月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2017.11.04

【B.STARS Vol.9-③】宇都直輝(富山グラウジーズ)

抜群の得点嗅覚を持つ司令塔は

人々を魅了するがむしゃらな“負けず嫌い”!

 

富山グラウジーズ#11/191cm/PG/1991年6月11日生まれ/専修大

 

 

 

初の日本代表候補選出に

ますます波に乗る

 

 明るい髪色に、ピアスの開いた耳…そんな風貌から、“チャラチャラしている”という印象を与えることもある宇都。だがそれを、本人は全く意に介さず、あえて自らヒール役を演じるようなところがある。ある意味、“偽善者”ならぬ“偽悪者”とでも言えるだろうか。

 

 インタビューでも、優等生的な答えはほとんど返ってこない。その予定調和を崩したコメントが魅力なのだが、やる気のない発言と受け取られ、誤解を招くことがあるのも確か。努力や根性、熱血といった、スポーツの世界で美学として語られるものを隠したがり、大学時代から意識し始めたという日本代表への熱い思いすら、「大学時代は、ユニバーシアードとか李相佰盃の日本代表に選ばれても、ずっと茶化して『オレに日の丸、背負わしちゃダメだろ!』とか、言い続けてきて…。(日本代表になりたいと)あんまり人に言ったことないです」というように、明かしたのは最近になってからだ。

 

 ただ、宇都自身が言葉で語らずとも、コート上でのがむしゃらなプレーや練習への姿勢に、彼の“熱意”はにじみ出ている。宇都をよく知る中部大第一高の恩師、常田健コーチは、高校時代の宇都について「彼ら(宇都たち)がいた頃の練習を今やろうとしても、今の選手たちは付いてこられないと思います。でも彼らは弱音を吐きませんでしたし、“誰よりも早く練習を始めて、誰よりも練習して帰る”ということを教えなくても実行していました。特に、宇都は負けず嫌いでした。『お前はこんなこともできないのか』と言うと、次の日の練習までにはできるようになっていたほどです」と言う。この話からも分かるように、宇都は負けず嫌いだからこその“練習の虫”。悔しさをバネに裏で努力を重ね、どん欲に勝利を追い求めてきたからこそ、今の宇都がある。

 

 また、こんなエピソードもある。学生最後の引退試合、2013年のインカレ5位決定戦では、時折笑顔も見せながらひょうひょうとプレーし、40分フル出場で35得点を挙げてチームを勝利に導いた。だが試合後、「正直、終わって今だから言えるんですけど、指でつつくだけでめっちゃ痛かったです」と、腫れ上がった足のケガを押してのプレーだったことを明かした。その我慢強さ、頑なさは、一見するところの“軟派”なイメージと真逆を行く。

 

 その後、大学を卒業し、加入したトヨタ自動車(現A東京)では持ち味を披露する機会が減っていたが、昨年度から移籍した富山で、試合を重ねながらどんどん本来の良さを発揮するように。さらに「プロになって結構ルーティンを大事にするようになりました。自信が持てるように『大丈夫だ、どうせ誰も見てない』と自分に言い聞かせたり、試合前に瞑想したり」と、メンタルトレーニングによって精神面でのムラも減り、さらなる進化を遂げた。実際、富山で2年目となる今シーズンも、開幕からの8試合で平均17.5得点(全体5位/日本人1位)、6.5アシスト(全体2位)と、大車輪の活躍を見せている。

 

 そして10月には、日本代表候補に初選出された。それは「学生の頃、ユニバーシアードや李相佰に選ばれて初めて海外と試合したとき、やっぱり『日本を背負って戦いたいな』という意識が出てきた」という宇都にとって、大きなモチベーションに。それが富山での昨シーズン以上の活躍にもつながり、今まさに、乗りに乗っている状況だと言えるだろう。

 

 近日、Bリーグ第7節(11月3、4日)には、ホームで新潟アルビレックスBBを迎え撃つ。五十嵐圭(#7)がけん引する新潟には、昨年度まで富山でプレーした城宝匡史(#31)もおり、腕前だけでなくその甘いルックスでも知られる元チームメイト同士の戦いは、女性ファン必見のカードとも言えるだろう。勝負の行方が気になるところだ。

 

(おわり)

 

▼月刊バスケットボール編集部員が語る“宇都直輝”のここに注目!!

https://sports.mb.softbank.jp/vod/player/15086

 



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