月刊バスケットボール6月号

日本代表

2021.08.29

車いすバスケ男子日本代表、“鉄人”率いるカナダ代表に逆転勝利で決勝T進出

 東京2020パラリンピックの車いすバスケットボールは8月28日に第4日が行われ、男子日本代表が有明アリーナでの第3試合に登場。42歳のミスター車いすバスケ、パトリック・アンダーソン率いるカナダ代表に対し、前半終了時点で11点差の劣勢を背負いながら、力強い反撃で62-56と逆転勝利を収め、無傷の3連勝で決勝トーナメント進出を確定させた。


8月28日第3試合 男子予選ラウンドグループA(有明アリーナ)
日本(3勝)62-56カナダ(3敗)
日本 62(06 13 19 24)
カナダ 56(12 18 14 12)


2日前、初戦の対コロンビア代表戦では秋田 啓(持ち点3.5)が24得点、ローポインターの鳥海連志(2.5)が15得点、17リバウンド、10アシストのトリプルダブルとビッグゲームを披露し、前日の対韓国戦ではベテランの藤本怜央(4.5)が2Pショット11本中9本成功で21得点という非常に効率良い、かつ爆発的な活躍でチームをけん引した男子日本代表。この日はその順番が、3Pショット4本成功を含む24得点香西宏昭(3.5)と、特に後半追い上げ・突き放していく過程で好プレーを連発させ14得点を記録した古沢拓也(3.0)に巡ってきた。

 

 日本代表は序盤、車いすバスケットボール界の鉄人とも呼べる42歳のレジェンド、パトリック・アンダーソン(4.5)に2本のゴールを奪われ0-4と先行を許した。第1Qはなかなかペースをつかめず、クォーターの残り1分24秒にニコラ・ゴンシン(4.5)にセカンドチャンスからミドルショットを決められた時点では、点差は4-12と8点に拡大。厳しい戦い展開となる。

 

 反撃の兆しが見えたのはこのクォーター残り19秒に、リバウンドからの3線速攻から町会がレイアップを沈め6-12としたあたりから。良い形で第2Qを迎えた日本代表は、この得点から第2Q4分27秒過ぎの鳥海のディープスリー成功まで、12-4のランで巻き返し、18-16とリードを奪う。

 

 しかしカナダ代表は、返しのオフェンスでアンダーソンがペイントで1本返して同点とすると、そこから逆に14-1のラン。この時間帯の日本代表は、カナダ代表にオフェンス・リバウンドを拾われ、セカンドチャンスから失点を重ねてしまった。オフェンスでは、組み立てること自体はできていたが、ショットが決まらず得点が伸びないまま、19-30と11点のビハインドを背負って後半に臨むこととなった。


その後半、日本代表は香西のミドルショットと3Pショット、古沢の速攻からのレイアップでいきなり7点連取し、26-30と一気に流れを引き寄せる。ディフェンスではファウルがかさみ、フリースローによる失点も多くなったが、逆にその積極性がオフェンス面では良い方に出て得点が伸び始めた。前半3得点にとどまっていた香西は、第3Qだけで10得点。このクォーターで5点挽回した日本代表38-44として、追い上げムードで勝負の10分に突入することができた。

 

 第4Qは、ゴンシンのこの日18点目となるゴールで先行されたが、香西が3Pショットを返した後、古沢が右エルボーからのミドルで追撃。さらに古沢はディフェンスで相手のボールをはじき、そのルーズボールがフロントコートに転がるところを鳥海がチェアをかっ飛ばして拾い上げ、フォロワーとなってゴール下に走り込んだ古沢につなぐ。

 

 ここでコンタクトが起こり、コリン・ヒギンズがアンスポーツマンライク・ファウルを吹かれる。古沢はフリースローを1本決め、さらに続いて得られたポゼッションでも右ウイングからミドルショットを成功させ、ついに残り8分11秒、試合を46-46と振り出しに戻した。ここからの神経を削られるような接戦の展開で、日本代表は一方先行されながらも秋田がしぶとく得点を積み上げ食らいつく。そして残り5分24秒に、ゴンシンがこのカナダ代表としてこのクォーター2つ目となるアンスポーツマンライク・ファウルを吹かれ、秋田がフリースローを1本決めた後、香西の3Pショットで54-52と逆転に成功すると、試合終了まできわどくリードを保つことができた。

 

 この試合では、主役となった香西や古沢、秋田、鳥海らだけではなく、フルメンバー12人全員がコートに登場し、貢献をもたらした。得点源の一人である藤本が、前半でファウルトラブルに陥り短い出場時間に終わった中、その分チームとして積み上げた61点には価値がある。

 

 男子日本代表は、予選グループでの5試合を5日間でこなす過密日程。その中では、逆に藤本がある程度休めたことにも意義があるかもしれない。香西は試合後のインタビューで、「すでに次に切り替えています」と集中を切らしてはいない様子だった。3連勝で8強入り。しかし、“イスバス”のスターたちが輝くのは、男子も女子もまだまだこれからだ。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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