月刊バスケットボール1月号

女子バスケ日本代表、40分間戦い切ってニュージーランド代表に勝利

 62-50。前半は32-31。FIBA世界ランキング8位の女子日本代表は、同36位のニュージーランド代表に対し、一見あやうい感覚も覚える展開で勝利した。それが想定内の出来事ではなかったことを、恩塚 亨HCもスターティング・ポイントガードの宮崎早織(ENEOSサンフラワーズ)も認めていた。


だが、実際には現時点での女子日本代表にとって完勝と呼べる内容だった。それがこの試合の真実ではないだろうか。

 

日本(2勝)62-50ニュージーランド(2敗)
ニュージーランド 50(20 11 11 08)
日本 62(13 19 15 15)

 

宮崎は6得点にゲームハイの7アシスト。難しい試合だったが、良くチームをリードした(写真/@fibaasiacup)

 

流れが行ったり来たりの前半をしのぐ


日本代表は試合開始早々に赤穂ひまわり(デンソーアイリス)がスティールからレイアップに持ち込み2-0と先制。キャプテンの林 咲希(ENEOSサンフラワーズ)と赤穂の3Pショットで序盤に8-0のリードを奪った。しかしその後約4分間得点できず、第1Q終了までに相手の5-20のランを食らい、13-20と思わぬ7点ビハインドでの第2Q突入という状況になった。


第2Qに入っても立て直しがなかなか効かず、このクォーターの残り6分30秒にカラニ・パーセルにレイアップを決められた時点で17-26とニュージーランドにこの日最大の9点のリードを奪われてしまう。


しかし直後に馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)がレイアップを入れ返すと反撃に転じ、ハーフタイムまで1分を切った時点の林のアシストを受けた赤穂のレイアップで32-31とリードを奪い返すまでは15-5のラン。その後は攻守にスキのないプレーぶりで、後半の失点は19点のみ。第4Q2分半過ぎに馬瓜の3Pショットで53-42とリードを2ケタに乗せると、試合終了まで流れを渡すことなく乗り切ることができた。


日本は馬瓜がフリースロー10本中8本成功を含む15得点でトップスコアラー。持ち味の3Pショットを8本中4本決めて12得点を記録した林、チーム最長となる30分34秒間の出場で10得点のオコエを含め、3人が得点を2ケタに乗せた。


また、宮崎は6得点(3Pショット2/2)に加えゲームハイの7アシストを記録し、中田珠未(ENEOSサンフラワーズ)も6得点にゲームハイの8リバウンド(うちオフェンス・リバウンド5本)で勝利に貢献した。

 

6得点以上にゲームハイの8リバウンドを記録した中田の活躍は日本代表にとって大きい貢献だった(写真/@fibaasiacup)

 

戦いながら成長を遂げる新生女子日本代表


試合後の会見で恩塚 亨HCは「タフな相手として警戒していましたが、40分間戦い続けることで乗り切れました。プレーヤー達に敬意を表したいです」と笑顔でコメントした。


一方ニュージーランドのガイ・エドワード・モリーHCは、「世界のトップレベルのチームである日本を相手にありがたい機会だった」と話し、敗北にも経験自体の価値を前向きにとらえていた。敗因としては、特に第4Qにスタミナの点で押し切られたことを挙げ「疲れてくると一歩一歩が遅れ、誤った判断をしてしまうものです。それが後半に流れを奪われた原因だと思います」と話した。個々には特に、林とオコエの存在感が大きかったことを明かしていた。

 

 日本代表はリバウンドで33-42と上回られたが、相手に速攻からの得点を許さず(13-0)トランジションゲームを優位に展開した。ターンオーバーも自チームの11に対し相手は23本。厳しいディフェンスを続けたことで相手の体力が削られていっただろうことが、これらのデータからも感じられる。

 

オコエは10得点だけでなくディフェンス面での存在感も大きかった(写真/@fibaasiacup)


試合内容の見方はさまざまだろうが、厳しい展開から慌てずに状況を分析して修正ができたことと、40分間ほぼほぼ戦い切ったことが、新たなコーチ陣、新たなメンバー構成で今大会に臨んでいる日本代表にとって最も大切なことだったのではないだろうか。東京2020オリンピックで銀メダルを獲得したチームと同じ戦力を期待するのは無茶というものだ。ただし、6月のポルトガル代表とのウォームアップで多くの課題を露呈していた状態から、最終的にアメリカ代表との頂上決戦に臨むまで上り詰めたあのチームと同じかそれ以上の速さでの成長は期待するべきであり、この試合はその兆しを見せてくれたように感じられた。


次戦は日本時間29日(水)16時からの韓国代表との対戦。両チームにはFIBA世界ランキング(韓国代表は19位)など意味をなさない伝統のライバリーがあり、どちらもしぶとく最後まであきらめない心の強さを持つチーム同士であり、さらに韓国代表は完成度の点で日本代表よりも仕上がっている印象もある。どちらもグループAで2連勝している。


ヘッドコーチのジュン スンミンは恩塚HCと同じく新任。グループ1位通過——つまり打倒日本代表——に意欲を見せており、初日のニュージーランドとの対戦(85-69で勝利)では見せていない戦い方でぶつかってくることも考えられるだろう。非常に警戒すべき相手であり、現代日本の女子バスケットボールの真価を問われるグループラウンド最大の山場だ。


☆試合後コメント

 

恩塚 亨HC
(第1Qの悪い流れの原因)——8-0のスタートは良い流れでしたが、フィニッシュスキルの問題で、決められるフィニッシュを決められなかった流れの中で相手に主導権を握られてしまったなと思います。オフェンスがうまくいかなかったままの気持ちでディフェンスをしたことで、相手に“パス→パス→ポスト”という流れを許してしまったと考えています。


(ハーフタイムの話し合い・指示)——私たちは40分間フルコートで戦うことで、試合を私たちのものにしていくというコンセプトを持って試合に臨んでいました。そのことをあらためて確認し、相手のパフォーマンスが落ちていること、私たちのディフェンスに対して困惑していること、私たちのペイントアタックした後パス、さらにパスとつながるボールムーブについてこれていなかったので、そこを突いて攻めようということを確認していました。

 

(フリースローのアテンプトが馬瓜のみだったことに対する見解)——まず、馬瓜選手がゴール下に飛び込んでフリースローをもらってくれたのは本当に素晴らしいプレーでした。ほかの選手もフリースローに値するアタックがありましたが、フィニッシュをより選択的にできるように、もう一度ビデオから学んでトレーニングしていきたいと思っています。

 


宮崎早織
(第1Qの悪い流れについて)——自分がまったくプッシュできず、相手の重い流れに呑まれてしまいました。走るバスケが魅力なのにそれができず、ペースを持っていかれました。


(ハーフタイムはどんな話し合いをしたか)——我慢して追いついてきたので、後半は走るバスケットをしようと話し合って臨みました。

 

馬瓜ステファニー
(3x3でアメリカ代表に勝利した体験が生きているか)——3x3では(ハードなプレーも)なかなかファウルにならなかったり、相手も攻守両面でフィジカルに戦ってくるので、それが今日のゲームでは生きてきました。笛が鳴らないときにどれだけ我慢できるかという部分でも、3x3の体験に通じるところがあるなと。自分の成長が感じられたかなと思います。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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