月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.10.08

ジェフ・ギブス(長崎ヴェルカ)インタビュー - 新たなチャレンジへ

 来日して12年。ベストファイブ。日本一。そうした言葉が後をついてくるキャリアを構築してきたジェフ・ギブスは、2021-22シーズンからB3に参戦する長崎ヴェルカを次なる挑戦の舞台に選んだ。


第97回天皇杯で2試合を戦った後のギブスに、あらたなシーズンへの抱負を聞いた。その言葉には頼りがいのある父親のような、強さと優しさが同居した温かさが感じられた。

 


©長崎Velka



チームと若手の成長を手助けする存在になりたい


――ここまでの天皇杯での勝利、素晴らしいですね、おめでとうございます。コンディションなどはいかがですか?


ありがとうございます。とても良い感じですよ。2日間で2試合を戦ったので、いきなりシーズン真っただ中です!


――最初にうかがいたいのは移籍関連のことです。なぜ今、動いたのでしょうか?


その時期かなと思ったんですよね。コーチタクマ(伊藤拓摩GM兼HC)とは、私がトヨタ自動車アルバルク東京にいたころから長年の知り合い同士だったのですが、昨シーズン中に彼と話す機会があって、彼が長崎で描いている将来像がとても素晴らしいと思ったんです。一方で自分自身のキャリアはすでに終盤に差し掛かっているかなとも思っていたので、彼と一緒に頑張って、若いチーム、若いプレーヤーたちの手助けをするには良い時期かもしれないなと思ったんです。


実際には、自分自身でもまだB1の最高峰でできる自信はあるんですよ。でも、若手の助けになるということに魅力を感じたんです。


――長期的な考えを持っているのでしょうか?


そうですね。そのとおりです。


――コーチとの関係性が大きな要因とのことですが、長崎を選んだ決定的な要因は何だったのですか?


やっぱり、夏場に彼らのやろうとしていることの詳しい説明を受けて、その取り組みに参加したいなと思ったことに尽きますね。


――天皇杯の2試合を見せていただきました。初戦では出番が短かったですが、やってみてどんな感触でしたか?


いい感じですよ。昨日は確かに13分程度の出場時間でしたが、それはほぼほぼ勝負がついたからという流れも影響していたと思います。自分が出る意味合いが薄くなったからですね。あのような流れになったら、今シーズンはあまり出場しないかもしれませんね。でも、それはそれで自分自身まったく気にしていません。


今日の試合は昨日よりも苦戦して、第3Qまで厳しい状態が続いていたので、コーチはたぶん私のリーダーシップに期待して長く起用してくれたのだと思います。


――やはりメンター的な役割を一番だと考えていますか? それともコート上でのパフォーマンスが重要ですか?


両方とも頑張りたいですね。自分の身体的な強さを生かしてチームに力をもたらしたいですし、勝つためにリバウンドでも得点でも、何でもやりたいです。でも、チームには若手のガードがたくさんいるので、大学レベルとは異なるプレースタイルや心構えを伝えたいという気持ちもあります。


私もすでに12年間日本にいるので、これまでに得た知識や経験を伝えて、彼らが良いガードとして成長できるように手助けしたいですね。


――今日の第1QにディクソンJrタリキ選手に何か話しかけているシーンを見かけましたが、どんな会話だったか教えてもらうことはできますか?


彼は非常にアグレッシブなディフェンダーなんです。それ自体は素晴らしいスタイルなのですが、「オフボールのディフェンスでは、フィジカルになりすぎない方がいいときもあるよ」なんて話していました。それでファウルを取られてしまうときがあるんですよね。「ボールを持っていない相手を守るときには、(体以上に)頭を使うべきときがあるからさ」なんてね。


でも彼は才能ある若手ですよね。今後素晴らしい成長を見せる可能性があると思いますよ。


――次は長崎の町についてです。スポーツが盛んな町の一つだと思いますが、ことバスケットボールについてはどんな熱気を感じていますか


バスケットボールのクラブが長崎にできるのは初めてのことで、今は町の人々とのつながりを作っているところです。それはとても重要ですね。たくさんのファンに試合を見に来てもらえるようになりたいですし。同時にそれによって、チーム側からも恩返しができるようになります。


今、なかなか外出が思うようにはできていないのですが、どこにでかけるのがよさそうか、いろいろと下調べしながら楽しんでいるんですよ! 出かけられるようになったら、オフの日にいろいろとめぐってみたいですね。


――長崎に原子爆弾を投下された歴史があり、日本でも特別な意味を持つ町だと思います。何か特別な思いはありますか?


どこに行くにしても、かかわりを持った町についてはいろいろと調べたくなるものです。自分の町について理解を深めたいという気持ちがありますよね。悲劇が起こったことを知り、私自身もやっぱり悲しみを感じました。若い頃には習わなかった歴史でした。

 

©長崎Velka

 

――今シーズン、何か目標としていることなどはありますか?


私としては、毎試合前の試合よりも良くなることが目標です。B1から移籍したプレーヤーがいることもあって、間違いなくどのチームからも注目される存在だと思っていますが、そういったことでブレることなく、毎試合自分たちとして緊迫感を持って戦い、結果としてB2に昇格したいです。もちろん全試合を勝ちにいき、昇格するというのは目指しています。


――他チームに対する印象はどんなものでしょうか?


実はここ数年、何人か友だちがプレーしていたこともあってB3に目を向けていたんですよ。そこで感じたことは、チーム自体の差ではなく、笛の吹かれ方がちょっと違うかなということでした。何人かのプレーヤーたちから、「B1と同じプレーでもファウルにならないかもしれないよ」と言われています。そちらの方に適応していくことの方が大変かもしれません。


プレーヤーに関しては、特に日本人のプレーヤーについてはB3よりもB1の方がハイレベルと言えると思いますが、トップリーグのレベルアップの経過を思い返してみると、B3の日本人プレーヤーのレベルも上がっていくのではないかとも思っています。時間はかかるかもしれませんけど、そうなっていくのではないでしょうか。


――最後に、壮大な質問なのですが、キャリア全体の目標と言ったらどんなお答えになりますか?


ううむ、そうですね…。できるだけ長くプレーして、一方では子どもたちの人生にももっと関わりたくて。やっぱりバスケットボールが大好きだという気持ちと、うちの子どもたちが皆スポーツをやっているので、どんな流れになるかによっては子育てに全力を注ぎたくなるかもしれないなとも思っています。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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