月刊バスケットボール5月号

小中高一貫の強みを生かし 全国初出場を目指して突き進む 鹿児島県の池田学園池田高校

12年計画で選手を育成

代々受け継がれる良き伝統

 

 鹿児島市に位置し、校庭からは美しい桜島の景色を望める池田学園池田高。小中高一貫の私立で、文科省のスーパーサイエンスハイスクールにも指定される進学校だ。野球部や合唱部など、勉学だけでなく部活動にも力を入れている。

男子バスケットボール部は今年のインターハイ予選、川内に70‐71と惜敗して準優勝。コロナ禍で九州大会が中止となり、夏で3年生が引退して代替わりしたものの、2年生にはキャプテンで司令塔の井上鈴之助をはじめ下級生から試合に絡んでいた選手も多い。来年につなげるためにも、10月中旬のウインターカップ予選で悲願の全国初出場をつかみとろうと日々熱心に練習に取り組んでいる。

 

ミニバスと一緒に集合写真を撮影

 

チームの指揮を執るのは、田中博史コーチ。もともと中学生の指導者としてジュニアオールスターのスタッフなども務め、現在は同校でミニバスと高校を指導。近年は中学生のクラブチームも立ち上げ、休日は小・中・高と3つのカテゴリーの指導で丸1日体育館にいることも珍しくない。それをサポートするのが、妻でありかつて共同石油(現ENEOS)でマネジャーをしていた真江さん。夫婦二人三脚で、「ある程度できあがった選手でチームを作るのではなく、12年計画で基本からじっくり育てた選手で勝負したい」(田中コーチ)とチャレンジを続けている。

 

高校の練習場所は、同校の敷地内にある小学校の体育館。リングの高さを調整でき、コートのラインもミニバス用ではなく一般用だ。フロアは老朽化や桜島の灰による劣化が厳しかったが、OBたちの支援により今年5月に床の張り替えが完成。小学生もときには高校生と同じコートで練習し、高校生が小学生に教えてあげることも少なくない。これは代々池田に受け継がれる伝統で、2年生の上村卓矢も「小学校、中学校とありがたい環境でやらせてもらったので、今度は僕たちが、先輩たちにしてもらったように小・中学生にいい環境を作りたい」と言う。

 

選手の良さを生かすスタイルで

県、そして全国の舞台に挑む

 

練習を取材していて少し驚いたのは、強度こそ違えど、小学生も高校生と同じ練習メニューを多くこなしていること。「大人が『小学生だからできないだろう』『小学生には必要ないスキルだろう』と勝手に思い込むのではなく、小学生のうちからたくさんのことを教えることが大事だと思っています。試しにやらせてみると、最初はできなくてもだんだんと身のこなしが良くなったり理解したりしていく。こちらが思う以上に、幼い子たちは驚くほど吸収するものです」と田中コーチ。また、個人スキルの基礎練習はミニバスから高校まで徹底して行っており、「テニスボールを使ったコーディネーション系のドリルなどは、高校生より小学生の方がうまかったりします」とのこと。

 

 小学生とペアを組んでテニスボールを使ったハンドリングの練習

 

チームスタイルについては、「5アウトを基本とした戦い方は10年以上変わりませんが、毎年、いる選手によってどんなスタイルが合うのかは変えています」と田中コーチ。代替わりした新チームは「絶対的エースはいませんが、逆にどこからでも点が取れるチームになれる可能性があります。サイズがない分、いろいろな工夫をして戦いたいです」と弱点を強みに変えようとしている。タイミング、スピード、スペースを合い言葉に、常に足を動かして止まることのないバスケットを目指して練習中だ。

 

直近の目標は、ウインターカップ予選で県を制して全国初出場を果たすこと。ただ、「もちろんスカウティングはしますし県内のライバル校を意識しないわけではないですが、あまり特別な対策を練るというよりは、自分たちのするべきことを磨くだけ。県で優勝することだけでなく、全国大会でどう戦うかということまで考えてチームを作っていきたいです」と、さらなる高みを見据えている田中コーチ。それは選手たちも同様で、特に今年は全国ミニバス大会に出場した池田小出身の現2年生をはじめ、小・中学生時代に全国やジュニアオールスターを経験した選手も多く、「全国に出るだけでなく、勝ち上がりたい」という思いは強い。

 

「うちのチームの一番の武器は真面目さ。練習に取り組む一生懸命さです。また、選手たちの頑張りだけでなく、保護者の方々の強いバックアップがなければここまで勝ち上がれていません」と田中コーチ。選手、スタッフ、保護者が一体となって、まだ見ぬ舞台への扉を開くべく、今日も真摯に練習に取り組んでいる。

 

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