月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2021.10.15

10.16(土)新潟vsアイシン - 第23回Wリーグ開幕戦展望

 女子バスケットボールのトップリーグ、Wリーグ2021-22シーズンが、10月16日(土)に阿賀野市笹神体育館で行われる新潟アルビレックスBBラビッツ対アイシンウイングスの一戦で火ぶたを切る。

 

 今シーズンのWリーグは、河瀨直美新会長の下でのあらたなスタート。東京2020オリンピックで女子日本代表が銀メダルを獲得した後、その過程で日本全体が共有した女子バスケットボールの魅力を、一過性のもので終わらせず今後の発展につなげる意味で重要なシーズンだ。

 

 この好機に、Wリーグには多くの楽しみな話題がある。中でも最も広く関心を集めるのは、やはりオリンピック銀メダル獲得、FIBA女子アジアカップ5連覇を成し遂げた日本代表メンバーたちの活躍だろう。しかしそれだけではなく、各チームで日本代表入りをねらう有力プレーヤーたちの奮起や、新規参入のプレステージ・インターナショナルアランマーレがどのような戦いを見せるかなど見どころは多岐にわたる。トヨタ自動車アンテロープスの連覇はなるか、Wリーグ最長身の193cmで、昨年12月に右ヒザ前十字靭帯を断裂し戦列を離れていたビッグセンターの渡嘉敷来夢は開幕戦で復帰の見込みだが、果たしてどんなプレーを見せてくれるか。まさに話題が尽きないシーズンとなりそうだ。

 

インサイド、アウトサイドで決めきりたい新潟

 

 その中で開幕初戦となる新潟対アイシン戦の見どころはどんなものか。この試合にも、今後の女子バスケットボールの発展を占ういくつかのポイントがありそうだ。

 

 平均身長169.2cmの新潟はリーグの13チーム中2番目に小柄で、180cm以上の登録プレーヤーがいない唯一のチームだ。9月に群馬県高崎市で開催されたオータムカップ2021in高崎では、鶴屋百貨店に86-80で勝利した後、Wリーグチームと対戦した2試合には黒星を喫していた。(日立ハイテククーガーズに61-99、デンソーアイリスに66-82)。

 

 高さがない分、新潟はペイントタッチの回数、またペイントにアタックした際のフィニッシュを決めきれるかどうかが、優位な展開に持ち込む一つのポイント。また、#1宮坂桃菜、#14津田史穂莉、#33菅原絵梨奈らの3Pショットがその中でどれだけ決まるかも、オフェンス面でのカギだろう。昨シーズンは3P成功率が24.8%で、これは下から2番目の数字。ここが上昇すればこの試合だけでなくシーズン全体の勝敗も変わってくるはすだ。

 

 ディフェンスでは、高い位置からのボールプレッシャーが大きな武器。また、そのプレッシャーで相手のボールハンドラーに苦し紛れのパスを出させたところで、キャプテンの#7北川直美らがスティールやターンオーバーをねらってくる。オータムカップでは、身長170cmのルーキーガード、河村美侑らがプレスで相手からボールを奪うような、今後が楽しみになるようなシーンもあった。

 

 開幕戦のアイシンは自分たちより大きい(ほぼどの相手もそうなるが)だけに、ガード陣がトラップを仕掛けた後のローテーションや、ショットを放たれた後のリバウンドで、北川や身長178cmでチーム最長身の菅原らの奮起に期待がかかる。Wリーグにおいて、新潟には国際舞台で日本代表が直面するのと同じような課題があり、ある意味では東京2020オリンピックの日本代表が貴重な教材となったのではないだろうか

 

ディフェンスとリバウンドから走る展開に持ち込みたいアイシン

 

 一方のアイシンは、今シーズンから中川文一氏がヘッドコーチを務め、上位進出をねらうチームだ。中川HCはご存じのとおり、シャンソン化粧品で日本リーグ優勝15回、オールジャパン優勝11回の実績を誇る名将。その手腕がチームの短期間での成長と躍進を期待させる。

 

 昨シーズン得点面の1-2パンチだった宮下希保と梅木千夏が抜けた(ともにトヨタ自動車アンテロープスに移籍)が、トヨタ紡織サンシャインラビッツからベテランのパワーフォワード#11野町紗希子が加わり、オータムカップ2021in高崎では、オフェンスの安定感とチームディフェンスの強化が感じられた。同大会では3試合中“現役”Wリーグチームとの対戦はデンソーのみで、髙田真希、赤穂ひまわりを欠く状態の相手だったが、格上と目される相手に70-77と善戦。他の2試合では姫路イーグレッツ(2022-23シーズンからの新規参入チーム)を122-61、鶴屋百貨店を107-56と寄せつけない戦いぶりだった。

 
 新潟との一戦では高さのアドバンテージを生かし、厳しいディフェンスとリバウンドから速攻、かつアーリーオフェンスで3Pショットも積極的にねらってくると思われる。フロントコートにスムーズにボールを運べれば、アイシンに相当有利な展開になりそうだ。
 
 ただし、逆にホームの新潟がボールプレッシャーでアイシンのガードを手こずらせ、ドライブ&キックから3Pショットを高確率で決めるようならば、白熱した接戦の中で新潟に勝機が訪れる。
 
 好試合を期待できる両チームによるシーズン開幕戦は、10月16日(土)の17時にティップオフ。いよいよ楽しみなシーズンが始まる。
 

第23回Wリーグ公式ポスター(画像はWリーグリリースより)
掲載プレーヤー: 長岡萌映子(トヨタ自動車 アンテロープス)、林 咲希(ENEOSサンフラワーズ)、髙田真希(デンソー アイリス)、町田瑠唯(富士通 レッドウェーブ)、西岡里紗(三菱電機 コアラーズ)、東藤なな子(トヨタ紡織 サンシャインラビッツ)、北村悠貴(日立ハイテク クーガーズ)、野口さくら(シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)、本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)、酒井彩等(アイシン ウィングス)、水野菜穂(山梨クィーンビーズ)、宮坂桃菜(新潟アルビレックスBBラビッツ)、平松飛鳥(プレステージ・インターナショナル アランマーレ)

 
文/柴田 健(月バス.com
(月刊バスケットボール)


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