月刊バスケットボール5月号

日本代表

2021.10.02

バスケットボールファミリー皆の力が結集した東京2020オリンピック。その取り組みを評価し次のステップに進もう

すべてのカテゴリーが オリンピックで勇躍、女子は史上初の銀メダル

 東京2020オリンピックでは5人制女子代表が銀メダルを獲得。3x3は男女とも決勝トーナメント進出を果たし、5人制男子代表も、勝利こそつかめなかったが、今後に期待を持たせる戦いぶりを見せてくれた。そして、9月21日には男子代表の次期ヘッドコーチにトム・ホーバス氏、そのトム・ホーバス氏が率いた女子代表ヘッドコーチには恩塚亨氏が就任することが発表された。
これまでのオリンピックまでの取り組み、そして今後について日本バスケットボール協会(JBA)技術委員会委員長を務める東野智弥氏に総括してもらった。このインタビューは8月下旬に行われたものだが、次期男女代表ヘッドコーチについての考え方も表れている。

 

川淵三郎元チェアマンに銀メダル獲得の報告を行った東野智弥氏

 

─オリンピックが終わり、一つの区切りになると思いますが、振り返ってどう感じていますか。
「当初から目標としていた5人制男女、3x3男女4カテゴリーが全てオリンピックに出ることができました。そのうち3カテゴリーが決勝ラウンドに進出しています。そして5人制の女子代表はオリンピック史上初の銀メダルを獲得することができました。そのようなことをトータルで考えれば、一定の評価ができる結果だったと思います。
では個々の目標に対してはどうだったでしょうか。男子はワールドカップと比べて評価できる戦いができましたが、勝ち星を得られず、決勝トーナメントに進むことはできませんでした。3x3の女子はメダルを取りたかったですね。男子もメダル獲得と言っていましたが、これまでの実績を踏まえれば、オリンピックで2勝し、劇的なストーリーで決勝ラウンドに勝ち上がったのは上出来な結果だと言えます。5人制女子は金メダルを目標に掲げており、だからこその銀メダルだったと思います。これまでオリンピックでのメダル獲得はなかったのですから、すばらしい結果でした」

─女子代表の銀メダル獲得は、本当に日本のバスケットボール界に希望を与えてくれました。
「東京2020オリンピックで活躍を期待された選手たち、渡嘉敷来夢、本橋菜子、梅沢カディシャ樹奈といった選手が、オリンピックが1年延期となる中で、次々に故障してしまいました。選手が戻ってこられるか分からないといった状況で、チーム作りはとても難しいものでしたが、きちんと準備をして臨んでくれました。
トム・ホーバスヘッドコーチが本当にすばらしい仕事をしてくれました。すでに、さまざまなところで称賛されていると思いますが、戦術、戦略的に長けていました。彼の厳しい指導が注目されましたが、それに付いてこられる女子の土壌があったのだと思います。それは、これまで積み上げてきた日本の女子バスケの勝利と言っていいでしょう。身長に劣る選手たちの戦い方を極めようと積み上げた戦いぶり。その時々、指導者によって違いはあるものの、脈々と引き継いできたのだと思います。アトランタオリンピックでの中川文一さんや、アテネ、そしてリオを率いた内海知秀さんといった歴代代表チームのコーチたちはもちろん、アンダーカテゴリーですばらしい選手たちを輩出し続けてくださっている高校、中学、ミニやクラブなどの指導者の方々。そうした皆さんの勝利でもあります。一つの集大成を作れたのだと思います。
2016年、リオオリンピック後に内海さんからトムHCに代わるとき、メダルを取ると断言しました。リオではベスト4は逃したものの、すでにアジアカップでも連覇をしていましたし、コーチの交代は首をひねられた方もいたと思いますから、プレッシャーはありました。アジアでは4連覇を果たしていますが、ワールドカップでベスト8に入れない結果となり、そこでトムはしっかりとアジャストしました。日本語をこれまで以上に勉強するようになり、自分の言葉でコミュニケーションを取るように心掛けてきました。アジャストしつつ、それでいて信念は曲げずにやってきたのです。その結果として、彼女たちが見本のようなチームとしての戦いをしました。
ベスト4を懸けたベルギー戦もそうでした。ベルギーはとてもいい状態で、これまでにないほどシュートも入れてきました。35分間ベルギーの勝ちゲームでした。それでも、日本は粘り、ボディーブローのようにちょっとしたことを積み重ね続けました。やり続ける力と、最後までお互いを信じてサポートし合ったのです」

[ads]

─そうした中で、今後の課題はどんなところでしょうか。
「足りなかったのはアメリカに勝つことだけでした。アメリカは勝てない相手だったのだろうかと考えます。今回のメンバーは何度もオリンピックに出場している選手が多く、経験がある反面、年齢は高く、付け入るスキもあったのではないかと思います。
アメリカに勝つには、金メダルを獲得するには何が必要だったでしょうか。常に課題とされる“高さ”はもちろん、必要だったと思います。アメリカには10本以上(12本)ブロックされましたから、やはり、高さには慣れていなかったわけです。何が良くて、何が足りなかったのか。いろんな材料を得ましたから、その課題をクリアしていかなければなりません。
金メダルを取るためには、これまでの流れを踏襲してやればいいのかというと、そうではないと思っています。女子はFIBAランキング8位になりました。安定してトップレベルに位置しなければ、ランキングは上がりません。当然、金メダル獲得とともに、世界ランク1位を目指す。こうした目標を持つとするならば、リーグの制度改革も含めて、国際基準にあった状況にしていかなければならないと思っています」

─アジアカップがもう始まります。若手の選手たちを恩塚亨コーチが率います。
「さらにステップアップするために、選手たちのマインドの部分を大切にしたいと思っています。コーチから言われてやるのではなく、選手が自分自身でワクワクしてやれるようなマインドです。今回、アジアカップを指揮する恩塚亨コーチはそれを言い続けています」

<関連記事> 東京オリンピック、そしてその後。日本バスケットボール界の進む道


PICK UP