大は日本時間13日[北米時間12日]にターレントン州立大学と対戦)。フォードHCはその間に様々な準備をすることができるはずだ。その中でロバーツに活躍の機会が巡ってくるとすれば、結果のいかんによらず、初戦以上に貴重な体験になることは間違いない。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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