月刊バスケットボール6月号

赤穂ひまわり(デンソーアイリス)、FIBAアジアカップ2021MVP&スティール女王の活躍を振り返る

オールスターファイブ記念の盾とMVP記念の腕時計を手に笑顔の赤穂ひまわり(写真/©fiba.asiacup2021)

 

 FIBA女子アジアカップ2021で、日本代表を5連勝での大会5連覇に導く活躍を見せた赤穂ひまわり(デンソーアイリス)。今大会の日本代表には、宮崎早織(ENEOSサンフラワーズ)や馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)ら、MVP受賞にも値する働きを見せていたチームメイトが複数いた。その中で赤穂が際立ったのは、どんな側面だっただろうか。

 

際立つディフェンスとリバウンド面のハッスルと、オフェンスの効率の良さ


韓国代表とのグループラウンド最終戦では、第3Qに日本代表は6得点しか奪えなかったが、そのうち4得点が赤穂だった。45-50と3点差を追う第4Q序盤から15-3のランで形勢を逆転する過程では、4得点、2リバウンド、1アシストでチームを勢いづけた。


オーストラリア代表相手の準決勝では、31-36の5点ビハインドで始まった第3Qに、そこからの12-0のランで赤穂は5得点に加えアシスト、リバウンド、スティールが1本ずつ。その後再度追い上げられ65-62となった第4Q残り2分57秒には、相手のドライビングレイアップにうまく体を寄せてブロックショット。さらに65-65の同点で迎えた残り1分56秒には決勝点となる67点目をねじ込み、試合終了間際には相手の得点源サミ・ウィットコム(WNBAニューヨーク・リバティー)をマークし、3Pショットをブロックして勝利を決定づけた。

 

今大会ではリバウンドとディフェンスの奮闘、そしてオフェンスの効率の良さが光った(写真/©fiba.asiacup2021)


中国代表との決勝戦では無得点に終わったが、出場時間33分51秒は両チームを合わせて最も長く、その中でチームハイの8リバウンドを記録した。中国代表のトップリバウンダー(11本)だったリー・ユェルは身長200cmあり、他にも190cm以上が総勢5人そろった大型チームを相手に、赤穂はこの試合でそのリーに次ぐ2番目のリバウンド数を記録していた。


5試合のアベレージは、平均10.6得点、5.0リバウンド、1.6アシスト、2.2スティール、0.8ブロック。フィールドゴール成功率51.3%、3P成功率が53.8%。このうちスティールは堂々大会全体の1位タイ(もう一人は馬瓜ステファニー[トヨタ自動車アンテロープス])であり、3P成功率は同3位、ブロックショットも10位、さらにはエフィシエンシー(15.8)も9位と、4部門でトップ10入りを果たした。リバウンドは15位だが、決勝トーナメントの2試合で平均7.0本とアベレージを挙げているところに、この数値以上の価値が感じられる。

 

 チームで2番目に長身の185cmで、走れて、かつ恩塚 亨HCが求める「世界一のアジリティー」を体現するような、瞬時に次のプレーにおける優位につながる判断の良さを見せた。泥臭く奮闘し、特に大事な場面で効率よくショットを決めた結果として得られたのが、今大会のMVPという輝かしい勲章だ。


決勝戦から一夜明けた10月4日に行われたズーム会見で、赤穂は「すごくホッとしているというのが(気持ちとして)一番あって、5連覇という素晴らしい結果を残せたことをとてもうれしく思っています」とチームとしての目標を達成できた感想を語った。MVP受賞に対する喜びは、「決勝は本当にみんなに迷惑をかけて、全然いいプレーをできなかったんですけど、チームバスケで獲れたMVPなので、みんなに感謝しかありません。ありがとうという感想です」と謙虚な言葉で表した。それでも、「私の得意なプレーはリバウンドですし、体を張ったプレーというのは持ち味というより誰にも負けちゃいけない部分だなと思っています。オリンピックで頑張れたのをそのまま今回の大会でも出せて、得点は獲れませんでしたが、そういうところを評価してもらえたのはうれしかったです」というコメントから、リバウンドやハッスルが評価されての受賞が自信にもつながったように感じられた。


赤穂はWリーグの2020-21シーズンでも、平均11.9得点(リーグ19位)、8.5リバウンド(同6位)、1.1ブロック(リーグ4位)、フィールドゴール成功率55.9%(リーグ4位)、1.6スティール(14位)と個人成績上位に名を連ねていた。デンソーでの役割は日本代表とは異なる部分が多いだろうが、10月23日(土)に開幕する2021-22シーズンには、どの側面でもスケールを一段と大きくした赤穂のプレーを期待できそうだ。

 

韓国代表との試合では大会期間中ベストの18得点、7リバウンドを記録して勝利に貢献した(写真/©fibaasiacup2021)


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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