月刊バスケットボール1月号

日本代表、オーストラリア代表下してアジアカップ5連覇に王手

いよいよ5連覇をかけて決勝戦、相手は中国代表だ(写真/©fiba.asiacup2021)

 

 FIBA女子アジアカップ2021で5連覇への挑戦に臨んでいる日本代表が、準決勝でオーストラリア代表を67-65で破り、決勝進出を決めた。いよいよあと1試合、中国代表を相手に戦う決勝戦を乗り切れば、恩塚 亨HC率いる新生日本代表は、東京2020オリンピックでの銀メダル獲得に続き日本のバスケットボール界に輝く歴史を作ることができる。

 

攻守に活躍した馬瓜ステファニー、この試合では12得点を記録した(写真/©fiba.asiacup2021)

 

FIBA女子アジアカップ2021準決勝第2試合結果
日本67-65オーストラリア
日本 67(20 11 22 14)
オーストラリア 65(12 24 19 10)

 

 第1Qの序盤は点の取り合いとなったが、日本代表はオコエ桃仁花(富士通レッドウェーブ)が力強いドライブでチーム初得点を挙げ、林 咲希(ENEOSサンフラワーズ)が3Pショットで続き応戦。馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)がファウルをもらいながらゴールを奪い、フリースローも決めた時点で8-6とリードしていた。ディフェンスで良く足が動き、良い流れで得点を重ねた日本代表は、このクォーターを根本葉瑠乃(三菱電機コアラーズ)が右コーナーからの3Pショットで締め、20-12として第2Qに臨んだ。

 

オコエ桃仁花は力強いドライビング・レイアップで日本代表の先制点を記録した(写真/©fiba.asiacup2021)


ところがここから前半終了までは、恩塚HCが「ディフェンスのエネルギーが落ちてしまった」と形容した厳しい時間帯。相手の特徴である高さに加え、中心プレーヤーのサミ・ウィットコムに要所で3Pショットを決められ、ハーフタイムを31-36と5点を追いかける状態で迎えることとなった。


しかし後半開始時点の流れは日本代表に傾く。馬瓜がターンアラウンド・フェイドアウェイ・ジャンパーをねじ込み、続くディフェンスで24秒ショットクロックバイオレーションを誘発させ、さらに赤穂ひまわり(デンソーアイリス)の軽快なステップインからのレイアップ、林の3Pショットで38-36と逆転に成功。オコエのドライブと赤穂の3Pショットも決まり、12-0のランで43-36とリードを広げた。

 

サミ・ウィットコムと山本麻衣のマッチアップ。WNBAスターも日本代表の執拗なディフェンスに手を焼いていた(写真/©fiba.asiacup2021)


オーストラリア代表は、高さを生かしたゴール近辺での得点でしぶとくついてきた。このクォーター残り4分2秒にローレン・ニコルソンのレイアップが決まった時点では、日本代表は再び48-49とリードを奪い返される。以降、試合は両チームともに神経をすり減らすような接戦が、終盤まで展開されていった。


ビッグショットやビッグプレーは終盤にも次々と生み出されたが、勝敗を分けたのは威圧感のあるトラップディフェンスだった。第4Qは特に、林や山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)らがボールハンドラーを追いかけまわし、いつの間にか馬瓜やオコエらもう一人がヘルプにきてヘルドボールに持ち込むシーンがたびたび見られた。また、厳しい状況から繰り出されたパスのインターセプトから速い展開で攻め上がり、得点機を生み出していた。

 

 こうした展開に相手のスタミナ切れも感じられるようになり、逆に日本代表は決定力もリバウンドへの動き出しの鋭さも高まってきた。最後は65-65で迎えた残り2分過ぎに、赤穂がポストプレーからコンタクトを受けながら決めたゴール下のショットが決勝点となり、以降オーストラリア代表に得点を許さず67-65で試合終了となった。

 

得点だけでなくリバウンドとブロックショットでもチームに大きく貢献した赤穂ひまわり(写真/©fiba.asiacup2021)


オーストラリア代表のポール・ゴリスHCは試合後の会見で、日本代表のディフェンスの前に23本のターンオーバーを記録したことが決定的な敗因だったと明かした。「23ターンオーバーから失点が23。これが勝負を決めました。我々も日本代表を今大会最少得点に抑え、3Pショットに対して良く守っていたのですが、オフェンスでは相手のプレッシャーの前にボールをしっかりキープできませんでした」


日本代表は林が今大会自己最高となる17得点でトップスコアラー。3Pショットは10本中5本成功の50%だった。本人は試合後のメディア対応で、「もっとできると感じて臨んだ試合で思いどおりにできなかった」という趣旨のコメントをしており、手応えよりももどかしさの方が大きかった印象だったが、総合的な存在感がこの試合でも光っていた。得点以外にもチームハイの7リバウンドにアシストとスティールが3つ。前述のとおり、たびたびトラップディフェンスのダブルチームに参加し、相手を厳しい状態に追い込んでいた。


得点面では赤穂と山本も12得点、馬瓜も11得点で2ケタ台。3人ともペイントでファウルを得ながら決めてくるシーンがあり、高さのある中国代表との決勝戦に向け頼もしさを感じさせた。赤穂は何が何でも得点を阻止したかった第4Q残り3分以降に、値千金のブロックショットも2本あった。また、5得点にチームハイの9アシストを記録した宮崎早織(ENEOSサンフラワーズ)の、勝負どころで決めてくる決定力と、味方をおぜん立てするプレーメーク力も光っていた。

 

宮崎は良くボールを回し、チームハイの9アシストを記録した(写真/©fiba.asiacup2021)


☆試合後コメント

 


恩塚 亨HC
(ウィットコムへの対応)——フルコートでマッチアップして、ボールを持たせないように、持たれたとしてもボールを離させるように仕向けることをチームとして目標に設定していました。具体的には、スローインのときに2人がかりで正面に立って彼女にボールが入らないようにしたり、彼女がボールを持っていたらトラップにいってボールを離させ、その後はボールをディナイして気持ちよくボールを持たせないように。その後ボールを持たれたとしても、オンボールスクリーンの中で3Pショットを打たせないようにステップアップしてプレッシャーをかけ続けていく。その戦いを40分間続けていく中で、彼女のバランスを崩していこう、というストーリーで戦っていました。
(決勝戦でカギとなりうるフロントラインの控え、中田珠未と西岡里紗について)——バックアップの中で、コートに出た瞬間に高いエネルギーでプレーすることを求めています。彼女たちは非常にポジティブで、一瞬に賭けるという思いでコートに立ち、私たちにとって大きな力になってくれているので、感謝しています。プレータイムを増やしていく上でのポイントは、フィニッシュを選択的に行うことができるようになること。オフェンスの幅が広がると思うので、ゴール下でボールを受けたときに、選択的に良い判断ができるというのがポイントです。ディフェンスでは相手の長身選手よりサイズが小柄でも、動きの良さで勝負できると思っているので、ボールを持った相手にプレッシャーをかけてリズムを崩すようなことでチームに貢献してほしいと思っています。

 

林 咲希
(勝ちたいという欲がプレーに影響したか)——勝ちたいという気持ちはもちろんあったのですが、自分の仕事をやり切るという気持ちで今日も臨んだので、委縮した感じはありませんでした。どの試合も、自分が今持っている最大限を出し切るという気持ちで戦っているので、明日もその気持ちで戦いたいと思います。

 

山本麻衣
(同じガードとしてウィットコムの印象)——駆け引きも上手だし、3Pショットもすごくよく入る選手だったので、相手に自分のリズムを与えないようにということを考えて試合に臨みました。でも、それでも決めきる力、トランジションで3Pショットを狙って決めきる力があり、やっぱりさすがだなと思いました。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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