月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.09.09

広島ドラゴンフライズ、意気込みを示す新クラブハウス『ドラフラベース』建設を発表

左から岡﨑GM、#2朝山、浦社長(写真/©広島ドラゴンフライズ)

 

 B1西地区所属の広島ドラゴンフライズが、広島県廿日市市にあらたにクラブハウスを建設することが発表された。通称「ドラフラベース」と呼ばれるこの施設は2022年8月の完成予定。フルコート1面、サブコートなら2面確保できるメインアリーナにはトレーニングルームも完備。さらにはプレーヤーたちがリラックスして過ごせる宿泊棟までついている。

 

画期的な発展をもたらすドラフラベース

 

 ドラフラベース完成とともに、広島ドラゴンフライズはトップチームの確立された強化・育成拠点を所有することになる。また、クラブのルーツである廿日市市(クラブ名のドラゴンフライズはトンボの意で、日本では廿日市市宮島町に限り生息している“ミヤジマトンボ”に由来している。またメインのチームカラーも廿日市市に位置する厳島神社の鳥居の朱色をイメージしている)と手を取り合いながら、地域の活性化を目指すまちづくり連携拠点としても、このクラブハウスは重要な役割を果たすことになりそうだ。

 

 日本を代表するシューターの一人である辻 直人や、昨シーズンのB1得点王ニック・メイヨを獲得した大型補強も、この夏話題となった。その熱気の中で発表された画期的な拠点建設は、広島ドラゴンフライズの今後に向けた意気込みの強さを感じさせる。

 

浦社長はドラフラ完成でクラブに画期的な発展を期待できると話した(写真/©広島ドラゴンフライズ)


ドラゴンフライズの浦 伸嘉代表取締役社長は「クラブハウスを建設することで選手の環境が整備できれば、クラブの価値を最大限向上させることに直結する」と熱を込めて語った。「今後、日本全体のバスケットボール競技レベルの伸長にも繋がると確信しております。このドラフラベースから日本代表選手、そしてNBA選手の輩出を目指してまいりたいです」


岡崎修司GMも、練習に集中できる環境を得られることでチーム力向上が見込めることはもちろん、「クラブハウスの建設を契機にトップチーム、U18、U15とすべてのカテゴリーでのハード・ソフト両面での環境整備を進め「育成の広島」と呼ばれるように尽力してまいります」と話し、中長期的な発展に向けた期待を言い表した。

 

岡﨑GMも「『育成の広島』と呼ばれることを目指す」と力強かった(写真/©広島ドラゴンフライズ)


また、広島県におけるクラブの存在意義という観点で、浦社長はドラフラベースを災害時などには地域が活用できるようにすることも明言した。それが「広島らしさ」であり、ドラゴンフライズのDNAだという。「広島らしさ」は、76年前に原子爆弾が落とされてからの復興を象徴するものであり、「先人たちが粘り強く、屈することなく生き抜いた姿勢を、バスケットボールを通じて表現していくのが我々の使命」と熱烈に語った。


そうした熱意も込められたドラフラベースの誕生を、建設予定地の廿日市市も歓迎しているようだ。「何人か地元関係者の方々とお話をさせていただいている中では、皆さん本当に喜んでくださって、ぜひ廿日市に来てほしいとおっしゃってくださっています。我々のルーツも廿日市市であり、相思相愛の関係で進んでいます」(浦社長)

 

 ただ、だからと言って説明などの段階を省くことはなく、地域住民との対話を丁寧に進めていくとのこと。「皆さんに期待感を持っていただけており、今後も盛り上がってくると思っています。その期待を越えられるように、しっかり活動してまいりたいなと思っています」と浦社長は締めくくった。

 

完成イメージ図 ©広島ドラゴンフライズ

― クラブハウス「ドラフラベース」概要 ―

建設予定地 廿日市市峠

完成予定 2022年8

仕様 <メインアリーナ棟>バスケットボールコート1面、トレーニング室
<宿泊施設棟>6室/6名宿泊可能

※完成予定、仕様等については変更の可能性あり

 

新時代を迎えるドラゴンフライズ


チームに勢いをもたらす画期的な練習施設ができることについては、プレーヤーの反応も当然のごとく大歓迎ムードだ。発表会見に登壇した朝山正悟(#2、シューティングガード/スモールフォワード)は、「選手として、クラブハウスを用意してもらえることは本当にありがたい」と笑顔で喜びを表した。

 

さらりと苦労話を振り返ってくれた朝山。しかしこれからは新時代だ(写真/©広島ドラゴンフライズ)


以前は、トレーニング施設の工面もなかなか難しい時期があり、その当時は午前中の活動は自分で、あるいはチームで探した施設で個別に行い、午後からチーム練習に入るという流れだったという。NBL時代から在籍している朝山は、苦労の多かったその時代を知っている。皆で分担して用具を持ち運び、体育館に入ったらまずはバスケットボールができるようにラインテープを貼って…。そんな作業に取り組むスタッフを選手たちも手伝った。


ドラフラベースが生まれることで、個々のプレーヤーのそうした自主性は、今度はワークアウトやトレーニングに集中して注がれることになる。朝山に「ドラフラベースにぜひとも欲しいものは何か」と問いかけると、謙虚な喜びとともに、今と将来を見据えて次のような答えをしてくれた。

 

「今聞いている限りでは、ほとんどのものがそろっていると思います。贅沢過ぎるくらいの環境だと思うんですが、これからバスケットボールが発展していく中で、より求められてくるものの中に、映像化ということがあります。プレーをしながら、常に撮られているようなところまでできたらすごいなと。若い選手たちは自分のプレーやチームのプレーを映像で見直すことができて、すぐにその後の練習に生かすことができるような環境でやってきていると思うので、ドラフラベースでもさらにその点をもう一段階進めていけると、より強固なものになってくると思います」


苦労の時代を知るベテランの未来展望は、浦社長の「日本代表、NBA選手の輩出」という夢を後押しするアイディアになりそうだ。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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